さまざまな業界で技能労働者は世界的に不足しており、今後10年間で状況はさらに悪化すると予測されている。最も大きな打撃を受けている分野のひとつは建設業で、機械、電気、配管 (MEP) ビルサービスが含まれる。この分野は、暖房、換気、空調、下水処理からビルオートメーション、通信、データ接続、電気設備まで幅広い技術をカバーしている。
2022年後半にフランスとドイツで行われた調査では、10社中9社が十分な技能労働者を確保できていないと回答した。人口900万人に過ぎないオーストリアでは、25万件もの求人が埋まらないままだ。Korn Ferry Instituteの報告書 (PDF4ページ) によると、この世界的な傾向は今後も続き、2030年までに世界で8,500万人の技能労働者が不足することが予測されている。
状況は米国でも同様だ。Stanley Black & Deckerの調査によると、米国の建築業界では現在65万人以上の技能労働者が不足しており、この問題はパンデミックによってさらに深刻化した。米国商工会議所のデータによれば、それ以降約4,700万人の従業員が労働市場を去ったか、他分野に移ったとされている。人口動態の変化もこの供給ボトルネックの理由のひとつだ。ベビーブーム世代は十分な技能訓練を受けており、技能労働者の代表格であったが、まだ引退していない人々も今後数年で退職する見込みであり、MEPビルサービスなどの分野ではさらに人材不足が加速することになる。米国労働統計局によると、2017年の時点ですでに、技能労働者の43%が45歳以上を占めており、16歳から24歳はわずか10%に過ぎないことが判明している。
こうした人材不足に立ち向かうには、少ない人材を効率的に使うというだけでは不十分だ。環境の観点からも、革新的な技術を取り入れることが不可欠となっている。建設業界は世界最大級の環境負荷を抱える産業のひとつだ。オフィス、住宅、産業施設、インフラの建設は膨大な資源を消費する。国連の報告書によると、世界の建設業は二酸化炭素排出量の38%を占めている。英国では、建造環境の二酸化炭素排出量の約20%が建設によるもので、また現在の推計によればこの数字は2035年までに50%以上にまで増加する可能性がある。また米国では2018年の建設・解体プロジェクトによる廃棄物の量は6億トンを超えたが、これは米国内の家庭と企業が排出する廃棄物量の2倍以上に相当する。
建設業界は、ますます厳格となる効率性とプロジェクト管理要件の影響を受けている。MEPビルサービスおよび産業プラントエンジニアリングにかかる多くのプレッシャーが、オートデスクと、これらの分野を専門とする国際企業であるオーストリアのIGO Industriesとのパイロットプロジェクトを生み出すきっかけとなった。IGOはこれらの分野を専門とする国際企業だ。Autodesk Construction Cloud (ACC) を活用し、大規模建設プロジェクト向けのクラウドベースの管理ツールのメリットを集約するとともに、パートナー各社と共有可能なSSOT (信頼できる唯一の情報源) データベースを作成している。両社は連携し、プロジェクトのプランニング段階から完成に至るまでこの情報を活用する。
「このソリューションはセキュアな技術を使用して複数のステークホルダーを単一の大規模ネットワークに統合します」IGOの子会社Ortner AnlagenでCADおよびIT管理者を務め、ソフトウェア開発に重点を置くミヒャエル・メア氏はこう話す。
ACCは、Autodesk Assemble、BuildingConnected、BIM 360、PlanGridなどの既存のプログラムを基に構築されている。これらのプログラムには、プロジェクト、データ、参加者が連携するクラウドストレージシステムなどの新機能が追加されている。また、プランニング段階と建設段階で生成されたデータは、MEPビルサービスが稼働を開始した後の運用段階でも利用できる。これにより、エネルギーやその他の資源のコストを低く抑えることができ、ひいてはCO2排出量も削減できる。
ニューハンプシャー州プレイストーに本社を置く電気工事施工会社PH Electricでは、こうした技術が大きな効果を上げている。同社は、電気サービス、エンジニアリング、建設に加えて、電気通信システムや火災警報システムのサービスも提供している。仮想設計施工 (VDC) ディレクターのコリー・コールマン氏は、バックオフィスと建設現場間のデータ連携が大幅に改善されたことを高く評価している。
「スタッフは古い図面で仕事をしていたのですが、それが問題でした」と、コールマン氏。「これらのファイルの更新作業は煩雑で、多くの時間と資源が費やされていました」。しかし現在は、BIM 360を使用することで、現場監督は常に最新版の図面にアクセスできる。
「BIM 360 GlueやBIM Collaborateを介して全員で情報を共有し、全員が同じ環境で作業できるようになったことで、現場作業員との調整もより簡単になりました」とコールマン氏は話す。共同設計プロセスは、従来よく見られた個々のタスクへの盲目的なアプローチを回避することができ、非効率的な配線や配管設計を防ぐことができるようになった。さらにもうひとつの成果は、人件費と資材の大幅な節約だ。「Autodesk Revitを活用することで、のちに発生する設計変更を最小限に抑え、よりシンプルに対応できるようになりました。現在では必要な部品を事前に製造し、サイズに合わせて正確にカットしておくことができるため、現場で働く者の負担が大幅に軽減されました」。
部品が完璧にフィットするようになり、試行錯誤による調整が不要になったことで、建設現場スタッフは材料の使用量を大幅に減らすことができた。ビルディング インフォメーション モデリング (BIM)の導入により、PH Electricの材料効率を場合によっては50%から90%以上にまで引き上げるのに役立った。「こうした効率の向上は、当社のコストを削減するだけでなく、クライアントの建設費を抑えることにもつながります」と、コールマン氏。「さらにより魅力的な市場価格でサービスを提供できることが、当社に大きな競争上の優位性をもたらしています」。
PH Electricは、建物のエネルギー効率を事前にチェックし、最適化可能な箇所を特定するのにRevitを使用している。また、Revitは建物のヒートマップを作成したり、エネルギー消費をシミュレーションすることも可能だ。「3Dモデルによって、信頼性の高いコスト分析を行うことができます」と、コールマン氏。「この情報は顧客の効率的なビル運営に役立ち、その結果として、環境と気候の保護にも貢献します」。
空調業界で事業を展開する高砂熱学工業グループもまた、プロジェクトの建設段階により多くのBIMベースのプロセスを導入している。同社は、人口統計学的要因と働き方の変化によって、作業負荷を軽減し効率を高めるソリューションへの需要が高まっていることを認識していた。「生産性を向上させ、建設業界全体の魅力を高めることが私たちの課題です」同社DX推進担当の古谷元一氏はこう話す。
高砂熱学工業が従来のCADシステムからBIMへの移行を発表してからまもなく、多くのサプライヤーも設計プランニングにBIMを組み込むことを選択した。しかし、変革プロセスはまだ始まったばかりだ。「ワークフローを変えるには時間がかかります」と、古谷氏。「図面の作成だけなら専用のCADを使った方が早い場合もあります。しかし、全体的な変更や進捗管理など、プロセス全体で見るとBIMには大きな利点があります」。高砂熱学ではBIMを使用するプロジェクトを段階的に増やしている。「生産性の具体的な向上を数値化し、パートナーに実証するよう努めています」古谷氏はこう話す。
3Dモデルに含まれる情報は、運用期間を含む建物のライフサイクル全体を通じて利用でき、またそのようなモデルは従来の建設図面を使用するよりも大きな価値をもたらすと、古谷氏は話す。「当社の企業目標は『環境クリエイター』になることです」と、古谷氏。「BIMベースのプロジェクトはこの目標を達成するための基盤となります」。高砂熱学工業の最終的な目標は、建設から解体までのライフサイクルのあらゆる側面において、運用時のCO2も含めた建物のカーボンフットプリントを考慮し、包括的なソリューションを提供することである。同社は、建物のプレコンストラクション段階と建設中に発生する温室効果ガスのシミュレーションを顧客に示し、効率を高めるためのさまざまな選択肢を提供することを計画している。
クラウドベースのBIMツールは、MEPビルサービスのプランニングに実際の経済的メリットをもたらすと同時に、資源効率と気候保護を向上させる。このような要因によって、若者たちは再び建設業界の技能労働者としてのかけがえのない地位を追い求めるようになるかもしれない。
ケルン大学で国際関係学と演劇・映画・テレビについて学んだ後、不動産業界専門の出版社inmedia Verlagで研修生となる。2009年からは、B2B分野の専門出版社や中小企業、国際的な事業展開をしている企業でジャケルン大学で国際関係学と演劇・映画・テレビについて学んだ後、不動産業界専門の出版社inmedia Verlagで研修生となる。2009年からは、B2B分野の専門出版社や中小企業、国際的な事業展開をしている企業でジャーナリスト、編集者、PRコンサルタントとして活躍している。主なテーマは、ビジネス・金融、不動産、テクノロジー、ソフトウェア。
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