Nexus Powerが植物を活用してサステナブルなバッテリー製造を実現

双子の姉妹により運営されるインドの新興企業Nexus Powerは、農業廃棄物を活物質の構成に利用することで、持続可能なバッテリー製造に革新をもたらしています。


Nexus Power共同設立者のニキータとニシータ・バリアルシン氏はEV用バッテリー製造にサステナビリティをもたらしつつある

[提供: Nexus Power]

Nexus Power共同設立者のニキータとニシータ・バリアルシン氏はEV用バッテリー製造にサステナビリティをもたらしつつある

Drew Turney

2026年2月17日

分: 読書時間
  • 電気自動車が普及するにつれ、メーカーはバッテリーエネルギー向けの持続可能な材料とプロセスを探求するようになっている。

  • インドの新興企業Nexus Powerは、農業廃棄物由来の電気自動車用バッテリーを開発中だ。

  • 共同設立者であるニシータとニキータのバリアルシン姉妹は、生分解性を持つサステナブルなこの電池製造に、迅速なイテレーションとサーキュラーデザインの原則を応用している。

インドはテクノロジーの早期導入に積極的な国として知られ、またプログラミングやグリーンテックにおける変革の拠点でもある。インドには、国家レベルの先進的な政策やプログラムを通じてより環境に優しい交通ソリューションに取り組んできた歴史がある。インドでは電気自動車の普及が加速しており、環境に配慮したバッテリーソリューションが急務となっている。そこに登場したのが、サステナブルなバッテリー製造の問題に挑む新興企業、Nexus Power創業者である一卵性双生児のニシータとニキータのバリアルシン姉妹だ。

二人がESGマトリックスのフレームワークのような定量的なサステナビリティ指標に興味を持ったのは大学在学中のことだった。工業化と人間活動全般から生じる環境問題を改善する方法を模索していたところ、さまざまな出来事が重なり、エキサイティングな新しいバッテリー技術を生み出す道を歩むことになった。

デリーで開催された自動車ショーに参加したことが最初のきっかけとなった。ニキータ・バリアルシン氏は、そこで現代の自動車に使われる電気部品の多くが最後には電気電子機器廃棄物(E-waste)と成り果てていることを認識したという。そこで二人は最も有害でムダの多い要素のひとつであるバッテリーに焦点を当てることにした。「リチウムのような有害性がなく、電気化学的に充電できて電池として機能する材料の研究をスタートさせました」とバリアルシン氏は話す。

画期的なNexusバッテリーに使用されている材料は作物の残渣から合成されている
画期的なNexusバッテリーに使用されている材料は作物の残渣から合成されている [提供: Nexus Power]

ブレイクスルーは、ある研究論文の一行からもたらされた。そこには、ある種のタンパク質が効果的なバッテリーの電解液として機能する可能性が示唆されていた。最初のいくつかの試作はCOVIDのロックダウン中に自宅で行われた。これはひよこ豆とインゲン豆から作った手作りのバッテリーではあったが、最大5ボルトの出力を生み出した––これは「これほど未加工でベーシックな、インドの家庭で簡単に手に入る」ものから得られたものとしては素晴らしい結果だと、バリアルシン氏。「作物残渣を集め、そこからタンパク質を抽出し、新世代の電池を作ることに成功したのです」。

好奇心から始まった試みは、拡張可能なソリューションへと発展した。当時ニュースでは、農場での作物の刈株の大規模な焼却が原因で大気の質が悪化していることが報じられていた。作物の収穫では、株を引き抜くのではなく、地面すれすれで切り落とすことがほとんどだ。このため畑には刈株 (残渣) がたくさん残される。これを次の植え付けまでに取り除く必要があるが、焼畑は発展途上国でもっとも一般的な残渣の処理手法のひとつだ。

しかし、地球上で最も人口の多い国で活動するNexus Powerにとって、作物残渣はある大きな意味を持つ:ほぼ無限に材料が手に入るということだ。「私たちの計算では、まず品切れになることのない材料です」バリアルシン氏はこう話す。インドの莫大な農作物残渣を、高性能電池材料に転用できるかもしれない。これは、有害な二酸化炭素排出量を削減するだけでなく、持続可能なインプットループを生み出す。

Nexus Powerのサーキュラープロセス

Nexusセルの初期プロトタイプにはブバネーシュワルにあるNexusオフィスで合成、製造された材料が含まれている
Nexusセルの初期プロトタイプにはブバネーシュワルにあるNexusオフィスで合成、製造された材料が含まれている [提供: Nexus Power]

農業廃棄物をバッテリー用バイオマテリアルの生産に利用できれば、何百万トンもの廃棄物を焼却せずに済み、代わりにサステナブルな新しい製品サイクルに回すことができる。このプロセスは輸送も可能だ––研究・生産ユニットは、タンパク質を豊富に含む原料が入手可能な場所ならどこでも、つまりほとんどどこにでも設置することができる。

さらに重要なのは、バッテリーの製造方法を変更する必要がない点だ。「レイヤリングとクリンピングは同じです。弊社がタンパク質を合成し、陽極と陰極のスラリーを作成します。その後、そのスラリーが既存の機械や設備に取り込まれ、一般的な工程で製造されます。これ以外はすべて同じなのです」バリアルシン氏はこう話す。

タンパク質ベースの材料を、既存の、あるいは確立された電池製造インフラにそのまま導入できることは、環境とビジネスの持続可能性にとって極めて重要だ。企業にとっては製造工程を全面的に変更するのに多額の資金を費やすことを望まないし、消費者も出来上がったバッテリーに桁違いの金額を支払うつもりはないだろう。

バリアルシン姉妹は、パートナーに対して説得力のあるビジネスケースを作り上げるために既存のインフラを利用する能力も利用した。「スタートアップには新しい製造ユニットを設置するための資金の余裕がありません」と、バリアルシン氏。「ですから、利用可能なインフラに合わせる必要がありました」。

Nexus Powerのバッテリーは、廃棄物を材料とするだけでなく、完全な生分解性を持つ。正極/負極/混合物から成るこの電池は、充電がなくなれば基本的にただの古い葉っぱや植物と同じだ。プラスチック製のケースや金属製の配線を取り除けば、コンポストに捨てるだけで済む。

バリアルシン氏は、Nexus Powerのバッテリーは鉛蓄電池やリチウムイオン、あるいは普及しつつある代替化学物質よりも優れた性能を発揮していると付け加える。農業用スラリーはエネルギー密度がより高いため、他のタイプの同サイズのバッテリーよりも最大25%性能が向上する––また、材料が豊富かつ安価なため、価格も安くなると、バルアルシン氏は話す。

Nexus Powerには性能とコストでこの分野をリードする手段があるが、サステナビリティの重視が同社最大のセールスポイントであり、同社に独自性を与えていると、バリアルシン姉妹は考えている。

グローバル市場を成長させる

Nexusは2W/3WのEVバッテリーパックの車両試験とモーター試験を実施している
Nexusは2W/3WのEVバッテリーパックの車両試験とモーター試験を実施している [提供: Nexus Power]

世界中で電気自動車やエネルギー貯蔵の需要が急増するなか、Nexus Powerが世界大きな影響を与える可能性は十分にある。EVやドローン、ノートパソコン、スマートフォン、その他の家電製品まで、日常生活の至る所に存在する数々のツールにバッテリーが搭載されている。電力グリッドストレージでさえバッテリーで動いている。「EVは新興産業です」とバリアルシン氏は話す。「ですから、これらの産業においては、試験やテストを通じて部品や要素を変更しやすいのです」。

Nexus Powerは、KIIT-Technology Business Incubator (KIIT-TBI) から初期支援を受けた。KIIT-TBIはオリッサ州のKIIT大学発の非営利インキュベーターで、エレクトロニクス、AR/VR、バイオテクノロジー、医療技術の分野で450社以上の新興企業を支援してきた。「TBIは早くから私たちのアイデアに信頼を持ってくれました。また、私たちのような若い女性起業家を適切なインフラでサポートしてくれています」バリアルシン氏はこう話す。KIIT-TBIはNexusの政府補助金獲得を支援し、材料合成装置、電気化学試験、3Dモデリング、印刷へのアクセスを提供した。

インド政府からの助成金と株式投資家による資金援助のもと、数年にわたる研究開発を経て、Nexus Powerは現在、年内の商業展開に向けて準備を進めている。同社は、ターゲットとするモビリティおよびステーショナリー市場に技術と製品ロードマップを合致させるべく、大規模な試験を行っている。これらの試験結果は、約100MWhの容量を持つ試験的な製造工場に反映される。この工場は、EV、ドローン、バッテリーエネルギー貯蔵システム (BESS) 、無停電電源装置 (UPS) 用途における、より広範な試験の展開に役立てられる。6か月以上にわたり、Nexusは厳格な試験を実施して認証取得を開始しており、10〜12か月以内に1GWhまで生産規模を拡大することを目指している。

「論文を仕上げ、製品に関する市場の確信を構築しようとしているところです」と、バリアルシン氏。「既存のインフラからまったく別の化学構造を持つバッテリーへと移行することになるため、バイヤーがこの変化を受け入れることができるよう、十分なバイヤー実績を作り、信頼性の基盤を固めることを目指しています」。

NexusはAutodesk Fusionを使用してバッテリーパックを設計、試作している
NexusはAutodesk Fusionを使用してバッテリーパックを設計、試作している [提供: Nexus Power]

オートデスクはこれまでの成長を通じて同社の重要なパートナーとなっている。Nexus PowerはAutodesk FusionAutoCADソフトウェアを使用してバッテリーの詳細設計、シミュレーションテスト、プロトタイプ作成を行っている。「初期のプロトタイプはすべて3Dプリントで作成し、そのワークフローはFusionで管理しました」バリアルシン氏はこう話す。FusionはCADとCAMを統合し、1つのソフトウェア環境で設計開発、レイヤーオプション検証、プリント用ファイルの準備が可能だ。「3Dプリントを使用することで、デザインのレイヤーとカットのすべて把握できました。このソフトウェアはバッテリーパック全体を設計する上で最も信頼できるツールとなりました」。

Nexus Powerチームがプロトタイプを3Dプリントで作成することを選択した理由は3つある。1つ目は、最初の試験で使用したかったセルの種類と形状が当時入手不可能で、またそれを製造するのに必要なフライス盤も利用できなかったことだ。2つ目は、非営利のインキュベーターであるKIIT-TBIに3Dプリンターのワークフローがあり、同社がそれを利用できる状態にあったことだ。

3つ目は、そのスピードと機敏性だ。「3Dプリントは、複数のプロトタイプを極めて迅速に作成するのに役立ちます」と、バリアルシン氏。「バッテリーパック1つを作成するのに2、3日しかかかりませんでした。金属加工で作成していたらもっと時間がかかっていたことでしょう。3Dプリントは材料も軽量でありながら、金属加工の強度と支持力すべてを提供してくれます」。

未来は女性が握っている

いまだに男性が大半を占めるこの業界で、Nexus Powerは女性主導の技術革新の例として際立っている。創業者のニキータとニシータはMBA取得者で、ニシータは会計学の学位も取得しており、同ベンチャーにビジネスと財務の才覚をもたらしている。

女性の数は増えつつあるものの、ジェンダーバイアスは依然として静かな、しかし根強い障壁となっている。テック業界の女性たちはいまだに懐疑論や困難を経験している。Nexus Powerの勢いと成功は、テック分野に新風を巻き起こしている若い女性の一例だ––-だがそれはまだ数少なく、まれな例だ。ジェンダー平等を取り巻く状況は急速に変化しているが、まだ実現への道のりは長いと、バリアルシン氏は話す。

Drew Turney

Drew Turney について

成長の過程で世界を変えたいと考えていたドリュー・ターニーは、やがて他の人がどう世界を変えているかについて書くほうが簡単だと理解しました。現在はテクノロジーや映画、科学、書籍などの著述を行なっています。

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