エコ設計、あるいはグリーン設計とも呼ばれるサステナブル設計は、建物にリサイクル材料や環境に優しい材料を使用することだけにとどまらない。その目標には、建物の建設時およびライフサイクル全体を通して、建物の悪影響を低減する環境に配慮した長期的な設計選択肢を発見、提案、実現を支援することが含まれる。
今日、企業は、サステナブルな建造物の設計が対処すべき難問であり、また他の企業よりも一歩抜きん出る機会であることを認識している。企業がより環境に配慮した慣行へとシフトするにつれて、各分野における基準が設定され、それが競争を刺激し、潜在的な顧客からの関心を高めることになる。
しかし、サステナビリティのための設計はプロセスの初期段階に限定されるものではない。サステナブル設計は、計画から保守、最終的な解体に至るまで、プロジェクトの根幹に組み込まれるべきだ。業界のリーダーたちは、環境に配慮したデザイン、製品、製造を推し進めている。それは、今すぐに役立ち、資源や周辺環境に与える影響が少なく、今後にも有効で、パリ協定やその他の気候変動イニシアチブの目標に向けて米国やその他の国々を前進させるためだ。
建造環境は世界のエネルギー消費の40%を占めている。建物の建設と運用におけるエネルギー消費の削減は、ネットゼロの目標達成に大きく貢献する。サステナブルな建物の設計には多くの検討事項があるが、参画を選択した企業は、その恩恵が建物そのものと同じくらい––あるいはそれよりも長く––続く可能性があることに気づくだろう。
サステナブル設計では、設計、調達、建設、保守、解体の全段階において建物の持続可能性を考慮する。その目標は、ムダを減らし、生活を向上させ、環境への影響を減らすことだ。
設計におけるサステナビリティへの動きが年々高まっている理由を理解するのは難しいことではない。地球は温暖化し、気候は変動している。環境はその変化の矢面に立っており、人間の生活環境にも深刻な影響を与えている。各企業は、ムダが多いことで悪名高い建設業界をより有害性の低い分野に変えていかねばならないという危機感を受け入れつつある。
製品の全サイクルにおける二酸化炭素排出量の80%は、製品設計段階で決まると推定されている。これは建築や建設にも当てはまる。実際、建設業界は天然資源採掘量の30%以上を占め、また世界全体で年間固形廃棄物の30%を排出している。その廃棄物は、成長する建築・建設事業により倍増する。2060年までに、世界の建築面積は2.5兆平方フィート増加すると推定されている。これは、毎月ニューヨーク市を新たに建設するに相当する––そして、それ相当の廃棄物も発生するのだ。
今こそ、崩壊した循環へとメスを入れ、文字通り方向転換する時だ。ほとんどの建設は、建物や製品の耐用年数終了段階を考慮しない、直線経済モデルに基づいて構築されている。これは廃棄物に依存した生産形態だ。しかし、スマートで、効果的で、サステナブルな設計原則は、このタイプの設計への転換を容易にし、プロジェクトのすべての利害関係者にとってメリットをもたらすものにすることができる。
「リデュース (削減) 、リユース (再使用) 、リサイクル (再資源化) 」という言葉は、今もなおサステナブル設計の良い指針となっている。それは、達成可能な複数の評価項目を持つ現実的な戦略や原則へと変換される。
エネルギー効率:サステナブル設計におけるエネルギー効率は広範囲に及ぶ。現場でのエネルギー消費の削減は確かに経費節減につながるが、材料の生産に使用されるエネルギーや、建物がどう運用されるのかも考慮しなければならない。施工者や建築家はさまざまなソフトウェアを使用してエネルギー使用量をシミュレーションし、再設計して、よりスマートな選択をすることができる。
材料の選択:基礎工事に使われる材料から壁に塗られる塗料まで、建築プロジェクトでは何百、何千もの材料を選択する必要があり、そのひとつひとつがより持続可能な決断の機会をもたらす。無害なリサイクル材料はそのほんの手始めに過ぎない。施工者やエンジニアは、EC3 (建設におけるエンボディド カーボン計算機) と呼ばれるオープンソースのツールを使用して材料のエンボディドカーボンコストを計算することもできる。これにより施工者と施主は、材料を選択し輸送する前に、その材料のサステナビリティ「コスト」を把握でき、より持続可能な選択が行える。オートデスク独自のツールでAECOポートフォリオの一部でもあるTotal Carbon Analysisは、あらゆる意思決定における炭素使用量に関する知見をもたらし、エネルギー使用量を削減し、建築物や構造物の長期使用における二酸化炭素排出量を削減するのに役立つ。
水の保全:気候の変化は資源の変化も意味する。たとえば、世界の多くの地域で水源が不足したり不安定になったりしている。サステナブル設計では、建設中だけでなく、プロジェクト完了後の水の使用と廃棄についても考慮すべきだ。自生する植物や樹木は周辺環境の保水に役立つのか? ビルの冷房に排水を利用できるのだろうか? オートデスクの水理モデリングソフトウェアは、雨水流出やその他の自然水源の影響を測定し、サステナブルな水利用計画を作成できる。このソフトウェアには、エンジニアが下水道や上水道のネットワークを計画する際に役立つ機能もあり、損耗や、洪水のような使用量の多い状況での性能を予測するモデルを実行できる。
室内環境の質:持続可能性を考慮した設計で考慮されるのは物理的な建物や構造だけではない。空気の質から温度調節、採光や換気まで、室内環境への影響も考慮する。Revitは、建築家や設計者が新しい建造空間の可能性を思い描くのに使用される。BIMモデルはさまざまな状況をシミュレートし、それぞれの潜在的な結果とニーズを明示できる。これは、建築家や設計者が、外部空間と同様に十分に考慮されプランされた内部空間を作成するのに役立つ。
再使用と生分解性を考慮した設計:建物は他の設計された製品とは異なる。ライフサイクルが長いのはもちろんだが、設計・開発された時点ではその終点が不明であったり不明瞭であったりすることが多い。優れたサステナブル設計は、さまざまなシナリオを予測し、建物が実際に使用される全段階を想定する。
公害の最小化:サステナブル設計の場合、公害の最小化とは、廃棄物の排除以上のことを考えることを意味する。たとえば、グリーン認証の基準を満たす美しい構造物の建設は賞賛に値するが、そこで働く人々あるいは想定居住者から遠く離れた場所に建設されたことにより、通勤によってさらに多くの公害を発生させてしまうようになったらどうだろう? サステナブル設計ではより広い範囲の「公害」を検討して最終的な影響を理解する必要がある。Revitに含まれるAutodesk Insightは、建築のあらゆる要素とそれ以外の要素の二酸化炭素使用量をモデル化できる。このデータを活用すれば、材料や設計についてより良い選択ができ、建物が築年数を重ねても二酸化炭素排出の影響を抑えることができる。
支援技術は、持続可能の原則を設計に取り入れる上でカギとなる。あらゆる段階で、アプリケーションやソフトウェアは、建築家やエンジニアが設定した目標やパラメータに沿って、プロジェクトを計画、作成、再構築できる。人間は実体験を活用し、テクノロジーは既存の手法を超えた実現可能な選択肢を採る。
製品や建物に与える影響のほとんどは設計の初期段階で決まる。しかし、プロジェクトのパートナーが影響を及ぼすのはここだけではない。良好なサステナブル設計は、設計段階から建設前、建設中、そして保守や解体まで貫かれる。
エンジニアは設計を、実際のコストと材料で、実体へと転換させる。エンジニア、建築家、設計者、クライアント間のパートナーシップは、設計のサステナビリティ目標を達成する上で極めて重要だ。別の言い方をすれば、エンジニアは、ネットゼロカーボンを約束する設計と、実際にネットゼロを実現する設計とのギャップを埋める。次にエンジニアは、建築家の次のプロジェクトを強化し、建造環境にさらなるサステナビリティを構築するための新しいアイデアやフィードバックを提供する。
テクノロジーは、材料の影響、建物の冷暖房コスト、建築現場の環境への影響を設計者やエンジニアが理解するのに役立つ。ソフトウェアやアプリケーションは、建物が遭遇する可能性のあるほぼすべての状況をシミュレートできる。そして設計者、建築家、施工者はサステナブル設計の一環として調整できる。また、人工知能 (AI) やビルディングインフォメーションモデリング (BIM) などの先進技術を活用し、時代の変化に備え、建物の老朽化を緩和できる。
たとえば、冷却塔のファンがいつ交換時期を迎えるかを予測し、定期的なメンテナンスによってその製品寿命をどれだけ延ばせるかをシミュレーションで判断することも含まれる。モノのインターネット (IoT) デバイスは設備をリアルタイムで監視し、インフラの潜在的な問題を事前に察知してコストのかさむ機能停止を回避できる。
リアルタイムセンサーやスマートビル技術も、建物の使用による影響を把握するのに役立ち、サステナビリティの向上やムダの最小化のために調整すべき点があればそれを教えてくれる。
これらの技術やツールは、環境に配慮したソリューション以上のものをもたらす。それは大幅なコスト削減だ。新築の場合、初年度の営業コストの平均削減率は10.5%、5年間のコスト削減率は16%を超える。
デザインや生産の多くの要素同様、サステナブル設計も急速に変化している。これらのトレンドを活用し、学び、実践することは、最新のサステナブル設計を実現し、今後の可能性を思い描くのに役立つ。
スマートビルディング技術:スマート家電やスマートテレビのように、建物もセンサーやAIなどでリアルタイム監視できるよう構成可能だ。この情報の流れは、占有者と管理者がデータを収集して分析し、フィードバック、メンテナンス、知見を得るのに役立つ。この情報は、占有者の生活の質を向上し、ムダを削減し、潜在的な問題源を特定できる。例えば、センサーが「建物のあるエリアが特定の時間以降は使用されていない」と報告した場合、そのエリアの空調(HVAC)システムを節電モードに切り替えたり、照明を調光または消灯したりするように設定できる。この実践は大幅な節約につながる。ACEEE (米国エネルギー効率経済評議会) によると、スマートテクノロジーを利用する企業はオフィスのエネルギー使用量を18%削減できる。
パッシブデザイン戦略:「パッシブデザイン」というと少し語弊があるが、ほとんどの場合、デザインの選択は非常に意図的なものだ。これは、地域の気候や立地を利用して、積極的な冷暖房の必要性を減らす設計を指す。建物の最適な立地の決定には、サステナビリティを向上させるためのさまざまな要因が考慮される。たとえば、朝日を暖房に利用しつつ、午後の日差しで暑くなりすぎるのを防ぐために、建物を一定の方向に向ける必要があるかもしれない。この選択を最適化するため、利用可能な太陽エネルギーを暖房や電力に利用するサーマルマス技術を採用できる。
バイオミミクリーとバイオフィリックデザイン:優れたサステナブル設計は、建物がその環境とどのように関わり、建物の環境がどのようにスマートな選択肢につながるかを評価する。バイオミミクリーは、自然が持つ優れた仕組みをヒントにして、新たな建築材料やエネルギー効率の向上に活用するアプローチだ。たとえば、海洋動物が持つ撥水性に注目することで、建物のからの雨水の流れを増加させ、より多くの水を再利用し自然環境に戻すことができる新しい布地のアイデアにつなげる。また、バイオフィリックデザインは、生活の質を向上させたり、サステナビリティ目標を達成するために自然の要素を建築計画に組み込むものだ。たとえば、屋上テラスに並木を植え、自然光と新鮮な空気を占有者に提供すると同時に、樹木で建物に陰を作ることでエネルギーコストを下げることができる。
アダプティブリユース:ほとんどの建物は耐用年数50年で設計されているが、一部はそれよりずっと長く持つ。だが、その半世紀の間に建物の用途が変わることもある。アダプティブリユースは、古い建物を改修、近代化、再構築することで新たな妥当性を与える。環境に配慮した改修や改造を行った建物では新築と同程度の運用コストの削減が見られる。最初の12か月で、平均営業コストは11.5%減少する (PDF 2ページ) 。
ジル・カーツ氏は、テキサス州ヒューストンの建築/エンジニアリング会社Pageのサステナビリティプログラムマネージャーだ。そこで持続可能性に配慮した選択肢をクライアントやパートナーに提供しながら、企業の設計方針の形成にも貢献している。
カーツ氏は建築の学士号を取得後、インドで非営利団体のために働いた。設計者、建築家、サステナビリティ専門家の間でのさらなる融合の必要性を理解し始めたのはこの時期だったと、カーツ氏は話す。
たとえば、カーツ氏はビル性能分析を使用して、建築が環境に与える影響を定量化し、クライアントが選択肢や代替案についてよりよく理解できるようにしている。一例であるマススタディは、ガラスを建物に組み込むことによる影響や、その使用方法を示すことができる。ガラスは、熱取得を最大化することで従来の空調設備の使用を抑えて建物を暖めることができる。また、建物内に取り込む自然光の量を増やすことで電気料金を削減し、居住者の生活の質を向上させることができる。
サステナブル設計を実践し新しい技術やテクニックを学ぶには、コミュニケーション、教育、コラボレーションの継続的なループが必要だ。これはプロジェクト初期段階の話し合いのはるか前から始まり、最終的な設置が完了した後も続く。サステナブル設計を実践するステップには次のようなものがある。
早期計画:BIMとモデリングの技術はプロジェクトの初期開発に不可欠だ。設計者やエンジニアがスケジュールから予算までプロジェクトに必要な要素を計画するのに役立つだけでなく、パートナーが特定の分野に的を絞り、ムダを省き、コストを削減し、二酸化炭素排出量を減らし、建設チームの安全性を向上させるのにも役立つ。
コラボレーション:建設は、何十、時には何百もの施工会社、設計者、協力会社を必要とする協調的産業である。エンジニアリング/建設会社のBAM Irelandは、複数の建設工事を伴う大規模プロジェクトである統合計画手法を使用した。パートナーはスケジュールを押し付けられるのではなく、ステークホルダーが見込みや例外の可能性を共有し、サステナビリティを重視した現実的なスケジュールを作成する計画会議に参加した。
継続的な教育:サステナブル設計は過去10年間に急速な進歩を遂げ、今なおますます急速に変化している。建築事務所や設計事務所は、サステナビリティに焦点を合わせるために様々なレベルの教育やリスキリングを実施する必要がある。これには、継続教育コースやバーチャルトレーニングのような公式のトレーニングだけでなく、建設後の反省といった非公式な機会も含まれる。
顧客教育:最高のサステナブル設計も、クライアントがそのようなオプションを選ばなければ実現できない。シミュレーションによって、運用コストの削減や、重大な機能停止、不具合を防ぐ保守スケジュールを示すことはできる。しかし、クライアントはこれらの選択肢が実際に使用されている様子をその目で確かめたいと望むこともある。そのような場面こそ、設計者や施工者は過去のクライアントから得た成果を示し、サステナブル設計の効果を具体的に示すことができる。
企業がサステナブル設計を進めることで業界全体の変革への道が開かれ、すべての人に利益をもたらす。環境に配慮した取り組みへの投資は、企業がより環境に優しい現在を実現するだけでなく、よりサステナブルな明日を保証することにもつながるのだ。
キンバリー・ホランドはアラバマ州バーミングハム在住の、ライフスタイル系記事のライター、編集者。所有する書籍を色分けしていないときは、キッチン向けの新しいガジェットを使った料理の実験を友人たちへ披露することを楽しんでいます。
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