インフラの改善、豊富な労働者、中産階級の台頭、経済の多様化、民主主義の拡大、自由貿易の進展のおかげで、アフリカ諸国では住宅開発において新たな機会が生まれている。アーンスト・アンド・ヤングはアフリカを、世界の投資家にとっての「最後のフロンティア市場のひとつ」と呼んでいる。
ただし、課題は残っている。ケニアを例に挙げてみよう。世界銀行によると、2015年から2019年にかけての同国の経済成長率は年平均4.8%で、これは同程度の所得を持つ多くの国々よりも、またアフリカの他国よりも速い。それでも、国民の3分の1以上が貧困にあえいでいる。
世界銀行は「ケニアは過去10年間、持続的な経済成長、社会発展、政治的安定の向上に寄与する重要な政治経済改革を行ってきた」と報告している。しかし、貧困、不平等、若年失業、透明性と説明責任、気候変動、長引く民間投資の低迷、国内外のショックに対する経済の脆弱性など、開発における主要な課題は依然として山積している。
ナイロビを拠点とする建築/エンジニアリング/建設会社BuildX Studioによれば、こうした課題は今後数十年でますます大きくなるという。アフリカの人口は2050年までに倍増すると予想されており、その時には地球上の新築建造物の35%がアフリカ大陸で建設されることになる。ケニアの首都で、BuildX Studioはこのエリアでサステナブルかつアフォーダブルな住宅の開発を進めることで、地域の責任ある公平な成長を支援する。
「私たちが今日建設するものが、明日のアフリカとアフリカ人を形成することとなるでしょう」BuildX幹部で、世界グリーンビルディング協会副会長を務めるエリザベス・ワンゲチ・チェゲ氏は、BuildXの2021年度インパクトレポート (PDF22ページ) の中でこう述べている。「BuildX Studioのような企業は東アフリカにおける低炭素排出を実現した健康的な建物のための革新的なソリューションを開拓しています」。
BuildXの取り組みを象徴するのがZima Homesだ。ナイロビ郊外で開発が進められているこの集合住宅はワンルーム、1ベッドルーム、2ベッドルームの全137戸から成り、1戸あたりの平均コストは23,000ドルとなっている。
「私たちは、人々の生活の質、幸福度、公平性、そして機会へのアクセスを向上させる建物を提供することを目指しています」BuildXマネージングディレクターのムネネ・マテンゲ氏はこう話す。「クライアントと協力し、エネルギーと材料に関するより賢明な決断を下すことで、すべての建物が根本的により優れたものとなる世界を創造するべく、全力を尽くしています。また、変化に直面した際にクライアントが学習し、適応し、発展していけるような支援にも取り組んでいます」。
BuildXは2022年6月にZima Homesに着工し、EDGE予備認証を取得した本プロジェクトを2024年初めに完成させる予定だ。
同社は新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) パンデミック初期にこのプロジェクトを着想した。「当時、誰もが自宅待機の状態でしたが、人々が住んでいる家の多くはみすぼらしいものでした」Zima Homes共同設立者で、BuildXでアフォーダブル住宅部門のリードを務める建築家エッタ・マデテ・ムクバ氏はこう話す。また、換気や自然採光が十分でない家に住んでいた人々にとっては、自宅待機が健康を守るどころか、むしろ有害だった可能性もある、と彼女は付け加える。低所得若年層のケニア人向けに設計されたZima Homesは、スワヒリ語で「完全体かつ健康」を意味する “zima“ という単語にちなんで命名され、持続可能性に包括的なアプローチをとっている。「それは単に自然を建物に取り入れるだけではありません」と、ムクバ氏。
たとえば、このプロジェクトではパッシブデザインを採用することで、快適な室内温熱環境を実現している。「住む人がエアコンを使ったり、電気をつけたりすることなく、快適に過ごせる空間を体験してもらいたいのです」とムクバ氏は話す。そのための重要な要素として、通風換気と日除けシェード付きの大きな窓が採用されている。「ナイロビでは、新築ビルの多くがガラス張りになっています。しかし熱帯気候において、ガラス張りの建物を建てるということは人間のための温室を設計するようなものです。エアコンを大量に使用することになり、電力を大量に消費し、環境にも良くありません」。
その他のサステナブルな設備として、雨水貯留施設や高効率の水道設備、共用部分にクリーンで再生可能なエネルギーを供給するためのソーラーパネル (個々の住戸は、後ほど自費で太陽光発電を設置したいオーナー向けに準備が整えられている) 、景観の良い庭、緑豊かな屋上テラスなどがある。さらに、各住戸にはバルコニーと、共有の共用スペースにもなる広々とした廊下が設けられる。
資材も重要な要素だ。使用される資材の多くはプリファブリケーションで、ほとんどが地元で調達される。これには、プリファブリケーションの壁パネルやビームアンドブロック工法の床も含まれる。「プリファブリケーションされた資材は通常の資材よりもサステナブルです。建設にかかる時間が短く、工場で品質管理が行われるためです」と、ムクバ氏。「また、このシステムはスケール拡張も可能です。つまり、やるべきことをやるのは一度でよく、それを複数のプロジェクトで再現できるため、結果として全体的な消費量を減らせます」。
BuildXの建築家ウェケサ・ジョージ氏によれば、こうした取り組みにとって、テクノロジーは重要なイネーブラーだ。「サステナビリティを実現するには、望みのインパクトを実際に与えているかどうかを知るためのデータ追跡が必要です」と、ジョージ氏。「テクノロジーはそれを非常に簡単にしてくれます」。
具体的には、BuildXはAutodesk Revitを使用してZima Homesの設計を行った。Revitでは、プロジェクトのデジタルモデルを作成し、さまざまな設計の環境性能をシミュレーションして比較することができる。たとえば、ビームアンドブロック工法の床の使用を決定する際、建築家はそれがプロジェクトのカーボンフットプリントに与える影響と、従来のコンクリートスラブに比べて建物の運用効率に与える影響を判断することができた。同様に、建物の構造的な完全性を損なうことなく、特定の材料の使用を最小限に抑えるための計算も実行できる。
「さまざまな革新的なシステムを非常に迅速に検討できるようになり、設計を繰り返し改善していくプロセスの効率化に重要な役割を果たしました」ムクバ氏はこう話し、たとえば人工知能やジェネレーティブデザインといったテクノロジーは、BuildXがその取り組みを拡大するにしたがってゆくゆくは設計の自動化に役立つかもしれないと付け加える。「2030年までに1万戸のアフォーダブル住宅を建設したいと考えています。自動化はその目標を確実に実現させる上で役立つでしょう」。
環境にとって良いことは、人間にとっても良いことだ。BuildXによれば、包括性と公平性は持続可能性と密接に関係しているという。
「サステナビリティはアフォーダビリティにつながります」と、ジョージ氏。彼によると、従来のアフォーダブル住宅の考え方は規模や質の縮小に重点を置いていました。それに対し、サステナブルアプローチは効率性を高めることに重点を置いているという。「空間が小さくなれば、コストは抑えられます。しかし、できることはそれだけではありません。ポジティブな結果を得るためにできることは他にもたくさんあります」。
BuildXは、Zima Homesの住民だけでなく、Zima Homesを建設する労働者に対しても公平性と包括性の正当性を重視している。18カ月にわたる本プロジェクトは、低所得者向け雇用100件を含む、650件の雇用を創出した。その一部は、Buildherの卒業生だ。BuildherはBuildXの姉妹団体であるNGOで、不利な立場にある若いケニア人女性に公認の建設技術を身につけさせ、女性の経済的将来性を向上させ、建設部門における男女平等を促進することを使命としている。
「ケニアでは伝統的に、建設業は女性にとって差別的な環境でした」と、ムクバ氏。BuildXでは、女性専用トイレやハラスメント防止方針といった対策を図ることで、建設現場の性差別排除を進めていると付け加えた。「持ち家を持つことに関しても、同じことが言えます。ケニアでは、土地や家の所有権を持つ女性はわずか1%しかいませんが、これはおかしなことです。女性は人口の50%を占めているのですから。この課題に対処すべく、女性グループや、普通は住宅購入の対象とはならない人々に働きかけて住戸を販売しています。また、必ず女性の営業担当者を配置し、書類説明を行うなど、購入希望者が抵抗を感じないように配慮しています」。
突き詰めれば、健康に良いものは、Zima Homesに住むケニア人だけでなく世界中の人々にも役立つだろうと、BuildXは考えている。同社は、このプロジェクトが、入手可能性、公平性、持続可能性についての概念を見直すことで何が可能になるかをデベロッパーやビルダーに対して証明することになるだろうと期待している。
「このようなプロジェクトの最大の障害は、デザインやサステナビリティではありません」と、ジョージ氏。「本当に難しいのは、この価格帯でこれだけのクオリティを備えた建物を提供することが実際に可能なのだと人々を納得させることです。これは新しいコンセプトであり、以前にも試みられて失敗しているため、多くの抵抗に直面します。それでも根気よく続けなければならないのです」。
マット・アルダートンはビジネスやデザイン、フード、トラベル、テクノロジーを得意とするシカゴ在住のフリーライター。ノースウェスタン大学の Medill School of Journalism を卒業した彼の過去のテーマは、ビーニーベイビーズやメガブリッジからロボット、チキンサンドイッチまで多岐に渡っています。Web サイト (MattAlderton.com) からコンタクト可能。
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