Conconcretoが持続可能なインフラへのデジタルな道をコロンビアで切り開く

コロンビアの建設会社が、サーキュラーデザインとBIMやAIなどのデジタル技術を通じ、どのようにに交通インフラを開拓して持続可能な目標を推進しているかを紹介。


Nueva Calle 13プロジェクトはボゴタの主要幹線道路を緑豊かな公共交通機関の回廊に変える

提供: IDU

Nueva Calle 13プロジェクトはボゴタの主要幹線道路を緑豊かな公共交通機関の回廊に変える

Matt Alderton

2025年11月3日

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  • 道路や橋には大量のコンクリートや鉄鋼が使用されるが、これらはカーボン フットプリントが極めて高く、コロンビアのような開発途上国に多大な影響を与えている。

  • コロンビアの建設会社Conconcretoは、輸送インフラプロジェクトにおけるコンクリートと鉄鋼の使用量を最適化し、設計と建設に循環型 (サーキュラー) アプローチを取り入れることで、気候変動の影響軽減の一翼を担っている。

  • ビルディング インフォメーション モデリング(BIM)と人工知能は、Conconcretoのような建設会社がデータを意思決定に活かし、環境目標を達成するのに役立つ。

道路は生命線だ。光と熱を届ける電線や、人間の居住環境を支えるのに不可欠な水道管のように、街路は食料、家族、医療、教育、雇用にアクセスする人、モノ、車両を運ぶ。

しかし、道路建設は森林伐採や野生生物の生息地の喪失をもたらし、土木工事、土壌の舗装、重機の使用、建築資材の消費、自動車文化の永続化などを通じて気候変動に大きく寄与しており、またこれらすべてが温室効果ガスを大量に排出している。

交通インフラは、安定性、回復力、開発、成長を可能にする重要な要素であるため、コロンビアのような開発途上国において道路は特に不可欠であり––それゆえに、気候変動による悪影響のリスクが高い傾向にある国では特に問題となる。

アメリカ合衆国国際開発庁 (USAID) が2024年11月に発表したコロンビアの気候変動国別プロファイルには、「コロンビアは主要な二酸化炭素排出国ではないが、同国の生産部門と独自のエコシステムは気候変動の影響に対して特に脆弱である。コロンビアの電力の3分の2を生み出す水力発電、農業などのコロンビア経済の重要な構成要素は、いずれも気候変動に対して非常に脆弱だ。一方、天気の変わりやすさ、不規則な降雨、長引く干ばつは、同国の農村や民族社会の伝統的な生活様式に不均衡な影響を与えている」と書かれている。

こうしたリスクに直面するコロンビア政府は、道路建設、拡張、改良プロジェクトに多額の投資をする一方で、2050年までにカーボンニュートラルを達成し、2030年までに温室効果ガス排出量を50%以上削減するといった野心的な気候目標を掲げている。

コロンビアの建設会社Conconcretoは、循環型社会へのコミットメントの高まりとデジタルトランスフォーメーションへの旺盛な意欲に後押しされ、より持続可能な道路や橋を設計することでその役割を果たしている。「私たちは持続可能性を深く信じています」ConconcretoのBIM統合部門ディレクター、トマス・トゥルヒーヨ氏はこう話す。「排出量は減らす必要があります…人類にはもうそれ以外の選択肢はないのです」。

材料を最小限に抑えることでポジティブな影響を最大化

ConconcretoのCalle 13プロジェクトは通勤時間を短縮し二酸化炭素排出量を削減する (video: 1:19)

世界の道路や橋の大部分はコンクリートと鉄鋼でできている。どちらも気候変動の主要な原因だ。世界経済フォーラムによると、コンクリートは水に次いで世界で最も広く使用されている材料であり、セメント製造は世界の総CO2排出量の約6%を生成している。鉄鋼はさらに多くの二酸化炭素を排出する。世界最大の排出量を誇る製造業は人為的な温室効果ガス排出量全体の7%を占めていると世界経済フォーラムは報告している。

コンクリートと鉄鋼の影響を減らすべく、Conconcretoは両者の使用量減少に取り組んでいる。「道路構造を大幅に最適化しています」とトゥルヒーヨ氏は話す。同社は、支持力をより正確に把握して地質学的な不確実性を減らすべく、打設された杭の実際の荷重試験を実施することでこの最適化を行っている。このプロセスは、過剰エンジニアリングを防ぎ、プロジェクトで構造的完全性と安全性の維持に必要な最小限の材料を使用するのに役立つ。「土壌の最大荷重を理解することは、より良い決断を下し、使用するコンクリートや鋼鉄の量を減らす方法のひとつです」。

コロンビアは地震が多いため、Conconcretoでは、交通インフラプロジェクト (特に橋梁) におけるサステナブル建築戦略として免震構造も採用している。免震構造とは、構造物を地面から切り離し、地震時に構造物の揺れを小さくする構造だ。

「免震装置とは、いわば橋の下にスケートリンクを敷くようなものです」と、トゥルヒーヨ氏。「スケートリンク」がショックアブソーバーのように機能するため、免震装置の上に建設された橋の揺れは緩やかになるからだ。「地震が発生する場合、構造物は軽くする方が得策です。つまり、免震構造を導入することで、コンクリートや鉄骨の量を減らすことができるのです」。

地震対策構造の導入は、安全性と持続可能性を同時に高めることにもつながる。「地震では地面が動きます。地面が動けば構造物も動く。つまり、重要なのはエネルギーなのです」と、トゥルヒーヨ氏。「質量が小さければ小さいほど、振動となるエネルギーは小さくなります」。

より強固な経済を構築

Nueva Calle 13のインターチェンジがその姿を現しつつある。このプロジェクトは2,000名を超える雇用を創出する見込みだ
Nueva Calle 13のインターチェンジがその姿を現しつつある。このプロジェクトは2,000名を超える雇用を創出する見込みだ 提供: IDU

交通インフラに対するConconcretoのアプローチは、ボゴタのNueva Calle 13プロジェクトなど、Desarrollo Urbano-IDUプロジェクトにも如実に表れている。6億300万米ドルを投じてボゴタの幹線道路13号線を再開発するこのプロジェクトは、地元政府により5セクションへと分割されており、Conconcretoはそのうち2つを建設中で、21.4kmにわたる道路を公共交通の回廊へと変貌させる。2026年末から2027年初頭の完成を予定しているこの道路は、ゼロエミッションの公共バス専用車線を含む10車線となる予定だ。このプロジェクトには、約26ヘクタールの公共スペース、9.3ヘクタールの緑地、1,819本の新しい樹木、道路の両側に設けられた自転車道も含まれる。このプロジェクトにより、同社はオートデスクの2024 Design & Make AwardsでBest Infrastructure Projectを受賞した。

Conconcretoはこれらの戦略を取り入れたプロジェクトでコンクリートと鉄鋼を削減し、Calle 13のカーボンフットプリントから年間24.671トンを超えるCO2を削減できると見積もっている。これは同社が24.746エーカー以上の森林を植林した場合に吸収される炭素量と同じだ。

コロンビアが必要とする経済的利益を生み出すには、Calle 13のようなプロジェクトが環境面だけでなく社会面でも責任のあるものでなければならないと、トゥルヒーヨ氏は話す。同プロジェクトは熟練労働者と非熟練労働者向けに2,000名以上の雇用を創出する見込みだ。政府の規定では、非熟練労働者がプロジェクトの労働力の30%を占めなければならない。

「コロンビアが貧困と不平等を抱える開発途上国であることは周知の事実です。これは政府が非熟練労働者に機会を創出する一手法なのです」と、トゥルヒーヨ氏。非熟練労働者を雇用し、Calle 13のようなプロジェクトを建設するための技術スキルを彼らに提供することは経済を活性化させるひとつの手段だと付け加えた。「知識ゼロの状態から6カ月、12カ月、18カ月と働いていけば、新たなスキルを身につけ、退職するまでに40%、50%高い収入を望む機会を与えられます」。

人工知能は設計やエンジニアリングの業務を急速に変化させているが、この新しいテクノロジーをよそに、建設業の仕事の多くは安定しており、確実である。「私は非熟練労働者がAIに取って代わられるとは考えていません」トゥルヒーヨ氏はこう話す。「資材を運んだり、現場で設置したりする作業員はまだ必要なのです」。

循環型の輸送インフラソリューション

Nueva Calle 13は緑地、ゼロエミッションバス専用レーン、1,800本以上の新しい樹木を擁する予定だ。サーキュラリティを念頭に置いた設計はConconcretoのサステナビリティ目標達成にも役立っている
Nueva Calle 13は緑地、ゼロエミッションバス専用レーン、1,800本以上の新しい樹木を擁する予定だ。サーキュラリティを念頭に置いた設計はConconcretoのサステナビリティ目標達成にも役立っている 提供: IDU

2023年だけでも、ConconcretoをゼネコンとするIDUのプロジェクトは、コロンビア人の通勤時間を33%短縮し、3,300人の雇用を創出し、323トンのCO2を削減している。同社はまた、建設廃棄物の26%を再利用し、リサイクルしている。この数字は、Conconcretoが循環型建築の概念を取り入れるにつれて確実に増えていくことだろう。

「今年は、サステナビリティの概念を超えて、サーキュラリティと、それがこの業界においてどう機能するのかを理解することが課題でした」トゥルヒーヨ氏はこう説明する。「私たちがサーキュラリティとして理解している4つの主要な要素は、未使用の原材料への依存を減らすことを目的として、地球に対してより責任を持つための意思決定を形成します。それは、より少ない消費、より長期の消費、よりクリーンな消費、そして再消費です。これは、CO2排出量の削減、サーキュラリティの向上、生物多様性の保護に貢献すると同時に、ビジネスの効率化にもつながります」。

「ボゴタは建設中のインフラの資材不足に直面しています。そのため、サーキュラリティの構築が唯一の方法となり始めています。より良い方法でも、より安い方法でも、よりコンプライアンスに則った方法でもありません。唯一の方法なのです」と、トゥルヒーヨ氏。「必要とする機械的特性を満たす道路用充填材を探そうにも、ボゴタでは未使用材料を見つけることはできません。そのため、他の都市や遠く離れた地域に行かなければならず、高額になります。代わりに、既存の舗装や既存の歩道のコンクリート、周囲の建物のコンクリートなど、すでにプロジェクトで利用可能な材料の使用に着手する必要があります。これらの材料をすべて集め、粉砕し、充填材として使用するのです」。

コロンビアをはじめ世界各地の設計者は、構造物の建設を検討する際には施工者と同様に、その終わりを考慮することでサーキュラリティへの対応を急ぐ必要がある。「これまで1〜2世紀にわたり、人類は建物が永遠にそこにあるものだと考えて建設してきました。でもそうではないのです」と、トゥルヒーヨ氏。「建物はいずれ取り壊さなければなりません。ですから、これらすべての資材をどのように再利用するか、できるだけ早い段階から考えておく必要があります」。

より良い情報、より良いインフラ

Conconcretoはボゴタの密集した都市環境への新インフラ組み込みにBIMを活用している
Conconcretoはボゴタの密集した都市環境への新インフラ組み込みにBIMを活用している 提供: Conconcreto

Conconcretoは、より循環型の新しい設計施工手法に軸足を移しながら、その目標を達成するべくデジタル技術のさらなる活用をはかっている。Autodesk Construction CloudBIM Collaborate ProCivil 3DNavisworksRevitといったソフトウェアもそのひとつで、これらはすべてNueva Calle 13のようなプロジェクトに欠かせないものとなっている。

トゥルヒーヨ氏によると、ビルディング インフォメーション モデリング (BIM) は特に重要だという。ボゴタのような人口密集都市では、下水道、給水本管、送電線、通信ネットワークなど、市民に重要なサービスを提供する多数の地下インフラを管理しながら道路や橋の建設を行う必要がある。着工前にBIMでプロジェクトを視覚化し、影響を受けるかもしれないステークホルダーと容易に計画を共有することで、エンジニアと施工者がプロジェクトに不要な時間、コスト、ムダを付与する可能性のある干渉を回避するのに役立つ。

「BIMの手法を使って構想・実行されたプロジェクトは、BIMを用いないプロジェクトに比べて遅延がはるかに少なくなっています」と、トゥルヒーヨ氏。IDUのデータによると、BIMを使用したプロジェクトの遅延はわずか1〜5%だが、BIMなしのプロジェクトの遅延は25%に上る、というする。「これは大きな違いです」。

BIMはプロジェクトの効率を向上させるだけでなく、透明性も高める。これは税金が投入される公共プロジェクトにとって特に重要だ。「コロンビアでは、こういったプロジェクトは管理機関や一般の人々によって常に監視の対象になっています」と、トゥルヒーヨ氏。「BIMは、すべてのステークホルダーにとってプロジェクトの透明性を高める非常に優れた方法です。プロジェクトのロケーションは? どこに資金が使用されている? ゼネコンの進捗状況は? BIMを使うことで、そのようなプロジェクトの状況を伝えることができます。より多くの人々がこのプロジェクトに参加することになり、結果として透明性も高まるのです」。

IDUによると、BIMの導入は堅調で、ボゴタの新規インフラプロジェクトの92%がBIMによってプロジェクトのプロセスとパフォーマンスが最適化されている。とはいえ、パートナー施工会社のデジタル トランスフォーメーション過程のサポートには、課題も伴う。「BIMがソフトウェアやデータベースを超えるものであることを理解することが、企業内外で重要な課題となっています」IDU都市開発ディレクター、ホセ・ハビエル・スアレス氏はこう話す。「変化への抵抗は、従来のプロジェクト管理方法の難しさを理解していることの裏返しでもあります。このためIDUでは、BIM導入のトレーニングプロセスやその管理を可能にするツールの開発に取り組んでいます」。

持続可能性の観点において、BIMの最も重要な副産物はデータだ。「サステナビリティとサーキュラリティの第一歩は測定することです。それが改善度を把握する唯一の方法だからです」と、トゥルヒーヨ氏。Conconcretoは過去のプロジェクトのBIMデータを集約し、コンクリート、鉄鋼、その他の材料の節約量を測定するベースラインを確立できると続ける。「BIMがなければ、現状と性能の測定はほとんど不可能になってしまうでしょう」。

BIMは規模が大きくなればさらに大きなインパクトをもたらすことができるとトゥルヒーヨ氏は語り、建設業界で生成されるデータの実に80%が利用されないままになっていると指摘する。「小売、金融、医療業界について考えてみると、これらの業界ではますます多くのデータを活用し、ますます多くの分析を行っています。我々はまだそこに到達できていません」と、トゥルヒーヨ氏。「業界として、より良い決断を下すために分析できる構造化データがまだ不足しているのです」。

「BIMはイネーブラーであり、AIはBIMを次のレベルに押し上げるでしょう」

トマス・トゥルヒーヨ氏―Conconcreto社 BIM統合部門ディレクター

最終的には、AIがデータ収集と分析を自動化することでその一助となるだろう。「BIMはイネーブラーであり、AIはBIMを次のレベルに押し上げるでしょう」トゥルヒーヨ氏はこう話す。その一方で、AIはデザイナーやエンジニアに対して、廃棄物や二酸化炭素排出に関する大きな課題への斬新な解決策を考案する余力を提供し、サステナビリティとサーキュラリティを高めることができる。「現在の私たちのAIに対する取り組み方はこうです:会議の録音、メモ取り、Eメールで時間をムダにしない。そのような『事務作業』はAIに任せて、プロジェクトについて考える時間を増やし、設計や施工性を最適化する方法を考えます」と、トゥルヒーヨ氏。「AIが普段考える時間のないテーマについて考える時間を与えてくれるので、私たちはそれらについてより批評的に考えることができるのです」。

コロンビアは、デジタルトランスフォーメーションと人工知能に関する国策を通じてスマートシティモデルの導入を進めている。スアレス氏によれば、AIの可能性をフルに活用するのはまだ先だが、IDUはすでにBIMと統合したビッグデータと人工知能を使用した生産性の向上に取り組んでいる。

「中心的な課題は設計と建設プロセスの効率化と自動化です」と、スアレス氏。「反復的なタスクに対処し、生成AIを統合し、さらには潜在的なリスク管理など予測可能性を分析することで、時間とコストの最適化に必要な相乗効果の達成に近づいてきました」。

コロンビアで、そして世界中で、交通インフラの建設にテクノロジーを活用することには期待が寄せられている。「デジタルトランスフォーメーションはそれ自体がゴールではありません。これは、よりサステナブルで、効率的で、生産的な建設分野につながる道なのです」と、トゥルヒーヨ氏。「医療分野、あるいは金融システムについて考えてみてください。こういった他業界はどうやって繁栄してきたのでしょうか? 周りを見渡してみれば、それがテクノロジーのおかげだと分かるでしょう。私たちはテクノロジーを信じ、その新しい使用方法を見つけてゆく必要があるのです」。

Matt Alderton

Matt Alderton について

マット・オールダートンは、シカゴを拠点に活動するフリーライターで、ビジネス、デザイン、食、旅行、テクノロジー分野を専門としています。ノースウェスタン大学メディル・ジャーナリズムスクールの卒業生であり、これまでにビーニーベイビーズから巨大橋、ロボット、チキンサンドイッチに至るまで、さまざまなテーマを取り上げてきました。彼への連絡は公式ウェブサイト MattAlderton.com まで。

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