英国の展示会がネットゼロ建築と業界の進むべき道を示す

英国王立建築家協会による展示は、修復、リサイクル、再利用がいかにネットゼロ建築の実現に役立つかを示しています。

Matt Alderton

2026年7月21日

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  • ネットゼロ建築は、建築資材を再利用またはリサイクルするサーキュラーエコノミーの原則を活用し、材料の使用量と埋立用地を削減することでサステナビリティを高める。

  • ロンドンのバタシー発電所など、先進技術を駆使したアダプティブリユースプロジェクトはネットゼロ建築の可能性を示している。

  • ネットゼロのマインドセットを浸透させるには、建築業界全体のコミットメントと、より良い実践を義務化しインセンティブを与える立法措置が必要だ。

プラスチックは厄介者だ。ジョージア大学の研究者陣によると、人類は1950年代以降、80億トンを超えるプラスチックを生産した。同大学の2017年の調査では、過去60年間にリサイクルされたプラスチックはわずか9%で、79%は埋立地や自然環境に埋もれてしまっていると報告している。このような傾向が続けば、2050年までにおよそ120億トンのプラスチックごみが埋立地や環境中に存在することになる。

地球を汚染と気候変動から救うには、ボトルや梱包物、バッグだけでなく、建造物のリサイクルにも今こそ真剣に取り組む時だと、英国王立英国建築家協会(RIBA)展覧会キュレーター、ピート・コラード氏は話す。

「他の多くの業界同様、建築、エンジニアリング、建設のAECO業界も直線的な道をたどってきました。材料を消費し、製品を作り、そしてその製品を捨てて新しいものを買う。それはサステナブルではありません」と、コラード氏は話す。彼が企画した展示会『Long Life, Low Energy:Designing for a Circular Economy』は、2022年11月にRIBAのロンドン本部で開催された。オートデスクがRIBAとコラボレーションし、スポンサーを務めるこの展示会は、2023年4月1日まで開催され、サーキュラーエコノミーの原則が、よりサステナブルなネットゼロ建築の創造にいかに役立つかを示した。

「土地には価値があるため、既存の建物を壊して新しい建物を建てることで大きな金銭的利益が得られるケースが増えています」と、コラード氏。「しかし私たちは、まず再利用することを出発点としてスタートするべきだと提案しています。新しいものを作ることは可能ですが、既存の建物やそこに含まれる部品や材料を使用する方がずっと望ましい。そうすることで、バージン原料を使用せず、埋め立てを避けることができます。建物を解体すると、とんでもない量の廃棄物が生じるのです」。

サーキュラーエコノミーの原則を採用することは、単にサステナブルなだけでなく、戦略的な意味もある。国連によれば、世界人口は2022年11月に80億人に達し、2050年には100億人近くに達すると予想されている。この増加により、世界の建設業界は毎日平均13,000棟の新しい建造物を建設しなければならなくなる。しかし、サプライチェーンの中断や労働力不足といった課題に直面する中、業界がこの需要にどう対応していくのかは不透明な状況だ。

新築だけに頼っていては、対応は不可能かもしれない。「サーキュラー」なデザインと建設––修復、改修、改築、再利用––は、経済的にも環境的にも必須だ。

「周知の通り、現在気候変動に関する深刻な問題が起きています」と、コラード氏。「世界は前世代が残した負の遺産に気付きつつあります…その結果、私たち建設業界はどのような材料を使用し、どう設計するかについて、より深く考える必要があるのです」。

RIBAの展示会が示すとおり、まさにそれを実践する建築事務所は増えつつある。再利用をより実現可能なものにするテクノロジーソリューションを使用しながら、革新的なプロジェクトを通じて、サーキュラーエコノミーが建造環境にもたらす可能性を示す新たな遺産を築こうとしている。

不死鳥の如く蘇るPhoenix House

『Long Life, Low Energy』で紹介されているプロジェクトに、CSK Architectsが手がけた英国ウィンザーのPhoenix Houseがある。2024年に完成予定のこの建物は、かつて2名の英国首相の居宅であった18世紀に建てられた邸宅の跡地に建設される。かつての所有者の一人、フランシス・バリー卿は1872年にこの家を取得し、セント・レオナーズ・ヒルと名付けた。1920年代にバリー卿が亡くなると、バリーと険悪な関係にあり恨みを抱いていた息子がこの家を売ろうとしたが、買い手は見つからなかった。そこで彼は、ダイナマイトを仕掛けてこの邸宅を爆破してしまったのだ。それ以来、散らばった家の残骸がウィンザー城を見下ろす絵のように美しい丘の上に眠っていた。

現オーナーのアンドリュー・トライ氏は、古い建物の基礎を活用し、セント・レオナーズ・ヒルの残骸から回収された再生材料を使用して新しい建物を建ててほしいとCSKに依頼した。完成形となるのは、歴史的な石造りのポルチコ (元の邸宅のうち現存する唯一の部分) を取り入れたコの字型のデザインで、中庭のあるネットゼロハウスだ。

「元の邸宅から残された部分はDNAの断片のようなものです。そしてフランケンシュタインの物語のように奇妙な方法でそのDNAの断片を取り出し、それを用いて新しい家を再生しようとしているのです」CSKで研究開発ディレクターを務める建築家のマシュー・バーネット・ハウランド氏はこう話す。「この敷地には数百年にわたりいくつかの建物が建てられましたが、それらはダイナマイトで爆破されてしまいました。その断片を集め、それらを組み合わせて新しいものを構築する…かなり珍しいプロジェクトだと言えるでしょう」。

CSKはユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンのバートレット校建築学部と協力し、現場から石を発掘し、洗浄して番号を付け、3Dデジタルスキャンを行った。回収した材料の「デジタル採石場」を構築したのだ。建築家は設計ソフトウェアを使用することで、このデジタル目録から石を組み合わせ、まるでバーチャルでジェンガをするかのように、美観と構造的完全性をもたらす石の組み立て方法を決定することができる。チームはこのプロセスを利用して、プロトタイプを設計、製作した。ラフで有機的な石と、6面体のブロックにカットされた滑らかな石を混ぜ合わせた石造りの架構式の門だ。

「当社の石工によると、通常の再利用率は30%です」と、ハウランド氏。「つまり、1トンの石材があるとして、最終的な建物に使用できるのはその3分の1ということになります。しかし、こうしたより丁寧なプロセスを経たことで、その割合を50%まで引き上げることができました」。

「現代のテクノロジーがなければ、目の前に大きな石が転がっていても、それを動かすことも、どの石とどの石を組み合わせればいいかを想像することも不可能でしょう」ハウランド氏はこう続ける。「部品のデジタル目録があれば、従来の方法では実現不可能なオーダーメイドの部品を製作できます」。

ハウランド氏によれば、既存の材料を利用するよりも、ゼロから建てる方が「より簡単で、より早く、そしておそらく10%は安くなる」という。「ヴィンテージという側面、つまり記憶や歴史が重要だという人もいます」と、ハウランド氏。「また、資源と二酸化炭素の削減が重要だという人もいます。Phoenix Houseの場合、その両方を少しずつ兼ね備えているのです」。

ネットゼロのプロトタイプとしてのバタシー発電所

『Long Life, Low Energy』では、バタシー発電所の事例も紹介されている。ロンドンのテムズ川沿いにあるこの発電所は、1930年代に建設された石炭火力発電所で、1950年代に拡張され、1983年に廃止された。その後、いくつかの再開発計画の失敗を経て2022年に再オープンした。かつては薄汚れた廃墟と化していたが、現在は公共公園、高級オフィス、集合住宅、レストラン、ショップ、スポーツジム、おしゃれなホテルなどが入った大規模な複合施設となっている。

敷地面積4万9千坪に及ぶこのプロジェクトには、Apple、カルバン・クライン、ラルフ・ローレンの小売店など注目度の高いオフィステナントが入居している。建築家、歴史家、環境保護主義者は、バタシー発電所を取り壊すのではなく再構築するという決断に称賛を送っている。

WilkinsonEyreの建築家陣が率いたこのプロジェクトのビジョンは、この建物のオリジナル設計者である建築家ジャイルズ・ギルバート・スコット卿とJ・セオ・ハリデイが確立した建築の本質、様式、スケールを尊重しつつ、モダンな空間を作り上げることだった。その成果は、建物の至る所にはっきりと現れている。

象徴的な4本の白い煙突を見てみよう。これらは安全性に問題があったため、クルーが最新の注意を払って解体し、1930年代から1950年代当時の工法で、元の仕様に合わせて慎重に再構築した。現在は、南アトリウムの巨大なガラス天井を通して内部からそれらを眺めることができる。あるいは、革新的なガラス張りのエレベーター「リフト109」で頂上まで上り、ロンドンのスカイラインを一望することもできる。

また、元の建物の構造に使用されていた600万個のレンガは、その多くが風化したり傷んだりしていた。これらを修復するために、バタシー発電所開発会社 (BPSDC) は、当時の発電所のレンガ積みを手がけた2社のレンガメーカーを探し出し、古いレンガにマッチする手抜整形のレンガを175万個発注した。

もうひとつの見どころは、タービンホールAとタービンホールBだ。タービンホールAは完全修復されてアールデコ式の当時の輝きを取り戻し、当時使われていたガントリークレーンや、かつてタービン機械設置されていた場所を示す痕跡が、床にレンガを敷き詰めて再現されている。また、タービンホールBは、古い制御室のダイヤルやスイッチが装飾として活用され、1950年代をテーマにしたバー「Control Room B」へ生まれ変わっている。

「発電所内に残る建物の基礎構造を可能な限り再利用しました」WilkinsonEyreプロジェクトディレクター、セバスチャン・リカール氏はこう話す。「新しい材料が必要な場合は英国内で調達し、カーボンフットプリント削減に努めました。多くのケースで、建物の歴史を物語る装飾や奇抜さを残すために、必要な構造で補強を施しつつ、基礎構造は当時の状態のままに保ちました」。

プロジェクトに含まれるたくさんの要素を首尾良く実行するため、チームは既存の構造物の広範な3D点群調査を実施した。そして、CADソフトウェアとAutodesk Revitを使用して2Dと3Dのモデルを作成し、そのモデルの上に新しい建設要素を重ね合わせた。

「テクノロジーには、建設に携わるすべての関係者が同時に情報を受け取り、直列ではなく並列で業務に取り組めるという利点があります」と、リカード氏。「BIM (ビルディング インフォメーション モデリング) は、設計段階での情報の調整を可能にし、異なるシナリオの影響を評価しながら、開発プロセスでのサステナビリティ戦略の有意義な検証を可能にする革新的な手法です」。

BPSDCのサイモン・マーフィーCEOも、2019年のコンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーのインタビューでこの複雑なプロジェクトにとってBIMが非常に重要であると述べている。BIMは数百名の建築家やエンジニアと80社以上の施工会社、そして最大3,000名に上る現場作業員の連携を支えた。施工会社、建築家、エンジニアは建設の各段階において、プロジェクト全体の3Dデジタルモデルを共有しながら作業を進めた。

発想の大きな転換

コラード氏は、Phoenix Houseやバタシー発電所、そして同様のプロジェクトが、新世代の建築家たちにこれまでとは違った建築をするインスピレーションを与えるだろうと期待している––まずは材料から、だ。

「サーキュラーエコノミーという考え方は新しいものではありません。しかし、現代建築に使われている材料は、解体して再利用するというプロセスには適していません」と、コラード氏。「面白いことに、建物は古ければ古いほどリサイクル率や再利用率が高まります。たとえばローマには、ローマ帝国時代の建物が多数現存しています。これらの建物は石造で、石は長持ちするためです…古代ヨーロッパの都市では、解体後これらの石塊を新しい建物に再利用するのが一般的でした」。

ここで、アジアのデザインについて考えてみよう。「極東の建築は木造で、多くの場合、接合や固定具をまったく使わずに組み立てられています」と、コラード氏。「そこには、取り壊して建て直すことを前提に建物が設計される文化があります。建物はまったく同じに見えますが、材料だけが少しだけ新しくなっているのです」。

サーキュラーエコノミーの原則を実践するには、こうした古代の事例を参考にしながら、未来を見据えた建築アプローチが必要だ。「建物は寿命が来たら取り壊すのではなく丁寧に解体するという考えで設計施工する必要があります」コラード氏はこう話し、建築家やエンジニアは継承者による再利用が簡単になるようRevitなどのツールを使用して材料や手法を文書化することができると付け加える。「そのためには、材料の耐用年数や次に建物を使用するかもしれない誰かのことを考慮するといったかなり大きな発想の転換が必要となります」。

環境規制当局は、建物がエネルギーの使用を通じて排出する二酸化炭素や、建物の材料に含まれる二酸化炭素を管理するための法律や政策を策定することで、この取り組みを支援できる。

「以前として大きな課題となるのは、改築と再利用は同面積の新築よりも一般的に高コストになるということです。そのため、エンボディド カーボンに価格をつけ、解体工事に事実上のペナルティを課さない限り、追加コストを顧客に納得してもらわざるを得ません」と、リカード氏。「なぜ設計寿命30年で建設しなくてはならないのでしょう? 30年後に改修を行うことで60年あるいは90年使える建物を実現できるのに…。これこそ、当社の企業クライアントの多くがその資産評価において採用しているアプローチなのです」。

その一方で、テクノロジーは建築家に知識、精度、コラボレーションを提供し、無駄の多いかつての建築手法と未来のより効率的な建築のギャップを埋めていくことができる。

「特に再利用プロジェクトでは、他者から譲り受けた建物や材料を扱うわけですから、何を扱っているのかについて知る必要があります。また、その情報をプロジェクトに携わる他のすべての人たちと共有できなければなりません」と、コラード氏は話す。「テクノロジーはそのために不可欠な要素です。過去のものを新しいものへと変換する役割を果たしているのです」。

Matt Alderton

Matt Alderton について

マット・アルダートンはビジネスやデザイン、フード、トラベル、テクノロジーを得意とするシカゴ在住のフリーライター。ノースウェスタン大学の Medill School of Journalism を卒業した彼の過去のテーマは、ビーニーベイビーズやメガブリッジからロボット、チキンサンドイッチまで多岐に渡っています。Web サイト (MattAlderton.com) からコンタクト可能。

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