モーション ブラー

モーション ブラー:映画・テレビ・ゲームをもっとリアルに

アニメーションの VFX コンテンツは、静止イメージで構成されています。モーション ブラーは、最も効果的にリアリズムを高めることができるエフェクトの 1 つです。

モーション ブラーとは

「モーション ブラー」とは、空間中を高速で移動するオブジェクトを人間の目で完全に捉えきれない場合に生じる視覚的な自然現象です。フィルム カメラでは、シャッターが開いている間にオブジェクトの位置が移動すると、単一の静止イメージまたは動画の 1 フレームがブレて見えます。これがモーション ブラーです。

映画・テレビ・ゲームの CGI アニメーション(英語)や VFX(英語) コンテンツは、すべて静止イメージで構成されています。動きのあるオブジェクトが描かれる場合も、動きに関連する視覚的プロパティはこれらの静止イメージに含まれません。アニメーションのモーション ブラー エフェクトでは、実際の世界で見られる「ブレ」をコンテンツに適用することで、視覚的なリアルさを高めることができます。

ビデオ ゲームでは、モーション ブラーを追加することで、アニメーションのリアリズムを高めることができます。画像提供:Blind Visual Propaganda

アニメーション、VFX、ゲームにおけるモーション ブラー エフェクトとは

自然界では常に、さまざまなオブジェクトが動いています。しかし、映画・テレビ・ビデオ ゲームのアニメーションを構成するフレームは、すべて完全な静止イメージです。このフレームを時系列のシーケンスに沿って投影または再生すると、動いているものを見ているかのような目の錯覚が起きます。実際の世界では、オブジェクトが人間の視覚より速く動くことがあります(たとえば、指をパチンと鳴らして、その動きを見てください)。モーション ブラー エフェクトは、人間の脳が実際の物理現象を補正して捉える際の視覚的な特徴を鋭く捉えた表現です。

目やカメラは瞬間的なイメージを捉えますが、アニメーションの VFX はそういうわけではありません。完全に静止したシーンを作成するだけでモーション ブラーをかけない場合、動いているオブジェクトが実世界よりも不自然に鮮明に見えるため、視覚的な「違和感」が生じます。アニメーターや VFX アーティストは、この問題を解決し、よりリアルに見える CGI 環境をアニメーション シーン中に作成するために、ソフトウェアを使用してモーション エフェクトを作成および適用します。

ハードウェアの進化によって、VFX アーティストはシーン内のさまざまな要素に、最適な量のモーション ブラーを適用できるようになりました。画像提供:Leviathan

高度なモーション ブラー技術

旧式のハードウェア向けのゲーム・アニメーション・ビデオに適用された基本的なモーション ブラーは、グローバルに適用されていました。最も一般的だったのは、前のフレームの不透明度を徐々に下げていくと同時に、次の数フレームの不透明度を徐々に上げていくことで、シーン全体に一貫したモーション ブラーを適用する手法です。

 

その後、より進化したハードウェアでは、ピクセル単位またはオブジェクト単位でモーション ブラーを適用できるようになりました。システムはフレーム間の個々の視覚要素の違いを認識し、適切なモーション ブラーを自動的に適用します。多くの場合、オブジェクトを構成する個々のピクセル単位まで自動的に調整できるようになりました。

 

今後はさらに、AI のモーション ブラー アルゴリズムの開発によって、プロセス全体を自動化できるようになるでしょう。ゲームやビデオ映像用にさまざまな種類のモーション ブラーをデザイン・実装するプロセスは、より一層進化することが予想されます。

ポスト プロダクションにおけるモーション ブラーの特長

優れたモーション ブラー エフェクトを作成することで、実世界に似た視覚を再現し、ビデオ映像をよりリアルに表現することができるため、VFX デザイナーにとって非常に重要な機能です。モーション ブラー エフェクトには、次のようなメリットがあります。

実世界に近いリアルな表現

現在では、実世界を拡張する技術として、非常に多くの実写映画やテレビ映像にアニメーション VFX(英語) が使用されています。カラー グレーディングや環境エフェクトのみに使用されることもよくあります。高速で動く要素をカメラで撮影すると、自然にモーション ブラーが生じます。そのように、フレーム内のアニメーション要素にモーション エフェクトを適用することで、実際に動いているオブジェクトを見ているかのような目の錯覚が起きます。

コマ落ちを回避

人間の脳は自然に、日常生活でよく目にするモーション ブラー エフェクトを合成し、フィルタリングしています。動画コンテンツに、フレーム間の移行を滑らかにするためのモーション ブラーを適用せず、フレームが急にリセットされた場合、カクカクとして見えたりコマ落ちのように見えます。これは、映像の視聴者に無意識的な違和感を与えます。

エクスペリエンスの向上

モーション ブラーは、グラフィックスやアニメーションのあらゆるエフェクトと同様に、視聴者やプレイヤーの感情的な反応を引き出すために使用されます。フレーム内のシーンや環境、その他の要素や、ビジュアル ストーリーにおける動的な「キャラクター」の表現に適切に使用することで、視聴者のエクスペリエンスや投資価値を簡単に高めることができます。

焦点を当てる

映画・テレビ・ゲームでは、ストーリーを伝えるために、イメージの特定部分にユーザーの注意を引き付けることが必要、または効果的な場合があります。人間の目は、実世界でもアニメーションでも、視野の中で最もくっきりした部分に焦点を当てる傾向があります。そのため、VFX デザイナーやディレクターは、視聴者に最も注目してほしい部分以外のイメージ全体にモーション ブラーを適用することで、焦点を導くことができます。

モーション ブラー エフェクトを備えたオートデスク ソフトウェア

グローバル イルミネーション レンダリング ソフトウェア


ゲーム開発および設計ビジュアライゼーション向けの 3D モデリング、アニメーション、レンダリング ソフトウェア


モデリングやアニメーション制作の強力かつ包括的なツール コレクションをアーティストに提供しつつ、スタジオのレンダリング・シミュレーション機能を強化


モーション ブラーで非現実をリアルに表現

STEFAN LOPUSNY

モーション ブラーでフリッカーを軽減

オランダとギリシャに拠点を置く Fat Tony Studio は、建築業界向けのビジュアライゼーションを専門とするスタジオです。アート ディレクターの Stefan Lopusny 氏が制作した短編映画『In Circles』には、現代的で都会的なキッチンを楽しそうに踊り回る回転コマが登場します。同氏はエレメントのデザインや、シーンの作成・ライティング、仮想カメラやさまざまな回転コマの動きをアニメートしたほか、動くエレメントのエッジ周りのちらつきを軽減するためにモーション ブラー エフェクトを適用しました。

 


画像提供:Stefan Lopusny 氏

IMPORTANT LOOKING PIRATES

実写要素とアニメーションを融合

2012 年作のアドベンチャー映画『コン・ティキ』では、タイトルになっているノルウェーの木製いかだのコン・ティキ号に引き上げられるホオジロザメのショットが印象的です。ストックホルムの VFX プロバイダーである Important Looking Pirates は、このサメを一からアニメートしました。複数のテクスチャを組み合わせてリアルなスキンを表現し、フォトリアルなカラー エフェクトやシェーディング エフェクトをかけ、そして背景情報にモーション ブラーを適用しました。

 


画像提供:Important Looking Pirates

モーション ブラーの関連リソース

オートデスクの 3D レンダリング ツールである Autodesk Arnold でモーション ブラーをデザインおよび適用する方法を詳しく解説する完全ガイドです。

Autodesk 3ds Max のヘルプ ページで、シーンやオブジェクト、フレームにモーション ブラーを適用するためのいくつかの方法を紹介しています。

 

オートデスクの 3D レンダリング ツールである Autodesk Arnold でモーション ブラーをデザインおよび適用する方法を詳しく解説する完全ガイドです。

TimeTunnel は、Autodesk Research が提案するシステムです。空間データと時間データの変化に対するコントロールを組み合わせることで、VR におけるキャラクター モーションの編集が容易になります。

 

モーション ブラーに関するよくある質問(FAQ)

モーション ブラーとはどのような機能ですか?

モーション ブラーは、オブジェクトの動きが速すぎて人間の目では細部を捉えきれないときにブレて見える自然現象を再現する機能です。映画・テレビ・ゲームのアニメーション ビデオ コンテンツに、このエフェクトを適用できます。

モーション ブラーによって品質が損われることはありますか?

モーション ブラーはゲーム分野では長期にわたって物議を醸してきた歴史があり、無効化できるゲームソフトウェアでは、多くのゲーマーが完全に無効にしています。しかし、あらゆるテクノロジーがそうであるように、モーション ブラーも、誤用されたり正しく実装されなかった場合にのみ悪影響をもたらします。モーション ブラーで優れた成果を実現するには、リフレッシュ フレーム レート、レンダリングに利用するハードウェア、グローバルなブラーとオブジェクトベースのブラーのコントロールなど、さまざまな条件を慎重に調整する必要があります。制作会社やスタジオ、熟練したスキルをもつディレクターは、使用可能なレンダリング処理能力をどこに活用するのが最善かを判断する必要があります。

モーション ブラーで FPS は増加しますか?

モーション ブラーは 1 秒あたりのフレーム数(FPS)に関連しますが、直接的な影響はありません。映像やゲームプレイのフレーム レートにかかわらずモーション ブラー エフェクトを適用できます。フレーム レートを上げる必要はありません。一般的に、モーション ブラーを適用すると、フレーム レートの低いビデオをもう少しリアルに見せることができます。ただし、その指標は FPS が増加するほど一定ではなくなります。なぜなら、フレーム レートが非常に高くなると、動きがまったく見えなくなったり、イメージの視覚的な忠実度に悪影響を及ぼすことがあるからです。