アフリカの物語を世界の聴衆に届ける使命に取り組むKugali Media

漫画やゲーム、テレビから映画まで、Kugali Mediaはアフリカの人材を開発しアフリカの物語を世界の舞台に展開させています。


ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオと共同制作され高い評価を得たテレビシリーズ『イワジュ』はKugali Media初の大型アニメーションプロジェクトだ

[提供: Kugali Media]

ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオと共同制作され高い評価を得たテレビシリーズ『イワジュ』はKugali Media初の大型アニメーションプロジェクトだ

Matt Alderton

2026年5月18日

分: 読書時間
  • アフリカは、未だ語られていない物語の宝庫であり、未開発の資源に満ちている。

  • ロンドンを拠点とするKugali Mediaは、アフリカのストーリーを世界中の聴衆に届けることに注力するパン・アフリカ主義エンターテインメント企業だ。その作品には、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオと共同で最近制作したアフリカが舞台の近未来アニメシリーズ『イワジュ』などがある。

  • Kugali MediaのKugali Academyはアフリカのアニメーターやアーティストを育成し、アフリカ大陸発のアフリカのコンテンツやメディアが国際的な規模で爆発的に普及することを促進しようと後押ししている。

アフリカは資源が豊富だ。国連によれば、15億人 (世界人口の20%近く) を擁するアフリカは、世界の鉱物資源の約30%はいうまでもなく、天然ガスの8%、石油埋蔵量の12%、耕作可能地の65%、再生可能な淡水源の10%を有している。これらはすべて、地球で2番目に大きな大陸を構成する54か国の今後の繁栄を予感させるものだ。

しかし、アフリカの最も貴重な資源は、土地でも、鉱物でも、水でもないかもしれない。アフリカ生まれのVFX (視覚効果) アーティスト、ハミド・イブラヒム氏に言わせれば、それは「人」だ。

「ほとんどの人は、この大陸がどれほど多様であるのかを理解していません」ウガンダ出身で現在はロンドンで働くイブラヒム氏はこう話す。「例を挙げましょう。私の母国ウガンダはとても小さな国ですが、50を超える言語が話されています。非常に多くのーー本当に、本当に多くのーー文化があり、そのそれぞれの文化に独自の物語が存在しているのです」。

プロメテウスの物語といったギリシャ神話から、ヘンゼルとグレーテルのようなヨーロッパのおとぎ話、ポール・バニヤンの冒険などのアメリカ民話まで、西洋の物語は広く知られ、愛されている。一方、アフリカの物語は世界規模ではそのほとんどが知られていない。

「アフリカの物語というと、 多くの人が“奴隷制度”という非常に憂鬱な物語を思い浮かべるでしょう。しかし、現地を訪れれば、奴隷制度はアフリカの物語の全てではなく、ほんの一瞬のことに過ぎないということに気がつくでしょう」イブラヒム氏はこう続ける。「アフリカがどういう場所なのか考えてみてください。人類誕生の地であるにもかかわらず、その旅路やルーツについてはほとんど語られてきませんでした。私はそれを変えたいと思っています」。

その思いは強く、彼は2017年にアフリカのポッドキャスター、トルワラキン・オロウォフォイエク氏とオルフィカヨ・ジキ・アデオラ氏と手を組み、グローバルな舞台でアフリカのストーリーを伝えることを使命とするパンアフリカ主義エンターテインメント企業Kugali Mediaを設立した。それから10年も経たないうちに、このトリオは『イワジュ』のようなプロジェクトで成功を収めた。『イワジュ』は、近未来のナイジェリア・ラゴスを舞台にしたSFミニシリーズ・アニメだ。

ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオとタッグを組み、人気動画配信サービスDisney+向けに制作されたこの番組は批評家から高く評価された。2024年にシリーズ全6話が放映され、チルドレン・ファミリー・エミー賞では3部門にノミネート、さらにアニー賞、NAACPイメージ・アワードにもノミネートされた。『イワジュ』は、Kugaliがアフリカの過去、現在、未来のために綴る予定の膨大なアンソロジーの序幕だ。これらの物語が総合されれば、アフリカの労働力、アフリカ経済、そして何よりも、アフリカの経験を一変させることができるだろう。

 

「アフリカがどういう場所なのか考えてみてください。人類誕生の地であるにもかかわらず、その旅路やルーツについてはほとんど語られてきませんでした。私はそれを変えたいと思っています」

—ハミド・イブラヒム、Kugali Media

ムーブメントを築く

オルフィカヨ・ジキ・アデオラ氏、トルワラキン・オロウォフォイエク氏、ハミド・イブラヒム氏の3名はグローバルな舞台でアフリカの物語を伝えるべくKugali Mediaを設立した
オルフィカヨ・ジキ・アデオラ氏、トルワラキン・オロウォフォイエク氏、ハミド・イブラヒム氏の3名はグローバルな舞台でアフリカの物語を伝えるべくKugali Mediaを設立した [提供: Kugali Media]

Kugali Mediaは単なる会社に留まらない。これはムーブメントなのだと、イブラヒム氏は話す。彼は、Kugaliの大義に身を捧げることを決心した瞬間を今でも覚えているという。それは2018年のことだった。彼はイギリスのVFX会社MPCでリガーとして働き、ディズニーの『ライオン・キング』と『ダンボ』の2019年リメイクの3Dアニメーションに関わった。すでにオロウォフォイエク氏とアデオラ氏と共同設立していたとはいえ、当時のKugaliは趣味の延長に過ぎなかったが、突然、彼にある閃きが降りてきた。

「ラゴスから誕生したあるアニメーション・プロジェクトがとてもクールだと思いました。それで、何人かの同僚に見せてみたのです」と、イブラヒム氏。「たとえるなら、自分の子どもが素敵な絵を描いて、それを何の前置きもなく美術評論家に見せたら、酷評されてしまったような感じでした。私はなんだかモヤモヤしてしまって、『これは何か行動を起こさなければ』と決心したのです」。

「私は思いました。何十億もの人口を抱える大陸が、質の高い作品を生み出せないはずがないと」イブラヒム氏はこう続ける。「それが不可能だなんて、私は絶対に納得できない。これが、私の心に火をつけたのです」。

その炎は熱く燃え上がり、イブラヒム氏は仕事を辞めてKugaliに専念することを決意し、のちにCEOに就任した。資金はすぐに底をつき、数カ月を米と卵で凌がねばならなかった。それでも彼は粘った。

Kugaliの代表とクリエイティブ・ディレクターを務めるオロウォフォイエク氏とアデオラ氏は漫画を読んで育った。そのため同社は当初、アフリカのヒーローやストーリー展開を題材にしたコミックの出版に力を入れていた。

「マーベル・コミックに匹敵するような最高品質のコミックブックを低コストで製作することが可能でした」と、イブラヒム氏。彼は、精巧なデザイン・ソフトを使わなくても、漫画であれば紙と鉛筆に5ドルも出せばワールドクラスの作品が製作できると指摘する。「世界の舞台で戦えるような質の高いストーリーを伝えるという点で、私たちにとって非常に良い入口でした」。

ディズニー効果

漫画本は依然として魅力的なメディアだが、映画やテレビはKugaliの使命を大規模に達成するまたとない機会を提供してくれた。同社のハリウッドでのブレイクは、イブラヒム氏が2019年のBBCのインタビューで、アフリカ市場でディズニーに挑み、市場を支配する野心を公言したことがきっかけだった。このインタビューは急速に拡散され、ディズニーの重役にまで届き、その後その重役から面会を求められることとなった。

「彼らはただ話をするために私たちに接触したのです」と、イブラヒム氏。Kugaliはこの機会を利用して、いくつかのストーリーをディズニーに売り込んだ。ディズニーが共同製作を望むかもと期待してのことだ。ディズニーは全ての作品を気に入ったが、『イワジュ』が最も製作しやすいと判断した。当初は5分のエピソードを6本製作するようクガリにゴーサインを出したが、その後1本約20分のフルサイズのエピソードへの資金提供を決定した。「ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの社長クラーク・スペンサー氏が『やりましょう』と言ったのです。これがウォルト・ディズニー・アニメーションにとって、初めて制作するフルサイズのシリーズとなりました」。

いちかばちかの瞬間に、Kugaliチームはやってみると決意した。「チームのみんなはとても勇敢でした」と、イブラヒム氏。「質の高いものを作る自信はありました。ただ、自分たちの可能性を示すチャンスが必要だったのです」。

ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオとの共同制作『イワジュ』の成功に続き、Kugaliは現在、コミック『Lake of Tears (涙の湖) 』のアニメ版のような新IPを売り込み中だ
ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオとの共同制作『イワジュ』の成功に続き、Kugaliは現在、コミック『Lake of Tears (涙の湖) 』のアニメ版のような新IPを売り込み中だ [提供: Kugali Media]

その意味で、Kugaliはアフリカ全体の代理人のように感じていた。「一般的に、人々はアフリカについて非常に控えめな見方をしています」と、イブラヒム氏。「どういうことかというと、次の大きなムーブメントがどこからやって来るのかを考えるとき、アフリカを候補にあげる人はいないということです」。

ディズニーのようなメインストリームのパートナーとの大予算プロジェクトは世間の認識を変えるチャンスだと、イブラヒム氏は話す。「『イワジュ』は私のモチベーションを激変させました。『イワジュ』以前は熱意がすべてでした。自分たちの能力を示したかったのです。でも『イワジュ』以降は、作品への反響にかなり心を動かされました」。

特に思い出されるのはアフリカ人のある友人の海外に住む姪の話だと、イブラヒム氏。『イワジュ』を観る前は、西洋の国からアフリカを訪ねるたびにいつおうちに帰るのと泣きながら文句を言っていた子が、『イワジュ』を見た後は、アフリカに行きたいと母親に懇願するようになったという。

「これは重要なことです」と、イブラヒム氏。「この物語が多くの大人、アフリカ人ディアスポラにとって深甚な意味を持つことは理解していました。しかし、子供たちにとってもあれほど重要で記念碑的なものになるとは思ってもみませんでした。これこそ、私のモチベーションを“見せつけてやる”から“ここには世界の多くの人々に大きな影響を与える重要な取り組みがたくさんある”へと変化させた要因です」。

大規模なスキルアップ

ベルギー・アントワープで開催されたFTI SuperNova Festival 2024にて、Kugali Mediaとアフリカン・ストーリーテリングのビジョンを語るハミド・イブラヒム
ベルギー・アントワープで開催されたFTI SuperNova Festival 2024にて、Kugali Mediaとアフリカン・ストーリーテリングのビジョンを語るハミド・イブラヒム [提供: Kugali Media and FTI SuperNova]

『イワジュ』はほんの始まりに過ぎない。本シリーズの成功を追い風に、Kugaliは出版、映画、テレビ、さらにはゲームに至る新プロジェクトでアフリカン・ストーリーテリングの影響力を拡大し続けるつもりだ。だが、ひとつだけ問題がある。人材だ。むしろ人材が足りないのだ。

「アフリカのエンターテインメント業界は非常に歴史が浅く、そのため複数どころか、ひとつのプロジェクトを完成させることも非常に困難です。それができる企業は限られています」イブラヒム氏はこう話す。クリエイティブ・リーダーシップに重点を置くアーティストとして、彼はアフリカの物語に対する需要が高まる一方で、それを生み出すアフリカ人クリエイターの供給が追いつかないという状況を心配している。「アフリカでの主要なプロジェクトには毎回同じアーティストが参加していることが分かりました。しかし、今や複数のプロジェクトが登場しつつあります。同じアーティストが毎回起用されているということは、参加できないアーティストを確保しようとしているということです。この業界はまだまだ警戒心も強く、ひとつの大きなミスや間違いが何年もの遅れにつながることもあります。私はそれを心配しています。質の高い新人アーティストを育てる必要があります。なぜなら、今の時点では、アフリカで同時に質の高い長編映画を2本以上製作できるとは思えないからです」。

人材育成の手段としては、ディズニーのような企業とのコラボレーションがカギとなる。「私たちが必要とする品質を生み出す唯一の方法は、高いレベルの仕事ができるパートナーと提携し、その一方で自ら人材を育成することです」イブラヒムはこう続ける。Kugaliの人材供給モデルはアフリカ現地に拠点をおくフリーランスの契約者に大きく依存しており、その数は現在少なくとも15か国に及んでいる。「だからこそ、『イワジュ』を“ディズニー大学”のように考えていました。私たちが抱えるアーティストは皆、大幅に成長しました」。

それでも、パートナーだけに重責を追わせることはできない。Kugaliは自らの役割も果たさなければならないことを認識しており、その一環としてKugali Academyを立ち上げた。このアカデミーは同社が後援する人材育成のパイプラインで、アーティストの卵たちに無料で質の高い教育とトレーニングを提供している。アニメーションや視覚効果に必要なハードウェアやソフトウェアを持たない者も多いため、参加者はモバイル通信やバーチャルデスクトップサービスを通じてリモートで技術にアクセスすることができる。1年間のコースを修了すると社内の人材ネットワークに参加でき、Kugaliはこのネットワークを通じて将来のプロジェクトに携わる契約者を選定する。

これは、Kugaliそしてアフリカ全体に貢献できる人材を育てる持続可能な方法だ。「このアイデアは、ほとんどトリクルダウンのメンターシップと言えるものです」と、イブラヒム氏。「優れたアーティストがもう少しで一人前になりそうなアーティストを指導し、高いレベルまで持っていくのです。現在、2名の優れたアーティストが、多数のアーティストを指導しています。そして、これはどんどん連鎖していきます」。

イブラヒム氏によると、当面の目標は、2年以内にAutodesk Mayaと関連する需要の高い技術のスキルを持ち、業界の雇用主に雇われるような質の高いアーティストを500人育成することだという。一部のプロジェクトでオフショアの労働力が必要とされるとしても、これだけいればプロジェクトに参加するクリエイティブ・リーダーのチームを構成するには十分だろう。彼らの存在は、オーセンティックで信頼性の高い正統なアフリカン・ストーリーの創世となるかもしれない。

アフリカのメディア:離陸準備は整った

アフリカにとって良いことは、観客にとっても良いことだと、イブラヒム氏。人々は非常にテンプレート化されて型にはまった方法で語られる特定の種類の物語に慣れすぎてしまっていると彼は話す。アフリカの物語や作家は目新しく、斬新な構成や視点をもたらすことができる。

「アフリカにおけるこの業界はまだまだ成熟していないため、活躍の余地は十分にあります」と、イブラヒム氏。「ヨーロッパやハリウッドの作品は、ある種のチェックリストに従っています。まるですべてが機械を経由して出てきているようなものです。アフリカの市場にはそのような“機械”が存在していないため、さまざまなやり方を模索する余地があります。これはとてもエキサイティングなことです」。

『イワジュ』のようなプロジェクトのおかげで、それはすでに起こりつつある。しかし、アフリカのアーティストやクリエイターによって命を吹き込まれたアフリカの物語をひとたま聴衆が体験すれば、アフリカのメディアとエンターテインメント業界は超音速ジェット機のように急上昇するだろうと、イブラヒム氏は予測する。「アフリカが映画業界に大きな影響を与える準備は整っていると強く信じています」と、イブラヒム氏。「自らの独自性を追求し、スペシャルな物語を解き放つことができれば、私たちは絶対に爆発的に成長することでしょう」。

Matt Alderton

Matt Alderton について

マット・オールダートンは、シカゴを拠点に活動するフリーライターで、ビジネス、デザイン、食、旅行、テクノロジー分野を専門としています。ノースウェスタン大学メディル・ジャーナリズムスクールの卒業生であり、これまでにビーニーベイビーズから巨大橋、ロボット、チキンサンドイッチに至るまで、さまざまなテーマを取り上げてきました。彼への連絡は公式ウェブサイト MattAlderton.com まで。

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