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「全社の 3D 設計化を推進しており、その一環として Autodesk Fusion を用いて新入社員に 3D CAD 教育を実施しています。」
—富士フイルムエンジニアリング株式会社 エンジニアリング事業部 マネージャー 武地 慶雄氏
長年のフイルム生産設備の開発・設計で培った高度なエンジニアリング技術をベースに、お客様視点で設計・保全ソリューションを提供する富士フイルムエンジニアリング株式会社。高品質の富士フイルム製品を安定して生産する為、同社は、高精度且つ高耐久な設備の開発・設計・立上げからメンテナンスまでを一貫して行い、生産プロセスの全体構想力、設備の最適設計力、および長期安定稼動を実現する保全技術力を向上させてきた。同社エンジニアリング事業部では、設計業務の効率化と精度向上を目的に、 2020 年頃より 3D 設計ツール「 Autodesk Fusion 」の導入を進めており、現在、その技術とノウハウを広く社内に展開するための活動のひとつとして、新入社員を対象とした社内研修を実施している。
お客様視点のソリューションを提供するために Autodesk Fusion を活用
富士フイルムエンジニアリング株式会社はエンジニアリング技術に加えて、お客様とのコミュニケーションも大切にし、常にお客様の立場に立って最適ソリューションを提供している。同社のエンジニアリング事業部でマネージャーを務める武地慶雄氏は、事業部としての取り組みを次のように語る。
「大切にしているのは、提供するソリューションの価値向上です。QCD (Quality: 品質、Cost: 価格、Delivery: 納期)の観点で、お客様の立場に立って評価します。」
同事業部の藤田充紀課長は、エンジニアリング会社としての姿勢について話す。
「当社では、お客様からの要求をそのまま実行するのではなく、積極的に提案しながら業務を進める為、コミュニケーションが非常に重要になります。提案の際に、 Autodesk Fusion を用いて設計した 3D CAD モデルを見せて説明すると、相手に設計内容が伝わりやすく、業務が円滑に進みます。」
部品の干渉確認などにかかる時間が半日以上短縮され、大幅な時間削減を実現
同事業部で Autodesk Fusion を活用した設計に携わっている常軒軒(じょうけんけん)氏は、 Autodesk Fusion による 3D 設計の効果について、「 2D 図面で設計していた当時は、部品の干渉確認に手間と時間が掛かっていましたが、 3D CAD の干渉確認機能を使うと、一日以上掛かっていた干渉確認の時間が、半日以下に短縮され、とても楽になりました。」と説明する。
また、学生時代から 3D CAD ツールを使っている松村風花氏も「設計した設備の重心を簡単に計算できるので、設置時の荷吊り位置の確認や、地震対策の検討を、設計の段階で実施できるようになりました。また、研究所のお客様から依頼された業務においては、『机の下に置けるくらいの大きさで設計してほしい』といった細かな要望もあるが、設計の段階で完成のイメージを共有できるので重宝しています。更に Autodesk Fusion は、利用者以外でも 3D 設計モデルを web で簡単に閲覧できる機能もあるので、離れた場所のお客様ともコミュニケーションをとりやすい。」と評価する。
社内の有志が集まり、 3D 設計推進活動に発展
松村氏が所属する事業所では以前から Autodesk Fusion を使いこなしている設計者がおり、グループ内の有志が集まり、 3D CAD 勉強会が開かれていた。その当時について武地氏は、「実験装置などの設計業務を進める中で、 3D CAD 活用のメリットを感じていたメンバーが、グループ内のスキルアップを目的に勉強会を始めました。その活動が会社に認知されて、勉強会の中心メンバーが講師を務める新入社員研修に発展した。」と振り返る。
更に、社内での 3D CAD 活用が浸透しはじめた 2023 年には、 Autodesk Fusion に関する疑問点を気軽に質問できる相談会を開催し、 40 名以上が参加した。また、社員同士が 3D 設計の事例を紹介しあう場を月に1回の頻度で設けて、スキルアップを図る取組みを開始するなど、 3D 設計推進活動は順調に進んでいる。
今後は Autodesk Fusion の CAE 、 CAM 機能も活用し、活用領域を拡げる
3D 設計推進の効果について武地氏は、「最近では、我々の 3D 設計の取組みが認知され、お客様や社内関係者から『報告資料を作成したいので、 3D モデル を送ってほしい』と言われる機会が増えました。目標は、3 年後までに 8 割以上の社員が Autodesk Fusion を使えるようになることです。」と話す。
Autodesk Fusion を積極的に活用する常氏も「 Autodesk Fusion には、 CAD だけではなく CAM 機能も付属されており、それを使いこなせるようになれば、設計と加工をシームレスで進められるようになり、効率的に業務を進められる。Autodesk Fusion は、公式 YouTube やマニュアルサイトなどの教育系のコンテンツ も充実しており、比較的簡単に操作を覚えることができるので、更にいろいろな機能を習得していきたい。」と話す。
また、今後の Autodesk Fusion 活用について藤田氏は「 CAD に加えて、社外に出せないコア設備の加工効率化に CAM を、強度不足や共振などによる設計後戻りの防止に CAE を活用していきたいと考えています」と期待を寄せる。