イシュマエル・モンテ=デ=オカ氏 (アドリアーナの兄弟): あの週、彼女が私に訴えていたのを、よく覚えています。その前の週から、様子がおかしいことに気づいていました。「気分が悪い、ずっと頭痛がする、吐きそうだ」と言っていました。
マーティン・カルカーニョ氏 (Granta 生物医学デザイン統括): 執刀医が埋め込んだ移植組織は 2 日後に感染を起こしたので、除去する必要がありました。
ペドロ・パブロ=デ=フアンベルス氏 (メキシコシティ・エスパニョール病院神経外科医): 前回使われたプレートは非常に出来が悪いものに見えました。見栄えが良くなるよう努力しても、頭蓋骨は変形していました。
モンテ=デ=オカ氏: 問題のあった最初の移植後、別の選択肢を模索し始めました。姉のガブリエラが熱心に調べて、医者にさまざまなオプションを提示しました。製造を行うビデオを目にして、非常に精密で見た目も良いと思いました。それでもう一度信じてみることにしたのです。
カルロス・モンロイ氏 (Granta CEO): Granta は 生活に変革や向上をもたらしたいと考えています。その一環として、この移植用頭蓋骨組織を作り始めました。移植患者に合わせた移植組織で、頭蓋骨損傷や神経血管損傷に苦しむ患者の頭蓋骨を修復、再建します。腫瘍や先天性の形態異常から患者を救いたいと考えています。
カルカーニョ氏: このケースは移植組織が大きいため困難を極めました。頭蓋骨の半分を移植する必要があり、難易度の高いものでした。
モンロイ氏: デザインは簡単でしたが、非常に有機的な形状のため、製造はとても難しいものでした。受け取った患者の CT スキャンの結果から、問題の解決に役立つと思われるデザインを提案し、頭蓋骨モデルと提案する移植組織モデルを 3D プリントしました。それを医師と相談して、最適な解決策かどうか話し合いました。作成には 5 軸 CNC マシンを使いました。最終的な移植組織は生体材料で製造し、それを病院へ送って滅菌処理しています。Granta では、完全生体適合性を有する PEEK (ポリエーテル エーテル ケトン) を使っています。この材料には、さまざまな特性があります。例えば拒絶反応が起こらず、感染も生じません。
カルカーニョ氏: 移植は急を要しており、時間との闘いでした。移植のためにあらゆる手を尽くしました。
モンロイ氏: 母親や夫から毎日のように電話がありました。「アドリアーナの体調は日に日に悪くなっている。どんどん弱って、気分も落ち込む一方だ。どうか急いで、できるだけ早く完成させて欲しい。急かせたくはないが、どうかお願いしたい」とね。
カルカーニョ氏: 手術日になり、カルロスと私は手術室に入りました。突如として、これは現実なのだと理解しました。
モンロイ氏: 看護師のひとりが、非常に長い手術になるだろうと言いました。一度手術しているがうまく行かなかったので、今回の手術には時間がかかると言うのです。私は、今回の移植組織はぴったり合うはずだと断言しました。滅菌袋から移植組織を取り出して頭蓋骨にはめ込み、完全にフィットするのを目にすると、全員が喜び、口々に「素晴らしい! うまくいく!」と言いました。
モンテ=デ=オカ氏: 術後に再会したとき、彼女の声は弾んでいました。少し手が震えていましたが、以前よりもずっと軽いもので、リラックスして日付も覚えているなど、以前とは全く違いました。ジョークを言ったり、友達を招いたりもできるようになりました。
フアンベルス医師: アドリアーナは、このタイプの移植組織が使用された初のケースです。結果にも、移植技術の面にも非常に満足しています。損傷部分は大きかったものの 見た目も極めて優れています
モンテ=デ=オカ氏: 手術後、医師からは回復に長い時間がかかると言われましたが、現在彼女はさまざまなセラピーを受けています。日々違ったことを行っており、自身の限界に挑むのを見るのはうれしいことです。
モンロイ氏: ソフトウェアに関連するイノベーションは主に CT スキャンによるものです。コンピューターを使用した断層撮影を利用して 3D モールドを作成します。この 5 年から 10 年の間の 機能向上によって実現しました。その情報を取り込み、3D モデルを作成します。素晴らしいイノベーションです。翌日に彼女に会いに行くと、満面の笑みを浮かべて「ありがとうございます。あなたのおかげで人生が変わりました」と言いました。実際には、その逆で、彼女が私の人生を変えてくれました。今後もこの気持ちを忘れることはないでしょう。アドリアーナの後、10 例ほどの組織をデザインしています。そのうち 4 例は、既に移植済みです。
カルカーニョ氏: 私はプロダクトのデザイン、エンジニアリングを行ってきました。自動車やプロダクトのデザインからも、世界に影響を与えているのだなと感じることはできます。でも人間にとって非常に重要な、命に関わるようなものをデザインするのは、全くの別次元です。それに関わることができて非常にうれしかったし、最初の組織が移植され、患者から感謝を伝えられたときには、何とも言えない気持ちになりました。人生を一変させる体験です。
モンロイ氏: この仕事の最大の報いは、手術が成功して、患者に会うときです。術後に毎月連絡し、元気で、家族で食事に出かけたと聞くときです。それが一番です。最高の気分ですよ。
アドリアーナ・モンテ=デ=オカ氏: 素晴らしい気分です。こうして生きていられることに、神と、私のためにプレートを作成してくれた Granta の医師たちに感謝しています。