最高レベルの精密製造では、隣あう部品が完全にマッチするように整合する必要がある。自動車、医療機器、航空宇宙、エネルギーなど、精度が最も重視されるハイパフォーマンス産業では、製造部品に許容される誤差は髪の毛の太さの10分の1に満たないことがある。
ケナメタルは、こうした精密さを求められる産業をはじめとするさまざまな分野に対し、60か国以上でサービスを提供している、ハイパフォーマンスツーリングおよび産業用素材のグローバルサプライヤーだ。ケナメタルは、電気自動車、風力エネルギータービン、ジャンボジェット機など、現代の驚異的な機械に必要な何千もの精密部品を製造するためのツーリングソリューションを製造している。
ケナメタルのデジタル トランスフォーメーションを率いる最高技術責任者 (CTO) は、この役割に完璧にマッチしした人物だ。インディアナ州テレホートで育った少女時代、ケナメタルCTOのカルロンダ・ライリー博士は、祖父の地下室やガレージの作業場での遊びに夢中だった。
「祖父はあらゆる道具や小道具を持っていて、いろいろな物を作っていました」と、ライリー博士。「学校では数学と科学が得意でしたが、日常生活で使うものの作り方を理解したいという情熱が培われたのは、祖父とのひとときでした」。
数十年後、化学工学の博士号を有するライリー氏は、「Women in Manufacturing(製造業界で活躍する女性)」殿堂入りを果たし、ケナメタルが約90年にわたり培ってきた精密ツーリングソリューションの専門知識を、世代間のスキル格差や中小企業 (SME) の参入障壁が拡大しているなかでも、より多くの製造業企業にとってより利用しやすいものにすることに取り組んでいる。
ケナメタルの顧客である精密産業企業の多くは、1つの製品を完成させる間に、何千もの部品やコンポーネントのエンジニアリング上の課題に直面する。各部品は厳しい要件を満たす必要があり、それがジェットエンジンのブリスク (ブレードディスク) であろうと、同じエンジンに取付ける部品であろうと、同レベルの科学的かつ技術的専門知識が要求される。
ケナメタルは、チタン、アルミニウム、スチール、さらには炭素繊維強化プラスチック複合材料のような新しい軽量材料を複雑な形状へと切削するのに特化された何千種類もの製品を取り揃えている。これには、穴あけ、フライス加工、旋盤加工用の工具、ホルダー、アダプターなどが含まれ、さらにソリューションにおいてアディティブ・マニュファクチャリング(積層造形技術)を活用する機能も提供している。
これらひとつひとつのツーリングソリューションには、ケナメタルのエンジニアリング専門知識から得られた膨大なデータが含まれている。たとえば、同社のHARVI™ 1 TE超硬ソリッドエンドミルは、素人目には普通のドリルビットに見えるかもしれないが、実はその性能と柔軟な使用方法が評価され数々の賞を受賞した革新的な製造技術だ。「このツールは私にとって美そのものです」と、ライリー博士。「私たちがこの工具に組み込んだデザインのあらゆる要素――選ぶ素材、各角度や曲線、表面仕上げ――そのすべてが、性能を引き出すために意味を持っているのです」。
ライリー博士はケナメタルが蓄積してきた精密製造の専門知識を活用する一方で、そのデータと専門知識をより広く利用できるようにするための取り組みも率先して行っている。たとえば従来は精密製造の費用対効果が低かったSMEなどへの提供や、定年を迎える、あるいは定年間際にある製造業の専門家世代の知の遺産を継承し、スキル格差拡大に対応する必要性も高まっている。
「経験豊富なプログラマーやオペレーターが引退している流れについては誰もが把握しています」と、博士。「そしてこのノウハウの喪失が、スキル格差の拡大につながっているのです。この傾向は、ケナメタルのような外部のツーリング専門企業に大きく依存している中小規模のジョブショップにより大きな影響を与えるでしょう。そのため、これらの顧客を効果的にサポートするためにどうすれば技術的なリーチを広げられるについて考えてきました」。
その答えの重要な一要素は、ケナメタルのツーリングデータをAutodesk Fusionに統合する、自動化されたエコシステムだ。これにより、このようなツーリングデータを手作業で渡すことに伴う時間と間違いが軽減される。たとえば、中小規模のジョブショップが特定の部品を数千単位で製造する依頼を受けた場合、スケジュールが厳しいにも関わらず、部品を効率的に製造する手段を検討するためのリソースは少ないことが多い。ケナメタルはジョブショップが独自のCAMおよびCNCプログラミングを行えるよう、ツーリングソリューションを迅速に開発することができる。
「私たちのビジョンは、プロセスをシンプルにし、一回で正しく部品を作れるように、初期の加工段階で顧客が必要とするすべての情報を提供することです」ライリー博士はこう話す。これにより、労働力が高齢化しても、製造業は自動化とデジタル化によって進化し続けることが可能だ。
製造業におけるこのデジタライゼーションは目的を念頭に置いて行われるべきだとライリー博士は話す。ビジネスにとって最高の機会を引き出すには「顧客のニーズに誠実に応えるため、解決しようとしている課題が何であるのかをしっかり把握すること」だ。
ケナメタルは数年前から自社の製造業デジタルトランスフォーメーションに取り組んでおり、膨大なツーリングデータをデジタル化し、新たなビジネスチャンスを活用する態勢をウェブサイト上に整えている。
Kennametal.comは、機能強化されたデジタル加工体験により、ケナメタル独自のツーリング専門知識と製造能力のすべてにメーカーがアクセスできるようになっており、そのデータはFusionソフトウェアにも統合されている。顧客が製造したい部品またはコンポーネントの3Dモデルと所有する製造機械の種類を提供すれば、ケナメタルの機械加工プラットフォームがCAMシミュレーション最適化の製造前工程を自動化し、最も費用対効果と効率性に優れたツーリングパッケージと加工ツールパス戦略を見つけることができる。顧客がFusion内のケナメタルのデータを使用する場合、すべての工具データは設計、シミュレーション、CAMツールパスを通して自動的に一箇所にまとめられ、自動的に行き来することができる。
顧客がKennametal.com上の加工プラットフォームと直接やり取りできるようにすることで、データの流れが自由になる。データを手渡しする場合、データはサイロ内に存在することになるとライリー博士は話す。そのため、製造バリューチェーン全体でデータの移動に時間がかかり、非効率が生じることが多い。「この効率の悪さはさまざまな問題を引き起こす可能性があります」と、ライリー博士。たとえば「工具の初期不良、部品の品質低下、オペレーターの不満などです。サイロは排除する方が良いのです」。
他社のデジタルトランスフォーメーション同様、ケナメタルの取り組みも現在進行中のプロセスだ。同社は、ますます多くのツーリングデータをデジタル化し、Kennametal.comの機能とFusion統合に追加し続けている。AIのデータ分析などの新技術や機能はこのプロセスの前進に一役買うことになるだろう。「AIは我々に一発で正確に部品を作るという究極のビジョンを実現する能力を与えてくれるようになるでしょう」とライリー博士は話す。
精密製造が製造可能なモノの限界を押し広げ続けている。一方で、市場原理はこうした複雑な成果をより速く、正確に、持続的に、効率的に実現することを要求する。ライリー博士は、ケナメタルのソリューションは顧客とともに進歩の波を牽引し、その波に乗っていかなければならないだろうと認識している。
「弊社のターゲット市場における応用はより洗練されたものになりつつあります」と、ライリー博士。「製造ソリューションもそれに合わせて進化する必要があります。高齢化やスキル格差はあっても、デジタライゼーションと自動化がこれらの課題に効果的に対処できるであろうと、私たちは確信しています」。
マーカスは6年前にオートデスクの契約社員となり、その後SEOとオウンドメディアにフォーカスしたコンテンツマーケティングのスペシャリストとして、フルタイムでチームのメンバーとなりました。オハイオ大学でジャーナリズムの学位を取得後、音楽テクノロジー、コンピュータ、家電製品、電気自動車に関する記事を執筆。オートデスクでフリーランスとして働き始めると、デザイン、製造、建築、建設の世界を変えつつあるエキサイティングな新技術を高く評価するようになりました。
PD&M
Courtesy of MISUMI.