EUのEPBDとCSRDサステナビリティ規制が建築物にとっての新時代の到来を告げる

EPBDとCSRDサステナビリティ規制が、脱炭素化目標、ライフサイクルアセスメント、報告義務化によりEUの建築物を変革し、よりグリーンな未来へと導いている様子を紹介します。


EUの新たなサステナビリティ規制は環境目標を全面的な法的要件としている

EUの新たなサステナビリティ規制は環境目標を全面的な法的要件としている

Zach Mortice

2024年12月6日

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  • 欧州連合は、建築業界に対してさらなる説明責任を求める2つの主要なサステナビリティ関連の法令を可決した。

  • 企業サステナビリティ報告指令 (CSRD) と建築物エネルギー性能指令 (EPBD) は、野心的な目標を設定しており、分析を前面に打ち出している。

  • IoTセンサーやスマートメーターなどのハードウェアとソフトウェアツールは、デジタル設計ツール、BIM (ビルディングインフォメーションモデリング) 、デジタルツイン同様、プロジェクトのライフサイクル全体にわたってデータを追跡する上で重要な役割を果たすだろう。

2024年、欧州連合 (EU) では建築業界のサステナビリティに関する全面的な新規制が導入され、カーボンフリーな建築環境の実現に向けた取り組みは、これまでの理想的な目標から数億人規模の人々にとっての法的義務へと移行しつつある。この変化は、AECO (建築、エンジニアリング、建設、運用) 業界におけるサステナビリティ分析が、専門的でニッチな知識形態から、建造環境を変えるために必要な基本的な能力へと急速に移行しつつあることを意味する。またこれは、建物の性能を検証するデータを整理し分析するための新しいツールや技術の必要性が飛躍的に高まっていることを際立たせてもいる。

企業サステナビリティ報告指令 (CSRD) は、大企業に対し、その事業活動が環境や社会に与える影響について報告することを求めるEUの規制である。一方、建築物エネルギー性能指令 (EPBD) は、2050年までにEU内の既存の建築物の脱炭素化を目標に掲げ、エネルギー効率の低い建築物の改善を義務付けている。

データ主導、市場テストでの実績

建物性能データを細部まで可視化するデジタルツインはEPBDやCSRDの要件を満たす上で理想的だ
建物性能データを細部まで可視化するデジタルツインはEPBDやCSRDの要件を満たす上で理想的だ

EPBDに関して、AECO企業は必ずしも専門のコンサルタントを雇う必要はない。しかし、「非居住用建築物の最低エネルギー性能基準、新築建築物のゼロエミッション要件、ライフサイクルアセスメント、デジタル報告要件など、EPBDが定める要件を説明するのに適切な専門知識を有する人材を確保する必要があります」と、よりエネルギー効率の高い持続可能な建造環境を提唱する業界団体であるEfficient Buildings Europe事務局長、エイドリアン・ジョイス氏は話す。これは、全ての企業に分析サステナビリティと性能維持を全面的に義務づけるものだ。

ハードウェアおよびソフトウェアツール (IoTセンサー、スマートメーターなど) は、これらの目標を達成する上で重要な役割を果たす。またAutodesk Revitのようなデジタル設計ツールも欠かせないものとなるだろう。「ビルディングインフォメーションモデリング (BIM) は、企業がプロジェクトのライフサイクル全体にわたってデータを追跡するのに使用できるツールです」ジョイス氏はこう話す。

EPBDとCSRD実行に最適なデータプラットフォームは、建物性能データポイントを細部まで可視化する完全なデジタルツインだ。これは、賃貸面積あたりのカーボンフットプリントの追跡、再生可能エネルギーが供給するエネルギーの割合と稼働率の比較、建物外壁の性能と稼働率を比較評価などを行うことを意味する。「さまざまな形でケーキをカットするようなものです」と、スウェーデンを拠点とするグローバル建築事務所スウェコでサステナビリティ部門チーフを務めるエリス・グロッセ氏は述べている。

EPBDで新築ビルの先を見据える

フランスは新たな環境規制の採用におけるリーダーだ
フランスは新たな環境規制の採用におけるリーダーだ

EPBDの最も野心的な要素は、既存の建物に焦点を当てている点だ。既存の非居住用建築物については、この政策により最低エネルギー性能基準の段階的導入が義務付けられ、エネルギー効率が最低レベルの建築物を優先的にエネルギー効率の改修対象とする。EU諸国は2030年までに、既存の非居住用建築物のうち性能が最低レベルの建物16%を改修する必要がある。さらに2033年までには、性能が最低レベルの建物26%に改修が求められる。

住居用建物にはより柔軟な対応が認められている。各国は、それぞれの計画に基づき、既存の住宅の平均エネルギー使用量を2030年までに16%、2035年までに20%削減することを目指す。その削減量の55%は、性能が最低レベルの既存の住宅に由来するものでなければならない。一方、新築の建築物に対する義務はさらに厳しいものとなっている。2030年以降に建築されるすべての新築建造物は、敷地内の二酸化炭素排出量をネットゼロにする必要があり、ライフサイクル全体の排出量も算定されることになる。

これらの規制により、各国政府はEPBDを自国の法律や建築基準法に統合し、強制力を持たせる義務が生じる。「国の規定に従わない場合、建築許可が下りない可能性があります」ポーランドのArcadisでESGデューデリジェンス統括を務めるピョートル・モクザンスキー氏はこう話す。EPBDは確実なデータ収集と共有の強化を奨励しており、加盟各国は建築物のエネルギー性能を追跡する国家データベースを構築する責任を負う。

これまでのところ、加盟国によるこれらの措置の導入にはばらつきがある。フランス、オランダ、デンマークは最も進んでおり、性能が最低レベルの建物の改修を義務付ける法制度、財政的な支援体制の整備、AECサプライチェーン全体のカーボンフットプリント削減に関する長期的な実績も備えている。

CSRDによる情報開示と説明責任

新法の下では、企業はサステナビリティに関するリスク、機会、戦略を開示しなければならない
新法の下では、企業はサステナビリティに関するリスク、機会、戦略を開示しなければならない

約50,000の企業が、社会的および環境的要因に従って、自社の事業慣行がもたらすリスクと機会を開示しなければならなくなる。企業は2025年に報告書を公開できるよう、2024年から報告を開始する必要がある。

規制当局や持続可能性の専門家たちは、この新しい報告体制を市場の透明性と公的説明責任を提供する、米国証券取引委員会に規定される基本的な財務開示のようなものと考えている。これは、グリーンウォッシュを抑止し、二酸化炭素排出量と気候変動へのレジリエンスをビジネスモデルの成否を左右する要因リストに加えることを意図している。「融資担当者や投資家は、カーボンニュートラルへのロードマップ、エネルギー性能、気候変動適応リスクについて尋ねるようになっています。自社のポートフォリオにいかがわしさが出るのを避けたいからです」と、グロッセ氏は話す。

2014年以来、EU企業には社会/環境報告書の作成が義務付けられているが、今回の新規制により、さらに多くの企業がこの手順を踏まなければならなくなる。さらに、EUの規制下にある証券取引所に上場している大企業には説明責任が生じ、また報告書には監査が入る。

新法により、企業には次を開示する必要が生じる:

  • 汚染防止戦略

  • 二酸化炭素排出量削減のための社内インセンティブ

  • 生物多様性や生態系保護の処置

  • 労働と人権に関する慣行

  • 消費者とエンドユーザーの保護

  • 汚職対策など

各国政府は、罰金や情報公開を含む、コンプライアンス違反に対する罰則を設定する。

CSRDの報告では、「ダブルマテリアリティ」の原則に基づいて事業活動を記述する必要がある。これは、企業が自社の事業により外の世界に与える内から外への影響(製造副産物が地域の流域を汚染する可能性など) だけでなく、外部環境が企業の運営に影響を与える外から内への要因 (気候変動に起因する災害が製造主要部品の価格高騰を引き起こす可能性など) についても報告することを意味する。AECO企業やビルオーナーにとって、これは自社製品、つまり自社が設計、建設、管理する建築物の二酸化炭素性能や社会的/環境的影響を開示する義務が生じるということだ。

「CSRDは顧客向け報告システムの一部であるため、当社のプロジェクトに大きな影響を与えています」スウェコでグリーンビルコンサルタント業務を統率することの多いグロッセ氏はこう話す。

CSRDの報告は複雑かつ広範であるため、中小企業には大きな負担となりかねない。これは12の基準、82の報告要件、500のKPIを含むデータ集約的なプロセスであり、数百時間が作業に取られる可能性がある。「これを実現するために、多くの企業はスペシャリストやマネージャーを増員したり、社内にこの分野を担当するチームを作ったりしています」と、モクザンスキー氏は言う。「必要なデータの収集を容易にし、改善するためのツールは市場に数多く出回っています。CSRDは比較的新しいトピックですので、こうしたツールには日々改良がなされています」。

 

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この宣言は、各国政府に対し、二酸化炭素排出量が最も多い箇所の排出量を削減するよう奨励している。「シャイヨ宣言は、建築分野における二酸化炭素排出に取り組むことで、気候変動との闘いにおいて建築物が果たす重要な役割を国連が初めて直接認めたものとして、重要なマイルストーンとなっています」と、ジョイス氏。「この包括的なアプローチは、建造環境による気候への影響を真に削減するためには、冷暖房などの運用上のエネルギー使用にとどまらず、材料生産、建設、廃棄物、リサイクルなど建築物のライフサイクルの全ての段階において二酸化炭素排出量に取り組む必要があることを明確に示しています」。

「今や金融市場も気にかけるように」

銀行はエネルギーリノベーションのための「グリーンローン」の提供に前向きな傾向にある
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EPBDのような法的義務化は、米国で一般的なLEEDなどの自主評価システムとは全く異なるサステナブル建築の管理体制を提示する。これらの評価システムは主に「コミュニケーションとブランドラベル」として機能し、特定の建物を差別化するよう機能する、とグロッセ氏は話す。逆に、EPBDのような法規則は、より高レベルのエネルギー性能で建物を統一する基準として機能する。

EPBDはまた、自主的な格付け制度とは異なり、より広義な建築物を対象としている。自主的な制度では初期費用を負担でき、その後のマーケティング上のメリットを活用できる可能性が高い主要な都市モニュメントに限定されがちだが、EPBDはそれを超えて適用される。「このようなプログラムの自発性には限界があり、改修率はEU全体で約1%にとどまっています」とジョイス氏は話す。

中長期的には、改修に必要な資金調達や支援は必要になるものの、改修が完了すれば日々の運営コストを削減することができる。この長期的な利益により、銀行から有利な金利条件も得やすくなる。「銀行はエネルギー効率向上のための改修用のグリーンローンに積極的です」と、グロッセ氏。「点と点がつながりつつあるのです」。それはまた、災害の悪化に直面する今、気候変動へのレジリエンスを高め、建物の価値を高めることも意味する。一方、無制限に二酸化炭素を排出すれば、それは最終的に「本当に、本当に高くつくことになるでしょう」と、グロッセ氏は指摘する。「今や金融市場もこうした問題に関心を持つようになったのです」。

環境に関する規制や新たなテクノロジーがお客様のビジネスにどのような影響を及ぼすかについて詳しくはこちらをご覧ください。

Zach Mortice

Zach Mortice について

ザック・モーティスはシカゴ在住の建築ジャーナリスト。

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