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Autodesk Fusion の Manufacturing Sustainability Insights(MSI)ツールは、製品の二酸化炭素排出量を迅速に計算し、最小限に抑えるために役立つ 3 つの方法を企業に提供します。

設計・製造分野をけん引するビジネス リーダーたちは、自社のプロセスや製品がもたらすカーボン インパクトを低減するための対策を講じる必要があることを認識しています。しかし多くの企業は、製品が生産ラインを経て出荷されるまでの間のサステナビリティ指標を正確に報告する方法を知りません。その後に指標を報告したところで、意義のある変更を行うには遅すぎます。
これは企業のサステナビリティ チームにとって、ストレスの溜まる課題です。多くの場合、サステナビリティ チームがプロジェクトに関与できるのは、設計に関する重要な意思決定が既に下された後になるからです。今や、サステナブルな製品は、政府の規制や消費者の嗜好に後押しされ、ますます支持されるようになっています。企業がこの課題をうまく解決できなければ、市場で不利な立場に立たされる可能性もあるのです。
昨年春にリリースされた Autodesk Fusion の Manufacturing Sustainability Insights(MSI)機能を使用すると、エンジニアは設計上の意思決定がもたらすカーボン インパクトを即座に確認できます。ユーザーはさまざまな入力を切り替えながら、それぞれの変更が「原材料の調達から製品の出荷まで」の二酸化炭素排出量にどのような影響を与えるかをリアルタイムに評価できます。
オートデスクも自社で MSI 機能を実践しました。Autodesk University のイベント「AU ファクトリー エクスペリエンス」では、参加者がこの機能を利用して排出量を削減しながらキーパッドを作成するというアクティビティを行いました(イベント後は各々が作成したキーパッドを持ち帰りました)。このイベントでは、製品設計に小さな変更をいくつか加えるだけで、製品の二酸化炭素排出量を約 50% 削減することができました。企業がこの MSI を活用して、材料の選択、製造プロセス、生産地という 3 つの重要な要素の調整を行えば、さらに劇的な結果が得られる可能性があります。

Autodesk Fusion の MSI ツールを使用すると、次のことが可能になります。
1. 最もサステナブルな材料を探究する
二酸化炭素排出量の少ない材料を選択すれば、製品設計全体のサステナビリティが向上することは明らかです。しかし、原材料の環境への影響に関する情報を企業が入手するのは、依然として非常に困難です。 各製品の材料にどれくらいの炭素が含まれるかを確認するためには、多くの場合、設計者が自ら調査する必要があります。しかし、そのような調査を行えば、製品設計プロセスにより多くの時間がかかるため、多くの場合は調査が実施されていません。そして企業は結果的に、簡単なステップでよりサステナブルな製品を実現する機会を逃してしまいます。
Fusion の MSI ツールは、このギャップを解消する役割を果たします。このツールには、一般的な合金や樹脂の情報が幅広く搭載されており、設計者はドロップダウン メニューからさまざまな炭素情報にアクセスできます。設計者が材料を選択すると、その材料を選択することで製品全体の二酸化炭素排出量にどのような影響がもたらされるかを即座に確認できます。
オートデスクは Gravity Climate 社と提携することで、これらのデータに無料で簡単にアクセスできる機能を実現しました。同社は、業務全体の炭素とエネルギーを管理できるプラットフォームを、複雑な業務やサプライ チェーン向けに提供しています。
2. 最もサステナブルな製造プロセスを選択する
多くの場合、サステナブルな設計と製造に関する議論は材料の選定に終始し、あとは出荷について多少取り上げられる位です。しかし実際は、同じ場所で同じ材料を使用する場合でも、製品の製造方法を変えるだけで、全体的な炭素排出量に劇的な違いが生まれることがわかっています。
MSI では、CNC 加工、3D プリント、射出成形をはじめとする、一般的なさまざまな製造プロセスを分析できます。
通常、積層造形プロセスは切削加工プロセスより廃棄物が少ないため、炭素集約度も低くなります。これは常識的に知られている事実の 1 つですが、積層造形と切削加工では、炭素排出量につながる正反対の要因があることを考慮することは重要です。積層造形プロセスは材料効率が非常に高く、排出量の多くはエネルギー消費に由来します。一方、CNC フライス加工のようなプロセスでは、排出量のほとんどがストック材料のエンボディド カーボンに起因します。
また、生産規模の影響を考慮することも重要です。金型が必要なプロセスでは、プロセス初期の炭素集約度は高くなる可能性がありますが、プロセスの進行とともにその値は徐々に下降し、最終的には成形プロセスの単位当たりの炭素排出量が他のプロセスよりも低くなる場合があります。
かつては、設計チームとサステナビリティ チームが複雑な研究論文を精査し、Excel スプレッド シートを使用して独自のライフサイクル アセスメント ワークフローを構築し、結論を導き出す必要がありました。しかし、MSI を使用すれば、設計者はこうした詳細な情報をすぐに確認し、計画している生産プロセスを反映させた炭素計算を行えます。


3. 地理的なカーボン インパクトを考慮する
輸送距離が、製造された製品のエンボディド カーボンに影響することは明らかです。小型で軽量なアイテムの場合は、その影響を無視できることもあります。多くの場合、より重要なのは、さまざまな製造市場のエネルギー グリッドの構成を考慮することです。化石燃料に依存している地域から、主にクリーン エネルギーを動力源とする地域に製造拠点を移すだけで、二酸化炭素排出量を 3 分の 1 に削減できる可能性があります。
こうした計算は、複数の要因を組み合わせて考慮することで、さらに興味深い結果となり、より大きな影響をもたらすものとなります。たとえば、選択的レーザー焼結のような非常に多くのエネルギーを消費するプロセスを使用して製品を製造することを検討しているとします。その場合、再生可能エネルギーが使用される国で製造を行えば、製品に関連する総炭素量はそれほど増加しないかもしれません(実際、このプロセスで、よりサステナブルな材料を使用できれば、炭素排出量を削減できる可能性もあります)。しかし、多くの市場においては、このプロセスを採用することで炭素排出量が大幅に増加する可能性があります。
設計者は MSI を使用すれば、地理的な要因が炭素排出量にどう影響するかを確認できるだけでなく、世界各国がさまざまに異なる材料や製造プロセスでどのようなパフォーマンスを発揮しているかを確認することもできます。これにより、企業は製品をどこで生産すべきかについて十分な情報を基に検討し、適切な意思決定を行えます。

未来を見据えて
MSI は貴重なインサイトを提供するツールですが、環境エンジニアが専門的な知識を駆使して行う環境監査の代わりにはなりません。それでも、カーボン インパクトについての理解を深め、最小限に抑えるために役立つこのツールは、メーカーにとって、未来に向けた重要な一歩となるでしょう。また、このツールは今後も、ユーザーからのフィードバックに基づいて進化し続けます。MSI のマテリアル ライブラリと機能も、さらに拡張していく予定です。そして将来的に、MSI で環境製品宣言(EPD)を作成できるほどに、炭素データを正確に計算・追跡できるようになる可能性も十分にあります。世界的な環境規制が今後さらに強化されていくことが予想される中で、このツールは非常に有用になるでしょう。
ただし現時点における MSI は、製品の設計プロセスで炭素を測定し、最小限に抑えるために企業が活用できる基礎的なツールとお考えください。オートデスクが提供するその他のサステナビリティ ツールと MSI のインサイトを組み合わせて活用することで、多くの企業が規制基準への準拠や無駄の削減を推進できます。これらのツールの詳細については、こちらを参照してください。
サステナブルな製品設計は、偶然生まれるものではありません。意図的な選択を数え切れないほど積み重ねることで実現します。MSI は、材料、製造プロセス、生産地域に関するリアルタイム データを提供することで、こうした意思決定プロセスを迅速化および簡略化するために役立ちます。新時代のサステナブルな製造の道を切り拓くツールとなるでしょう。