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イスタンブールのスカイラインを形作る:Ziraat Towersとデジタルツールの力

合理化されたプロセスにより、Kalyon Constructionがミスを最小限に抑えながら、プロジェクトの二酸化炭素排出量を削減し、効率性の新基準を打ち立てた様子を紹介します。


新しいイスタンブール金融センターの中心的存在であるZiraat Towersはデジタル設計/コラボレーションツールを使用することでプロセスを向上しサステナビリティ目標を達成する方法を提示している

提供: Kaylon Construction

新しいイスタンブール金融センターの中心的存在であるZiraat Towersはデジタル設計/コラボレーションツールを使用することでプロセスを向上しサステナビリティ目標を達成する方法を提示している

Zach Mortice

2025年11月7日

分: 読書時間
  • 新しいイスタンブール金融センターの一角を占めるZiraat Towersプロジェクトは、高度なデジタルツールを活用して建設され、技術的精度と品質を確保しつつコストと工期を大幅に削減した。

  • この複合施設は、複雑なファサードを持つ2棟のガラス張りのタワー、広大なオフィスと店舗スペース、文化イベントセンターで構成され、サステナブルな手法と材料によりLEEDプラチナ認証を取得している。

  • Kalyon Constructionはデジタルツールを活用してコラボレーションを促進。ミスを最小限に抑え、プロセスを最適化することで複雑性を管理し、二酸化炭素排出量を削減し、今後のプロジェクトの効率向上にもつなげた。

イスタンブールは何世紀にもわたり東洋と西洋を結ぶ文化的・経済的な架け橋となってきた。そして今、その伝統を受け継ぐ新しいアイコンが生まれようとしている。イスタンブール金融センターは、約56万平方メートルのオフィススペース、約9.2万平方メートル商業施設スペース、約7万平方メートルのホテル、約6万平方メートルの住居スペースを擁する複合施設プロジェクトだ。さらに2,000人収容の文化イベントセンターもこの施設に併設されている。

Ziraat Towersはトルコ最大の銀行の本社ビルで、新しいイスタンブール金融センターの中心的存在となるだろう。この複合施設は、40階建と46階建のガラス張りのタワー2棟で構成され、総建築面積は43万平方メートルに及ぶ。タワーには複雑なファサードが備わっており、広大なオフィスと店舗スペース、文化イベントセンターが設けられ、サステナブルな手法と材料によりLEEDプラチナ認証を取得している。プロジェクトの初期段階から、デジタルツールは建設プロセスとその成果において、重要な役割を果たしてきた。

「Ziraat Towersプロジェクトの成功は、適切なツールの使用、チームワークの醸成、オープンなコミュニケーションにありました」。Kalyon ConstructionのBIMマネージャー、ベルギン・チャルシュカン氏はこう話す。「コラボレーションの精神は、課題を克服し、ワールドクラスのプロジェクトを実現するカギでした」。

大規模な事業

Kalyon Constructionが施工を建築事務所KPFが設計を担当したこの複合施設は、共通の8階建のポディウムの上に建つ2棟のガラス張りのタワーで構成されている。この曲線的なガラスのポディウムには、複数の橋が架かり、タワー同士をつないでいる。地上からは、水により滑らかになった石の形 (講堂と会議場) がガラス越しにはっきりと見え、その感触を誘うような形状が人々を惹きつける。

ランドスケープガーデンとポディウムの屋上庭園がタワーを一体化させ、構内を緑で包み込む。タワー全体に沿って配置された複雑なルーバーシステムは、理想的な日射熱取得と遮光を可能にし、階が上がるにつれて側へと繊細なフレアを生む。これらのフォルムは伝統的なアラビア書道を参考にしたもので、軽快な曲線と句読点のような縦のラインが組み合わせられている。

 

デジタルツールと目標の連携

それぞれ形が異なる9,420のガラスパネルの形状はパラメトリックモデリングを使用して生成された
それぞれ形が異なる9,420のガラスパネルの形状はパラメトリックモデリングを使用して生成された 提供: Kaylon Construction

この複雑なプロジェクトを管理するため、Kalyon ConstructionはAutodesk RevitNavisworksACC DocsBIM Collaborate ProDynamoなどのデジタルツールを使用した。

Autodesk Construction Cloudは、プロジェクトのステークホルダー間のシームレスなコミュニケーションを促進し、関係者全員が正確なデータに同時にアクセスできる環境を実現した。その結果、特にこのような広大な建設エリアで発生しがちな、情報や書類が雑然と散らばるリスクを効果的に排除できた。約40の協力会社とステークホルダー間の連係は、3D RevitとNavisworksのファイルを使用して効率良く管理され、工作図はRevitファイルから作成された。

流れるような曲線のファサードのガラスパネルは1枚1枚形状が異なるため、Kalyonはパラメトリックモデリングツールで各形状を生成しプランに適合させる必要があった。それぞれサイズの異なる9,420枚のパネルと、プロジェクト固有の18,840㎡のカーテンウォール建設モデルの生成にはDynamoを使用。このプロセスにより、3Dモデルと工作図の作成時間は従来の方法に比べて25%短縮された。

「Dynamoは、11,500枚の工作図の生成やファサードの製作モデルの作成など、プロセスの大幅な最適化を実現しました」とチャルシュカン氏は話す。この自動化により、チームは設計プロセス全体を通じて、不確定要素への柔軟な対応が可能になり、ミスを最小限に抑え、施工段階での生産時間を短縮することができた。その結果、ビルディングインフォメーションモデリング (BIM) はワークフローを合理化してコストを削減するとともに、プロジェクトのタイムラインを2か月短縮させた。

運用、LEED、シミュレーション

Ziraat TowersがLEEDプラチナ認証を取得できたのは、リサイクル材料の採用、自然採光の活用、Low-Eガラスによる日射熱取得の低減などのおかげだ
Ziraat TowersがLEEDプラチナ認証を取得できたのは、リサイクル材料の採用、自然採光の活用、Low-Eガラスによる日射熱取得の低減などのおかげだ 提供: Kaylon Construction

Kalyonと建設チームは、3Dモデリングとデジタルツインの開発にAutodesk Revitを使用した。「施工段階で作成された全分野のモデルは、建設が設計や実施プロセスと整合させるための重要なガイドとなりました」と、チャルシュカン氏。「これらのモデルは建物の技術的な正確性と品質基準を保証するものであり、運用段階へのスムーズで計画的な移行を促進します」。

この大規模な新規プロジェクトにおいて、二酸化炭素排出量を最小限に抑えるためにこれらのデジタルツールが一貫して使用され、LEEDプラチナ認証取得というチームの目標達成に大きく貢献した。リサイクル材を使用した建材の採用は最優先事項であり、VOC (揮発性有機化合物) の少ない材料を選択するなど、ユーザーの健康を優先した環境製品仕様が選定された。エネルギー効率の高いLED照明システムが採用され、照明の自動制御により、可能な限り消灯状態を保つ仕組みが整えられた。自然光がどう屋内に入るかをモデル化するために日照分析が行われ、建物全体に日射熱取得を抑えるLow-Eガラスが使用されている。強いまぶしさの発生する場所には、カーテンやブラインドなどで対策が施された。さらに「クラウド環境にある25,000枚の図面を現場のモバイル端末で閲覧することで、紙の使用量を大幅に減らすことができました」とチャルシュカン氏は話す。

建設チームは、Ziraat Towersのデジタルモデルを作成するだけでなく、モデルを使用して建設プロセスをシミュレーションし、リアルタイムにデータを共有して重要な作業を並行して進める計画を立てた。「この統合により、完了したタスクと遅れたタスクの追跡、重要なアクティビティの特定、資材の数量計画と作業スケジュールの監視による、より現実的で効果的な計画の策定が可能になりました」チャルシュカン氏はこう説明する。

「この一連のデジタル設計施工ツールはKalyonの業務遂行手法に統合され、プロセスの向上に積極的な役割を果たしています」と、チャルシュカン氏。「これらのアップデートは、今後のプロジェクトのシステム構築をより迅速かつ効率的に行い、困難な局面への適応をより容易にすることを目的としています。このアプローチにより、他のプロジェクトにおいてもより迅速で一貫性のあるモデリングプロセスが可能となり、再利用性による時間短縮が実現します。このプロジェクトから学んだ知見は今後、より効果的なプロジェクトの監視および管理のためのプロセスの最適化に活用されるでしょう」。

Zach Mortice

Zach Mortice について

ザック・モーティスはシカゴ在住の建築ジャーナリスト。

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