エンジニアリング アートとクリエイティビティが光を当てる新たなビジネス
LERA+ のディレクターであるアルフォンソ・オリヴァ氏は、自身をアーティスト兼エンジニアと表現する。構造エンジニアリング会社 LERA のスピンオフである LERA+ をスタートさせるに際して、彼は両分野を融合させることを決心した。LERA+ は、アーティストのビジョンを実現し、そのためのデザイン最適化やソフトウェア開発、構造設計、シミュレーション、3D モデリングなどの効率性を向上させるエンジニアリング サービスを提供。同社のメディア アーティスト、ジェームズ・クラー氏とコラボレートし、照明をベースとする彫刻作品「Gravitational Collapse」用ソフトウェアを作成した様子を紹介しよう。
[ビデオ字幕]
アルフォンソ・オリヴァ氏 (LERA+ ディレクター): 機会を見つけた、ということです。この業界に欠けているものが理解でき、それを解決できるカード全てを手にしていました。
それに取り組む最も簡単な手段は、もちろん構造設計でした。そもそも LERA は構造設計の会社なので、そこから始めました。昨年ソフトウェア開発会社の LERA+ を公式に立ち上げ、それが他社に対する競争力をもたらしていると思います。私の父はエンジニア兼数学教師、母も数学教師でした。姉もエンジニアであり、常に数字に囲まれて育ちました。自分のことはアーティスト兼エンジニアだと思っています。LERA+ のクライアントは、とても多岐に渡っています。それには理由があります。
ニディ・セカール氏 (LERA+ コンピュテーショナル デザイナー): 私たちはデザイナー、特にアーティストがビジョンを実現することを支援しています。彼らが構想を成就できるよう、デザインそのものの、さまざまな部分を最適化しています。LERA+ とは、すぐにつながりができました。手掛けているプロジェクトは非常に幅広いもので、家具や彫刻から高層ビルまで、多岐に渡っています。とても興味深い取り組みです。ジェームズは、この分野での私たちの取り組みを象徴する存在で、テクノロジーとデザインの交点になっており、彼もそこに情熱を注いでいますね。
ジェームズ・クラー氏 (メディア アーティスト): 映画館で映画を観ていたのですが、目にしている映写のシステムについて考え始めました。そして、観ている画像は実際には存在しないと気付きました。私の眼に映っているのはスクリーンに投影された光で、それが目から脳へと伝えられることによって文字や時間軸として解釈され、感情的な反応が起こります。
オリヴァ氏: ジェームスはとても興味深いアーティストです。独自のビジョンを持っているようで、複雑な思考をユニークかつ非常にクリーンな手法で再現します。それが作品にも反映されています。
クラー氏: ここ最近の私の作品は、よりコンセプチュアルな語り口が多くなっています。私が興味を持つのは、テクノロジーと、それが私たちの現実の見方をどう歪めているかという点です。「Gravitational Collapse」は光を用いた彫刻で、我々が開発した LERA+ のプラグインで製作されています。このプラグインで、より表現豊かで抽象的な形を生み出せます。従来は柔軟性に欠けていて、同じものが並んでいるような、アングルが固定された配置になっていました。オフアングルも可能になり、45 度、15 度などに固定されることもなくなったので、どのような角度も可能になり、可能性も大きく広がりました。
オリヴァ氏: ジェームスのプロジェクトにはいろいろな課題がありました。例えば LED 毎に、LED ひとつとワイヤーを内部に収める必要がありました。そのサイズはこれくらい [ジェスチャー] です。どれほどタイトな空間かが、想像できますよね。ジェームスはさまざまな種類の LED を使いたいと考えたので、プラグインを多様な LED のサイズへ適合させる必要がありました
セカール氏: このプラグインでは、それぞれの接続箇所で使われる材料の量を最小限に抑えました。接続をできるだけミニマルにすることで、3D プリントのコストも最小限になりました。
クラー氏: この作品の構造では、接続部分が非常に重要でした。ライトが正しく保持される構造にするだけでなく、ライトから次のライトへ電力を送るためにも重要です。美的な面だけでなく、彫刻の一部としても重要なのです。LERA+ の支援がなければ取り組めなかったでしょう。まるでブラックホールのようになってね。
セカール氏: 私たちの取り組みによって、皆が細部でなく全体像にフォーカスできるように導くことができているのは、素晴らしいですね。自分たちの取り組みが現実のものとなり、それが他の人に与える影響を目にできるのは喜びです。
オリヴァ氏: LERA+にはさまざまな展望があります。グループとして成長してきていると思います。4年前にスタートして、チームは 5 名に増えました。多岐にわたる市場に取り組み、成功を収めています、でも歩みを止めるつもりはありません。さらに拡大し、より多くの創造的な人々に出会いたいと思います。
クラー氏: LARA+ との連携により、新たな形を生み出して新たなコンセプトを展開できるようになっただけでなく、アイデアを生み出し、それを実現するための応用やコンセプトの現実的な成果も、もたらされました