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XRとは? それが激変させる建築・製造やメディア&エンタメ業界の姿

xr とは

  • XR (エクステンデッドリアリティ) とはVR、AR、MRを総称するもので、コラボレーションとビジュアライゼーションを向上させることでAECOやD&Mなどの業界を前進させている。
  • XRソリューションは、AECOにおける設計精度を高め、製造を合理化し、没入型メディア体験を創造する。
  • 先進的なヘッドセット、スマートグラス、Autodesk VREDやAutodesk Workshop XRといったツールは、XR環境におけるリアルタイムのビジュアライゼーションとコラボレーションを可能にする。
  • XRは設計精度を向上させ、リアルタイムのフィードバックと遠隔連携を可能にし、没入型シミュレーションを通じて安全性とトレーニングを強化する。
  • AI、ハードウェアの向上、クラウドコンピューティングは、XRソリューションのアクセシビリティとスケーラビリティを向上させ、業界により大きな影響をもたらすだろう。

没入型テクノロジーは、人々の世界そして互いの関わり方を変えた。今日、建築家やエンジニア、メディアクリエイター、プロダクトデザイナーは仮想環境を探索し、デジタルコンテンツを物理世界に導入し、XR (エクステンデッドリアリティ) で3Dモデルを体験することができる。XRとは、VR (仮想現実)、AR (拡張現実)、MR (複合現実) を総称する用語だ。XRテクノロジーは、建築、エンジニアリング、建設、運用 (AECO) からメディア&エンターテインメント (M&E) まで各業界に変革をもたらしており、環境のコラボレーションやビジュアライゼーション、対話の新たな手法を提示している。

XRにより、AECOプロフェッショナルが3Dモデル内部へ入り込むことで設計の精度を高め、コストが高くならないよう潜在的な問題を明らかにすることが可能になる。製造のプロフェッショナルにバーチャルなプロトタイプを提供することで生産を効率化し、ミスを削減する。メディア&エンターテインメント業界はXRを活用して、視聴者を新たな世界へ誘う没入型のストーリーやゲームを制作している。小売企業は、顧客にバーチャルで商品を試着させ、実際の空間に置かれた商品を視覚化することでショッピング体験を改革している。医療における飛躍的進歩から次世代のトレーニングや没入型教育まで、XRは新たな可能性を解き放ち、業界が設計・製造・創造を行う手法を再定義している。

XRとは?

XR (エクステンデッドリアリティ) とは没入型テクノロジーの総称であり、VR (仮想現実) 、AR (拡張現実) 、MR (複合現実) が含まれる。物理世界とデジタル世界を融合させた体験領域を表すもので、さまざまな業界で活用され、人々のデジタルコンテンツへの関わり方に革命をもたらしている。

VR (仮想現実)

VRは、ユーザーを物理的な世界から切り離し,完全にバーチャルな環境に没入させる。ユーザーはMeta Quest 3のようなヘッドセットで完全にシミュレートされた空間に置かれ、そこでコンピューターで作成された環境を探索、体験できる。VRには、ゲーム、デザインレビュー、トレーニング、バーチャルツアーなどさまざまな用途がある。

AR (拡張現実)

ARは現実世界にデジタルコンテンツを重ね合わせ、ユーザーを取り巻く環境の認識を強化する。ユーザーはスマートフォン、タブレット、ARメガネを使用することで、物理世界にデジタル情報を重ねて見ることができる。ARは現実とデジタルを融合させるもので、小売 (バーチャル試着) やナビゲーション、建設などの用途に使用されている。

MR (複合現実)

MRはVRとARの両方の要素を兼ね備えており、デジタルのオブジェクトと物理世界を共存させ、リアルタイムでインタラクションできる。ユーザーはMicrosoft HoloLensやApple Vision Proなどのデバイスを使用することにより現実世界でデジタルオブジェクトを操作でき、仮想と物理の両環境の相互作用を、より統合された形で体験できる。MRは、建築、エンジニアリング、医療などの分野で、連携やリアルタイムシミュレーション、トレーニングに使用されている。

XRの進化

2010年代のスマートフォン普及により道案内やゲームなど向けの拡張現実が開発された
2010年代のスマートフォン普及により道案内やゲームなど向けの拡張現実が開発された

XR技術の進化は1960年代に始まり、モートン・ハイリグのセンソラマやアイバン・サザランドによる最初のヘッドマウントディスプレイなどの、初期のVRの実験からスタートした。1980年代から90年代にかけ、VRはVPLデータグローブや初期のゲーム用ヘッドセットなどの機器でさらなる発展を遂げたが、ハードウェアの制約が普及の足枷となっていた。

2000年代初頭、モバイル機器の進歩に牽引されARが普及し始めた。2013年のGoogle Glassのリリースと2016年のポケモンGOの世界的な成功は、ARを日常的に使用することの可能性を示した。同時にOculus Rift、HTC Vive、PlayStation VRでVRが復活を遂げ、没入体験を消費者にもたらした。MRは2016年にMicrosoft HoloLensでシーンに登場したもので、現実とデジタルの世界を融合させ、よりインタラクティブな応用を実現する。

2020年代には、さらに強力なプロセッサー、AIと空間コンピューティングによって、XRテクノロジーが急速な進歩を遂げる。現在はMeta Quest 3Apple Vision ProHoloLens 2といった機器が、フルカラーによるパススルー、高度なトラッキング、仮想環境と現実環境のシームレスな統合を提供している。こうしたイノベーションは業界全体におけるXR導入を促し、設計と連携、そして人々がデジタル世界や物理世界とどうインタラクションするかに革命をもたらす。

XRテクノロジーの基本

ヘッドセット、ハンドコントローラー、ハプティクスデバイスはXR体験を提供するための強力なソフトウェアツールと組み合わせて使用されることが多い
ヘッドセット、ハンドコントローラー、ハプティクスデバイスはXR体験を提供するための強力なソフトウェアツールと組み合わせて使用されることが多い

XRは、デジタルと物理の両世界の相互作用を可能にする、技術的に進歩したハードウェアとソフトウェアに依存する。

ハードウェア

XRテクノロジーは、ヘッドセット、スマートグラス、ハプティクスデバイスなどの先進のハードウェアを使用して没入型体験を作り出す。Meta Quest 3やApple Vision Proなどのヘッドセットは、強力なプロセッサー、高解像度ディスプレイ、完全バーチャル環境向けモーショントラッキングを備えており、多くの場合、内蔵カメラを使用して内側から外側をトラッキングする。Microsoft HoloLens 2などのスマートグラスは、デジタルコンテンツを透明なレンズ、カメラ、深度センサーにより自然界にオーバーレイし、インタラクティブなAR体験を実現する。ハプティクスグローブやコントローラーなどのハードウェアが触覚フィードバック、また空間オーディオシステムが3Dサウンドスケープを提供する。これらはXR応用の没入感を多くの業界で高めるものだ。

ソフトウェア

XRテクノロジーは、一体感のある没入体験を生み出すための強力なソフトウェアプラットフォームとツールに依存する。UnityUnreal Engineは、リアルタイム3Dレンダリング、ハンドトラッキング、インタラクティブなコンテンツ制作をサポートする重要な開発プラットフォームだ。Microsoft MeshMeta Horizon Workroomsのようなコラボレーションツールは、イマーシブ空間でのバーチャルミーティングやチームワークを可能にする。ARでは、GoogleのARCoreとAppleのARKitが、モバイル機器を使用して現実環境にデジタルコンテンツをオーバーレイするフレームワークを提供している。これらのソフトウェアソリューションはXRの基盤であり、ゲーム、AECO、教育、医療、その他の業界にわたってイノベーションを推進している。

オートデスクは、AECOや製品設計製造 (PD&M) などの業界に合わせたXRソリューションを提供している。没入型のデザインレビューを促進するAutodesk Workshop XRは、チームはVR内で3Dモデルを1/1スケールで操作してコラボレーションと意思決定を向上できる。Autodesk VREDは、特に自動車設計でのVRやARによるバーチャルプロトタイプにおける、ハイエンドなビジュアライゼーションに対応している。

XRのインダストリーへの応用

自動車のプロトタイピングはクレイモデルからデジタルプロトタイピング、XRレビューへと進化している
自動車のプロトタイピングはクレイモデルからデジタルプロトタイピング、XRレビューへと進化している

XR技術の最も有望な応用例に、精密なビジュアライゼーションと調整に重点を置く設計製造分野がある。

建築、エンジニアリング、建設、運用 (AECO)

XRは、AECO業界では建設計画とデザインレビューを最適化している。Autodesk Workshop XRなどのソリューションにより、チームは1/1スケールの3Dモデルに足を踏み入れ、問題を早期に発見して、より良い設計の決定を行うことができる。またXRは仮想環境でプロセスを可視化し、連携を向上し、コストの高い施工中のミスを減らすことで建設計画を強化する。

製品設計・製造 (PD&M)

PD&M業界では、XRはプロトタイピングを加速し、組立とメンテナンスを最適化する。バーチャルプロトタイプは物理モデルの必要性を減らし、製品開発をスピードアップする。XRはまた、デジタルでの指示を実際の機械にオーバーレイし、複雑な作業をを行う作業者を正確に誘導してミスを最小限に抑え、ダウンタイムを短縮する。

メディア&エンターテインメント (M&E)

XRはメディア&エンターテインメントの発展を推進し、ゲーム、ストーリーテリング、ライブイベントにおけるイマーシブ体験を創造している。仮想現実と複合現実により、オーディエンスは豊かでインタラクティブな環境を探訪し、デジタルキャラクターとリアルタイムで関わり合うことができ、新しいクリエイティブな可能性とより深い関与をもたらす。

業務におけるXRの利点

VRは工場の組立ラインの安全性や効率性をレビューするのに最適なツールだ
VRは工場の組立ラインの安全性や効率性をレビューするのに最適なツールだ

XRによりプロフェッショナルがイマーシブ環境で3Dモデルを視覚化して操作でき、設計の精度と創造性を高めることができる。デザイナーやエンジニアは、複雑な構造物を1/1スケールで検討し、従来の画面上では捉えにくい空間関係や設計要素を、より正確に理解できる。XR環境におけるリアルタイムのフィードバックは、即座の調整とイテレーションを可能にして、創造性と革新性を育む。バーチャル空間でデザインを試行錯誤できれば、より効率に優れたワークフローが実現し、またコストが嵩みがちな物理的な生産および建設段階での修正を低減できる。

XRはシームレスなリモートコラボレーションも促進し、チームは仮想環境上でどこからでも一緒に働くことができる。これは、チームメンバーがさまざまな地域に分散しているグローバルな業界では特に有益だ。プロフェッショナルは移動することなく、共通のバーチャル空間でミーティングを行い、プロジェクトについてリアルタイムで議論し、十分な情報に基づいた意思決定が行える。XRのイマーシブトレーニング環境はまた、安全かつリアルなシミュレーションを提供し、作業員を危険に晒すことなく複雑なタスクやシナリオを練習するのに役立つ。これは建設、製造、医療といったリスクの高い産業における安全性の向上、効率の改善、備えの強化につながる。

XRの今後の動向とイノベーション

Fortune Business Insightsは、世界のXR市場が2024年の1,839億6,000万ドルから2032年には1兆7,069億6000万ドルまで成長し、年平均成長率 (CAGR) は32.1%となると予測しており、VRやARといったXR技術が世界経済にもたらす変革的な影響を強調している。

AIや機械学習、ハードウェア、クラウドコンピューティングの進歩により引き起こされる絶え間ない技術革新が、この経済上昇の原動力となるだろう。ユーザーのニーズに適応し、行動を予測し、創造性と意思決定を促進するリアルタイムな知見を提供するXR環境を想像してみて欲しい。軽量でパワフルなヘッドセットが、物理世界とデジタル世界の間のシームレスなやり取りを可能にし、イマーシブ体験を提供する。クラウドコンピューティングが可能にする複雑なシミュレーションや、高価なローカルハードウェアを必要としない遠距離のリアルタイム連携が可能となる未来。こうした進歩により、XRは最前線へと押し上げられ、より利用しやすく汎用性に優れたものとなって、プロのワークフローにシームレスに統合され、業界全体への影響力を高める。

XRの課題と検討事項

XRハードウエアとソフトウエアはますます手頃になっているが、この技術を日々のワークフローに組み込むための学習曲線は険しい
XRハードウエアとソフトウエアはますます手頃になっているが、この技術を日々のワークフローに組み込むための学習曲線は険しい

XRの導入には課題もあるが、最近の進歩により、この技術はさらに身近なものとなった。Meta Quest 3などの機器の販売価格は現在500ドルを下回り、XRハードウェアはあらゆる規模の企業にとって、さらに利用しやすくなってきている。だがXRツールに関連する学習曲線や、従来のワークフローから逸脱することへの消極的な姿勢が、進歩の妨げになる恐れはある。XRのポテンシャルを開花させるためにも、企業はトレーニングとテクノロジーに投資するべきだ。また、特にデータのプライバシーや倫理的な使用に関して、イノベーションとユーザーの権利のバランスを取ることも重要だ。XRが業界に革命をもたらしているが、今後の発展には、責任ある導入とユーザーの利益の保護が不可欠となるだろう。

XRはどう世界を変えるのか

XRは、プロフェッショナルによる新次元のクリエイティビティ、連携、トレーニング、問題解決に役立つ。その可能性を最大限に活用するため、企業は変化を受け入れ、進化するツールに適応し、デジタルトランスフォーメーションの新時代をリードする準備を整えなければならない。今XRを採用する企業は業界を再構築することになる。そして、物理世界とデジタル世界の境界がますます曖昧になる中、設計、製造、連携の未来を定義する一助となるだろう。

本記事は2022年4月に掲載された原稿をアップデートしたものです。協力: ジェフ・リンク

著者プロフィール

ジョン・ホームズはSEOとオウンドメディアに注力するオートデスクのコンテンツマーケティング スペシャリスト。デトロイトを拠点とする彼はコピーライターを生業とし、詩人、哲学者でもある。簡潔でパンチがあり、説得力のある文章を得意としている。オートデスク入社以前はデジタル住宅ローン会社、AIスタートアップ企業、SAAS製造アプリなどのエンゲージメントとコンバージョンを推進。朝の瞑想とヤマブキシイタケ、長距離ジャンプショットをこよなく愛する。

Profile Photo of Jon Holmes - JP