移動手段を向上させる世界の交通インフラプロジェクト9例
2019年は世界のインフラプロジェクトにとってエキサイティングな年となりそうだ。2018年12月、米国DOT (運輸省) は国内91のインフラプロジェクトに資金を提供する、総額15億ドル (約1,640億円) の助成金プログラムを発表 (英文情報)。このニュースは、これ以上ないほどタイムリーなものと言える。米国土木学会 (ASCE) による2017年のインフラ通知表では、米国の総合成績はDプラス、輸送はDマイナスとなっており、「世界経済における米国の競争力はインフラの劣化が妨げとなっており、将来への確実な対応には、その向上が必要不可欠」だと強調されている。この記事では世界各地の、大規模かつ複雑で刺激的な交通インフラプロジェクトを紹介しよう。
1. 老朽化する交通インフラの抜本的整備に取り組むレバノン
世界銀行は、レバノンの広域ベイルート圏公共交通機関プロジェクト (Greater Beirut Public Transport Project) に対する2億9,500万ドル (約323億円) の助成パッケージを承認した。レバノンが交通網プロジェクトに着手するのは数十年ぶりのことで、この最新プロジェクトでは北部地域からベイルートへの新たなバスルートを導入することで、国内の交通インフラが整備される。このプロジェクトにより、技術訓練を受けていない低所得層のレバノン人およびシリア人作業員に対して200万日分の労働機会も創出される。
2. アラブ首長国連邦の鉄道プロジェクトが復活
Etihad Railはアラブ首長国連邦の国内鉄道ネットワークのデベロッパー兼オペレーターだ。2018年11月、同社は2016年から保留されてきた総工費110億ドルの交通インフラプロジェクトが、第2フェーズの資金融資を獲得したと発表 (英文情報)。これにより国内に、約1,200㎞に及ぶ新規鉄道網が延長され、物資の輸送量が700万tから5,000万tに増加すると予想されている。
3. 近隣諸国からの輸出ルート開拓を目論むナイジェリア
ナイジェリアは、内陸の隣国ニジェールからの輸出ルート開拓を期待して248㎞にわたる鉄道路線を建設中だ (英文情報)。主要部分の建設に対してChina Civil Engineering Construction Corporationに66.8億ドル (約7,305億円)を提供。ロティミ・アマエチ運輸大臣は、ニジェールの輸出ルートをナイジェリアのラゴス経由で開拓することで、近隣のライバル港であるベナンやトーゴ、ガーナを引き離すことを目標としている。この経路は、ニジェール第3の大都市、マラディに新設予定の石油精製所にも貢献する。
4. パキスタンが現代化に向けた中国と連携
中国-パキスタン経済回廊 (CPEC) は最新の交通網、数々のエネルギープロジェクト、経済特区の建設などを含む620億ドル (約6.8兆円) 規模のインフラ プロジェクトによって、パキスタン国内のインフラの迅速な近代化と経済の強化を目指している。建設中の高速道路の一部は、ビデオで観ることができる。
5. オアフ島の交通渋滞緩和を試みるハワイ
ハワイは米国で唯一、2018年に交通インフラプロジェクト対象の助成を受けなかった州だが、83億ドル (約9,076億円) をかけた鉄道プロジェクトが現在も建設中だ。ホノルル鉄道輸送はハワイ史上最大の公共事業プロジェクトで、悪化するオアフ島の交通渋滞の緩和を目指している。2018年に予定されていたプロジェクトの完成は2020年に延期され、現在のスケジュールでは早くとも2025年になる。
6. カリフォルニア州の高速鉄道プロジェクトが着工
総工費1,000億ドルのカリフォルニア州の高速鉄道がついに着工した。このカリフォルニア州の南北を結ぶ鉄道は、最高時速354㎞。2033年に全路線が完成すれば、年間乗客数は3,000万人を超えると予想されており、約643㎞のサンフランシスコ、ロサンゼルス間を3時間足らずで結ぶ。
7. 北京に世界最大の空港が建設中
中国は、世界最大の航空旅行市場である米国を2022年までに追い抜くと予想されている。この成長を踏まえ、中国政府は2020年末までに国内74空港の建設、拡張を計画。その中でも最大のプロジェクトが、総事業費115億ドル (約1.3兆円) の北京大興国際空港だ。故ザハ・ハディド氏のデザインによる巨大なハブ空港は最終的には7本の滑走路を有し、年間62万回のフライトと1億人の乗客に対応できする。
8. 日本が世界最速の電車を建設中
磁気浮上式の新路線となる日本の中央新幹線は、東海道新幹線のバイパス路線でもある。東京-名古屋間286kmを40分で結び、両都市間の移動時間を既存の鉄道の半分未満に短縮。この1都6県を結ぶルートは最高時速500㎞で走行できるよう設計された、世界最速の電車となる。第1フェーズの総事業費は5.4兆円で、2027年に開業予定だ。
9. ヨーロッパ最大のインフラ プロジェクトがロンドンでスタート
総工費190億ドル (約2兆円) となるロンドンの地下鉄道システム、クロスレールプロジェクトのトンネル総延長は41.8㎞に及び、40駅が結ばれる。エリザベス線のルートはヒースロー空港やカナリーワーフなどの主要エリアを結ぶもので、ロンドンの慢性的な渋滞の緩和に役立つ。当局は新路線に年間2億人の利用者数を見込んでおり、この路線によってロンドンの線路容量は10%増加する見込みだ。新路線は2019年秋に開業予定。