太陽光発電建築を不格好な後付けでなく美しいデザインにする5つの方法
ソーラーパネルを「魅力的だから」という理由で屋根に取り付ける人はいないだろう。少なくとも今のところは。
ワイオミング大学の Building Energy Research Group (UW-BERG) で准講師を務める建築家のジョン・ガードゼレウスキ氏は、この状況を変えたいと願っている。住宅やビルへのソーラーパネル設置が一般的になるためには、ビルのデザインに対して後付けされているのが大きな障壁だと考えているのだ。
「最大の障壁は経済面であり、その次が景観です」と、ガードゼレウスキ氏。太陽光発電がリスキーでコストのかかる拡張機能でなく標準的な建築デザインになるには、この 2 つが障害だと言う。
ソーラーパネルは、経済的にはさまざまな面を持っている。まずコストとリスクの認識の面があり、次に「グリーンカラー」(環境産業) における雇用創出など経済にも、より大きな影響がある。ソーラーパネルを設置することで、住宅の売却価格に悪影響が出ると考える人もいる。ガードゼレウスキ氏が話した鑑定人は、「住宅にソーラーパネルが設置されていても、査定上は何の付加価値も加えません。ソーラーパネルの有無で査定は変わりません」と述べたという。査定業界でソーラーパネルの価値の評価が定まっていないため、住宅所有者には、ソーラーパネルを設置することで、家屋の価値を逆に低下させるのではと危惧している人も多い。実際には、購入者の光熱費の節約につながる可能性もあるのだが。
ご存知のように、ソーラーパネル設置の初期費用は非常に高い。ガードゼレウスキ氏は、パネル自体の実売価格は劇的に低下しているので、ソーラーパネルの設置コストがこれほど高価なまま維持されるべき理由はないと主張している。「設置業者は、ソーラーパネル設置の見積価格を提示する際、本来かかるであろう費用や必要な費用より、ずっと高額の費用がかかると話すでしょう。パネル自体が占めるコストは、総額のごくわずかに過ぎなくなっています」。
ソーラーパネルの設置が相変わらず高額である理由のひとつは、施工会社がソーラーパネルの全面的な採用に至っていない点にある。「ソーラーパネルが住宅業界に浸透すれば、施工会社もソーラーパネルの設置を厳しく管理するようになり、人件費も低下するでしょう」と、ガードゼレウスキ氏。「ソーラーパネル設置のコストと労働力が管理されれば、価格高騰の余地もなくなります」。
石炭産業が盛んな州では、太陽光エネルギーの拡大が経済に悪影響を与え、雇用を奪うという懸念もある。だが、ガードゼレウスキ氏は異論を唱える。彼は、これまで続いてきた石炭産業におけるブルーカラー雇用が、今後長く続く太陽光発電産業のグリーンカラー雇用に成り得ると考えている。
「この社会の善良な、地の塩とでも言うべき人々は、大抵は伝統を世代から世代へと伝えてきた人たちです」と、ガードゼレウスキ氏。「だからこそ私たちは、太陽光発電産業の新しい伝統と新しい職場環境の創出に取り組む必要があるのです」。
さらに多くのグリーンカラー職が登場することを期待しよう。サンフランシスコでは現在、新築のビルの屋上にソーラーパネルを取り付けることが義務付けられており、カリフォルニア州議会上院議員であるスコット・ウィーナー氏は先日「カリフォルニア州を、新築ビルにソーラーパネル設置を義務付ける米国初の州にする」法案を提出したと Medium にポストしている。
だがソーラーパネルを使用することへの抵抗は、経済的な障壁以外に見た目が理由の場合もある、とガードゼレウスキ氏は話す。現在、ソーラーパネルは後付けでデザインに組み込まれることが多く、それがソーラーパネルの設置が目障りなものだと解釈されやすい理由になっている。「一般住宅にソーラーパネルを取り付けた場合はもちろん、ゼロエネルギー住宅であってもソーラーパネルは建築のデザインにマッチせず、良くない意味で目立ってしまいます」。
そこで、建築家であり研究者でもあるガードゼレウスキ氏と他の UW-BERG メンバー (アンソニー・デンザー博士を含む) は、建築家やデザイナーが建築の初期段階でソーラーパネルを積極的に組み込めるよう支援する分類体系を考案した。こうすることで、パネルは不格好な視覚上の障壁ではなく、住宅の特徴のひとつになることができる。ソーラーパネル浸透のための BERG の建築学的分類体系は、次の 5 つのストラテジーから構成されている。
1. 視認性
ビル システムの仕組みが理解できるよう、ビル システムを可視化し、世に知らせること。これは、ビルの「内臓」を露呈させた状態のインダストリアルな外観となる。この枠組みにおいて、内部構造や配線、構造、ソーラーパネルの接続が可視化されることで、インダストリアル デザイン全体にうまく調和する。
2. 材料の平面
ヘリット・リートフェルト氏のシュレーダー邸、ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ氏のバルセロナ・パビリオンが、平面構成に重点を置いた 2 つの例に挙げられる。バルセロナ・パビリオンの例では、ミースは平面構成を使用し、ガラスや大理石、オニキス、トラバーチンといった材料の豊かさを賛美している。このストラテジーでは、ソーラーパネルの材料的側面も示される。「クリスタルや配線など、ソーラーパネルの複雑性に目を向けるのは非常に楽しいことです」と、ガードゼレウスキ氏。
3. 形態は従う
「形態は機能に従う」主義に由来するこのコンセプトは、その形態を太陽の軌道に合わせて変化させるビルの設計を意味している。このストラテジーは、多数のソーラーパネルを最適な形 (屋根の南側に水平または垂直に広がる形) で配置するためにデザインを変更する際に、最良の選択肢となる。「ソーラーパネルは 1 m x 1.7 m の大型モジュールで、それが屋根のサイズに大きく影響する場合があります」と、ガードゼレウスキ氏。このモジュールがフィットするよう屋根をデザインすることで、実際のソーラーパネルの設置をより簡単で効果的にするだけでなく、外観もはるかに優れたものとなる。
4. 日よけ
ソーラーパネルは、ビル自体や隣接の野外スペースに日陰を提供できる。この手法は、既存の屋根がソーラーパネルの設置に適していない場合に優れた解決策となる。「外部構造を構築し、既存の屋根には連結しない空間である囲みの玄関ポーチを伸ばせば、これを使用して外部の小さな空間に日陰を作ることができます」と、ガードゼレウスキ氏。「この新しいエリアにソーラーパネルを追加すれば、完全に独立した構造となるため、屋根の残り部分に一体化させる必要がなくなります」。
5. 扮装
このアプローチでは、ソーラーパネルは構造上のテクニックや革新的なデザインにより、目に付かない形にされる。このストラテジーは、「形態は従う」ストラテジーと連動させた使用に最も適している。ソーラーパネルのサイズと形状に合わせてデザインされた建築は、パネルを隠すのに最適だからだ (テスラのソーラールーフのように)。「ソーラーパネルを屋根と完全に一体化させ、その下のインフラが露出しないよう浮かせる、もしくはフレームに入れることができれば、見えるのは反射ガラスだけです」とガードゼレウスキ氏。
ソーラーパネルが平均的な中流家庭や労働者階級家庭に普及する経済的均衡を得るまでには、まだ時間がかかるかもしれない。だが建築家は、ソーラーパネルをデザイン段階に統合する BERG の建築分類体系を組み込むことは、すぐに行える。たとえクライアントが今すぐ太陽光を設置するつもりでなくても、この分類体系は、住宅やビルの所有者がソーラーパネルを今後より景観に配慮した形で組み込む手助けとなる。また、ビルデザインに影響する初期段階の制約事項としてソーラーパネルを検討することにより、ソーラーパネルが当たり前になる時代の到来を誘導できるかもしれない。