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磁気浮上式鉄道により全速力で駆け抜けるドイツの企業

中国行きの飛行機に積み込まれる Max Bögl TSB の車両
TSB シリーズの最初の製造車両は 2020 年 6 月初旬に中国へと輸送された。軌道は電車でアジアへと運ばれている。[提供: Firmengruppe Max Bögl]

30 t もの車両が磁力によって浮上し、時速 160 km を超えるスピードで進むだけなら、驚かないかもしれない。では、この磁気浮上式鉄道が、ウクライナの貨物輸送機に乗せられ、地上 8,000 mの高度でドイツから中国へ飛行したら、どうだろう?

ドイツの建設/インフラ企業 Max Bögl は、それを中国のパートナー企業 Chengdu Xinzhu Road & Bridge Machinery Co. Ltd. と実現したところだ。

この Max Bögl は、磁気浮上技術 (マグレブ) で、公共交通機関の未来に大きな改革ももたらしている。

max bögl tsb 磁気浮上 テスト軌道
Max Bögl はドイツ南東部で磁気浮上技術の開発、検証を実施。このシステムは電車および飛行機のカテゴリーで 2020 年度 Red Dot Design Award を受賞している。[提供: Firmengruppe Max Bögl]

商業磁気浮上式鉄道、上海トランスラピッドへの軌道供給の実績を持つ同社は、完全自動化された新しい都市型モビリティ ソリューション、Transport System Bögl (TSB) のデザインを行った。

現在、ヨーロッパでフィージビリティ スタディ (実行可能性調査) が行われているが、このシステムの車両は既に中国でデモンストレーション中だ。

TSB でプロダクトマネージャーを務めるアンドレアス・ラウ氏は「このマグレブ トレインが公共交通機関の未来に革命をもたらすだろうと確信しています」と話す。「環境面でのサステナビリティとコスト効率に優れた交通システムを、軌道、車両、運用テクノロジーの完全なパッケージで提供可能となりました」。

マグレブの使命: 適応性に優れた、サステナブルな統合テクノロジー

Max Bögl によれば、 TSB とトランスラピッドには重要な違いがある。まず、TSB は単一のソースから提供される完全統合パッケージだといういう点だ。Max Bögl は、プランニングから車両の製造、現地での組立、システム運用まで、すべてを含むフルサービスのソリューションをカスタマーに提供することを目指している。

トランスラピッドが速度重視であったのに対して、TSB は人口の密集した都市部で将来まで使われる公共交通機関の提供という、複雑な目標を持ってデザインされている。

その速度は時速 150km と劣ってはいるが、TSB は騒音や振動をほとんど発生せず、静音性に優れている。自由度も高く、さまざまな都市景観で機能させることができ、高架、地上、地下のいずれにもインストールが可能だ。

磁気浮上 Max Bögl テクノロジー
軌道はコンクリート製で、車両の台車とともに Transport System Bögl を構成する [提供: Firmengruppe Max Bögl]

こうした適応性は、精密なインフラ デザインにより実現している。TSB の台車は内側からレールに接するようになっており、磁力でわずか 6 mm ほど浮上。軌道を極めてスリムに敷設できるため、空間に限りのある都市部に最適だ。

こうした TSB の洗練されたテクノロジーは、路線の安全性と効率性の両方を高めている。「従来の交通機関システムに比べて、非常に優れています」と、ラウ氏。ヒューマン エラーのないドライバーレスの自動運転と磁気浮上技術の利点を組み合わせることで、従来の車輪鉄道システムに比べて 20% のランニングコスト削減を実現。「TSB は需要に合わせて運行スケジュールを決めることができるため、オフピーク時や地方における空車での運行を回避できます」と、ラウ氏。

車両はほぼ摩耗無しに走るため、コスト効率はさらに高くなる。路面電車などの車輪と線路とは異なり、TSB では軌道と台車は接触しない。また、軌道側ではなく車両側に短い固定子を使用するため、固定子とその他の要素も接触しない。

TSB は理想的なソリューションのように思えるが、交通機関の業界でこれほど根本的な変更を実現するには説得力が必要だ。

Max Bögl は、見込み客をこの新技術へ引き込むため 3D モデルを活用している。「プロジェクトの開発段階においては、ビジュアルを用いた説明が非常に重要です」と、ラウ氏。Max Bögl は、InfraWorksCivil 3DNavisworksInventor といった Autodesk ソリューションを活用し、プロジェクトの各エリア向けに TSB の 3D ビジュアライゼーションを作成している。

「各ルートで軌道がどのような形を取るのかをリアルに説明するため、460 R のカーブや 10% の勾配を Autodesk ソフトウェアとカメラトラッキングのショットで説明しています」と、ラウ氏は話す。Max Bögl のエンジニアたちはAutodesk Consultingとのコラボレーションにより、2 次元図面ででなく 3D ビジュアライゼーションを活用して、作業プロセスの効率を向上できた。

磁気浮上 テクノロジー Max Bögl 実験 軌道
ドイツ南東部のバイエルン州に設置された全長約 800 m の実験走行用軌道を上空から見た様子。中国でのデモンストレーション用軌道は 3.2km を超える。[提供: Firmengruppe Max Bögl]

初めてのデモンストレーション用軌道の建設

Max Bögl の次のステップは、TSB のコンセプトに命を吹き込むことだ。中国の現地で、このシステムのパワーを地元の顧客に納得させるべく、ドイツ企業である Max Bögl と中国のパートナー企業 Chengdu Xinzhu Road & Bridge Machinery Co. Ltd. は 中国南西部の四川省に、TSB が時速 160 km に到達できるような、全長 3.5 km の、デモ走行用軌道を建設。

Max Bögl のドイツ本社は、プレキャスト コンクリート製で長さ約 12 m の軌道部分を連続生産しており、車両の製造も行う。軌道部分はコンテナに載せられ、鉄道により新シルクロード経由で中国へと輸送された。また、車両は中国のデモ軌道へ空輸されている。2019 年 10 月に部分的な許可を取得しており、間も無くフル営業が始まる予定だ。

その一方でドイツ連邦交通デジタルインフラ省 (BMVI) は TSB のミュンヘン空港への導入についてフィージビリティ スタディを行っている。これが、ドイツ全土への展開に向けた将来的な基盤を提供する。既にベルリンドイツ最北のシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州、ミュンヘン近郊エリアでのプロジェクトについての議論が進行中だ。ドイツにおける磁気浮上式鉄道の未来は、2021 年 1 月に発表される調査結果で明らかになるだろう。

著者プロフィール

フレデリカ・フォークトはオートデスクのコンテンツマネージャーでRedshiftのEMEA担当者。メディア管理と芸術史を研究し、ジャーナリズムの奨学金を受けて「German Press Agency (dpa)」「Cicero Magazine」などの新聞や雑誌の仕事をしていました。

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