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環境認証を通じてイズミシステム設計が目指すサステナブルな建物

イズミシステム設計 環境 認証

1973年に設立されたイズミシステム設計は、設備設計、建築物や設備の省エネ性を示すPAL/CEC計算、ソフトウェア・パッケージ販売を行う会社としてスタート。大きなエネルギーを扱う設備の設計と、その省エネ計算を行う中で、早い段階からサステナビリティを意識してきた。

大手設計事務所で環境に配慮した設備設計を行ってきた経歴を持つ小池康仁 代表取締役は、2005年にイズミシステム設計へ入社後、より環境へ配慮する方向に方針を移行。日本でもCASBEEなど省エネを格付けする仕組みが確立されたこともあり、環境に配慮した設計をサポートする会社へとシフトしてきた。「当社のビジネスの中では省エネ計算が7割以上を占めているのですが、単に計算を代行するのでなく、良い建物を世の中に残していきたいという理念を持っています」。

建築物の環境認証は1990年代以降、英国発のBREEAM、米国発のLEEDやENERGY STAR、日本ではCASBEEなど、世界各国でさまざまな制度が開発されてきた。とりわけ米国USGBCが開発するLEEDはグリーンビルディング評価システムとして世界で最も広く利用されるようになり、イズミシステム設計にも2012年ごろから問い合わせが増えてきたという。

イズミシステム設計 高崎オフィス 環境 認証
高崎オフィスの外観 [提供: イズミシステム設計]

「我々の顧客は主に設計事務所、ゼネコンの設計部になりますが、その先の施主さんが一番必要を感じていたと思います」と、小池氏は当時を思い起こす。「特に外資系の企業は、日本で入居する際にLEED認証が取れているビルを希望されることが多かったようです」。そうした要望を受け、同社はLEED業務を扱えるような体制の整備に取り掛かる。

日本でLEED普及を推進するグリーンビルディングジャパンも、その当時は、まだ設立準備の段階。さまざまな資料や試験も英語で提供されており、「まず英語も勉強しなくてはいけないと、週2回、会社に英語の先生を呼んで英語の勉強をしました」と、小池氏。グリーンビルディングの原則と実践を理解するLEED GA (グリーンアソシエイト) 資格の取得から始め、現在は小池氏を含めた4名がLEED AP (認定プロフェッショナル) 資格を所有する。

自社オフィスにさまざまな認証を取得

同社高崎オフィスは、天井高6mの広々とした建物内に各エリアが作られ、海外の企業を思わせるようなオープンな雰囲気が特徴になっている。高崎オフィス長の岩丸 淳 執行役員は、「システム部で開発したソフトを使って、業務部で省エネ計算などを行っているので、両部署が同じ空間で仕事ができるテナントを探しましたが、高崎市内ではなかなか見つかりませんでした」と語る。「そこで、もともとは倉庫として使われていたビルへ入居しました」。

高崎オフィスのエントランス [提供: イズミシステム設計]
 
LED 照明を採用し、昼光の影響も制御できるレセプション スペース。[提供: イズミシステム設計]
 
明るく、開放感のあるオフィス エリア [提供: イズミシステム設計]

その後、社員数の増加などを受けて2014年に大規模な改修を実施。既にCASBEE (不動産) で最高のSランク、BELS (建築物省エネルギー性能表示制度) で☆☆☆☆ランクを取得していた同社は、次のステップとして自らLEED-CI(v2009)の認証取得を目指す。そして節水器具の導入による水使用量の削減、太陽光の利用とLED照明などによる照明エネルギーの削減、FSC認証木材の利用、低VOCの塗料・接着剤の使用など様々な取り組みを実施。この内装設計・工事に関わる認証カテゴリーで、同年にゴールド認証を取得している。

2019年のLEED再認証に際しては、取得する認証システムをO+M (既存ビルの運用とメンテナンス) に設定。同社東京建築環境事業本部 環境コンサルティング部の渡部まき氏は「O+Mでは、実際に使ったエネルギー量や水の量、廃棄物の達成度やリサイクル量などを入力して、他の建物と比べたパフォーマンスが評価されます」と述べる。「高性能な照明器具や空調器具を入れていても、ビルが適切に管理されていないと、その建物の性能が生かせない。O+Mは、建物の管理の部分も評価するものだと考えています」。

従来、建物のパフォーマンスの評価にはさまざまな書類審査があり、非常に煩雑な作業が必要だったが、今回の認証ではARCを活用。このプラットフォームはLEED認証建物のパフォーマンスデータを入力・保管・管理できる。エネルギーや水、廃棄物の量、室内空気質などのデータの入力や、自動集計できる居住者アンケートなどをもとにスコアを生成するもので、準備が大幅に簡略化されるという。

「ARCでは、電気会社やガス会社、水道会社の伝票を1カ月ごとに1年間入力して、廃棄物も業者に出した量とリサイクル量を入力するだけです」と、渡部氏。「交通と室内環境の建物利用者の満足度は、システムから建物使用者にアンケートのリンクを送ることができ、そこに通勤の方法や時間を入れると、CO2排出量などが自動的に算出されます。建物や室内環境の満足度も、非常に簡単な軸で入力したものから判断されて、他の類似した建物と比較して点数が決まります」。

小池康仁 代表取締役 (設備設計一級建築士、LEED AP/中央)、岩丸 淳 執行役員 (高崎オフィス長、一級建築士、CASBEE建築/不動産評価員/左)、渡部まき 東京建築環境事業本部 環境コンサルティング部 渡部Gr.リーダー (一級建築士、ASHRAE BEMP、LEED AP、CASBEE建築評価員) の3氏。

ARCでは、エネルギー、水、廃棄物、交通、ヒューマンエクスペリエンスの5項目が全て集約され、その評価を公開することも可能。2014年の改修時の節水器具やLED照明の導入に加えて、太陽光発電の導入時の折板屋根の二重化などによる屋根温度の抑制、エントランスを西側に大窓を備えたアトリウムにするなど、さまざまなノウハウが生かされた設計と運用が奏功し、プラチナ認証の取得が実現した。

建物の設備そのものから運用の時代へ

小池氏は、このところ建物使用者の意識も変わってきていると述べる。「以前は省エネとは、電気代を安くしたいということでした。でも世界中の共通言語とも言えるようなサステナブルという言葉が使われるようになり、持続可能な社会にしていきましょうという意識が、これまで以上に生まれていると思います。最先端の環境認証に取り組むことは、会社の方針の対外的なアピールや社員の教育になるほか、事業化の一環にもなります」と、小池氏。

現在、イズミシステム設計ではLEED認証取得を希望する顧客に対して、申請書類の作成、審査機関対応から認証取得まで、一貫したコンサルティングを行っている。「LEEDの登録数、認証数は国内でも順調に増えており、弊社でも昨年の後半から引き合いが増えています。また、BELSやCASBEEなどの認証の依頼も、すごく増えてきました」と、渡部氏。こうした傾向の背景には、不動産投資信託 (REIT) などによる資産運用で、建築物の環境性能がより重視されるようになったこともあると、岩丸氏は述べる。

同社はAutodesk Revit用のアドオンを提供しており、さらなる業務効率化を目指して開発を継続している。その背景を、小池氏は「自分の設備設計の経験からも、設備は作ることでなく使っていくことが重要で、より良い状態で使うということが大切だと思っています」と語る。「そのために基本設計から維持管理まで、Revitを一貫して使えるようにするという方針に共感しました」。

「建築設計は、意匠、構造、設備の3つの部門で語られてきましたが、そこに環境という分野を作りたいと思っています」と、小池氏。「建設と設備の間に位置するような、環境に関する仕事をやっていければと思っています」。

著者プロフィール

オートデスクのInternational Content Manager for APAC & Japan。「Design & Make with Autodesk」コンテンツハブの日本語版、韓国語版、中国語 簡体字版を担当。

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