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企業の存在意義を優先することで生み出すポジティブなインパクト

企業の存在意義

  • 企業の存在価値が重要である理由とは
  • パートナーやクライアントから見た存在意義
  • コミュニケーションによる継続的なフィードバックの獲得
  • パートナーシップで生み出すインパクト

大抵の企業は、世間から隔離された状態で誕生する。クリエイターとメイカーがニーズを見出し、その実現のため多数のステップを経た空間から生まれるのだ。だが時が経ち、スプレッドシートと収益へのフォーカスが強まることで当初の意図は曖昧になり、その存在理由を見失うことすらある。

私はオートデスクのCMOを務める中で、利益にとらわれた考え方しかできない企業は、顧客や人材の獲得と、それを維持する重要な機会を見逃すのだと理解するようになった。企業の存在意義は、成長を遂げ、成功するために必要な人々との、より良い関係を育成する機会にあるのだ。

リーダーシップのエキスパートとして著名なサイモン・シネック氏は「人々の購買意欲は“何を”ではなく、“なぜ”に動かされる」と述べている。ビジネスを成功させ、それを傑出したものとするには、“なぜ”を具体的に示し、それが利益のためだけのものでないことを明確にする必要がある。

信憑性のある存在意義を展開し、それを追求することは、顧客や社員、さらには世界全体との、より強力なつながりを築くのに役立つだろう。オートデスクも最近になって、会社としての存在意義を発展させるプロセスを経験している。この存在意義について考えてみよう。

存在意義の価値

存在意義は、なぜ重要なのだろう? その価値は? 利益を生み出して株主の期待に応えるだけでは、もはやブランドとして十分とは言えない。顧客やクライアント、社員が重視するのは、社会へどのような貢献をしているのか、この世界でどう役立っているのかになっている。社会的不平等の緩和に貢献しているだろうか? 環境問題やサステナビリティの問題への支援は? 社員やサプライチェーンに属するスタッフの待遇はどうだろう? 顧客への対応は十分だろうか?

企業の存在意義

企業にはかつてないほど高い基準が求められ、厳しい監視の目にさらされるようになった。そうした新たな責任基準を満たす好例に挙げられるのが、TOMSシューズやパタゴニアといったブランドであり、それは公正な労働と対価の還元を促進する両企業のビジネスで実証されている。両ブランドともシンプルで明文化された存在意義を掲げ、驚くほどの顧客ロイヤリティを獲得しているが、これに少なからず関係しているのが、両ブランドの存在意義主導型のアクションだ。

その会社の存在意義と価値観は、顧客の購入先決定に影響を与える。それはオートデスクが直接的に見てきたことでもある。オートデスクを選んだ顧客は、その理由に価値観の合致を挙げている。誰をビジネスの相手に選ぶのかが、自身のブランドに直接反映されると考えているということだ。価値観を反映した企業との協調を進めることで、影響を与えられる範囲は想定以上に広がり、膨大なオプションが開拓されることになる。

まずはフレームワークをデザイン

存在意義を定義、もしくは再定義するなら、まずはシンプルな問いに答えることから始めよう。「なぜ自分たちは存在するのか?」を自答し、それを異なるアングルから考察してみる。社員や顧客、パートナー企業に対して、インタビューやアンケートを行ってみよう。関係者全員が、極めて重要な情報を持っている。会社の存在意義がどう捉えられているかを尋ねることで、それが存在意義の核となる部分に磨きをかける手段になる可能性がある。

その際に実際の単語やフレーズを使って、企業のメッセージへどう反応するかを検証するのもいい。どれが印象的で、どれが平凡かを確認しよう。

オートデスクの場合は、自社の存在意義を進展させるプロセスの中で「弊社の役割は貴社のパートナーになることであり、ベンダーとして扱うことではありません。この言葉はどう響くでしょう? どんな意味だと思われますか?」と尋ねた。フィードバックの多くは「我々にとってパートナーシップとは、オートデスクが業界の躍進のために尽力することであり、我々もそこに協力するということです」というものだった。ベンダーは単なる契約を示すに過ぎず、案件が完了すれば別の仕事へと切り替えられてしまう。

パートナーやクライアントの言葉に耳を傾けよう。彼らはあなたの考えを意図通りに解釈しているだろうか? あなたの存在意義は、企業を10年、15年と支えるような息の長いものとなるだろうか? 存在意義が有効であるためには、絶え間ないコミュニケーションと、事業活動との関連性、そして何よりも真実味と信頼が重要だ。

一貫性:「発表したら終わり」ではダメ

重要なのは、コミュニケーションと、その継続的な実施だ。

これだという存在意義を確立した後、必要になるのは強力なコミュニケーション プランだ。情報発信にやり過ぎはないし、ここでは対話形式を採るとよいだろう。相手の反応に耳を傾け、意図がどう受け止められたのか、人々の心に響くものになったかどうかを知る機会を持つようにしよう。

情報を言葉にして公開するのもいい。まずは社員、次にパートナー、そしてより広い世界へと届けるのだ。存在意義と、その遂行のために企業が進めるステップを強化する、さまざまな手段を見つけよう。それはオンラインやバーチャル、対面のミーティングなど多彩な方法による、定期的で継続的なコミュニケーションであるべきだ。そして「発表したら終わり」にせず、最後までやり抜くことが重要だ。

企業の存在意義

そして初期段階と同様に、人々からフィードバックを得よう。社員やパートナー、株主に、彼らが感じた存在意義について話してもらうのだ。彼らの記憶に残るものになっているだろうか? この存在意義とそれに関する計画を全員が受け入れ、自分のものとして吸収するまで発信し続ける必要がある。

関連性: 効果を証明する

存在意義の宣言と、それが与えている影響の実証は全く異なるものだ。口先だけでなく、有言実行を始めるのはこの段階だ。実際の変化はどこに起きているのだろう? 企業の活動により、どのように具体的な効果がもたらされているだろう? 顧客に対する取り組みは、宣言された存在意義へ直接的につながるものになっているだろうか?

ビジネスとしての行動と宣言された存在意義の間に、直接的なつながりが必要だ。オートデスクは、人々が想像し、デザインし、より良い世界を作る手助けをするために存在している。オートデスクのソフトウェアは、人々がそれを実行することを可能にするものだ。

我々の立ち位置は、人々のパートナーだ。我々はパートナーシップを通じて、顧客が何らかの効果を生み出す手助けができると信じている。その好例と言えるのが、パートナー企業のひとつであるFactory_OSだ。

建設廃棄物は、世界の廃棄物の30%を占める。パートナーシップを結んだ時点で、Factory_OS は自社の建設廃棄物を大幅に削減したいと考えていた。オートデスクのテクノロジーの助力を得て、Factory_OSは廃棄物を30%から10%未満にまで削減。現在は、この数字を可能な限りゼロに近づけようと奮闘している。Factory_OSはこうしたインパクトを生み出し、廃棄物削減のサクセスストーリーを発信している。これはオートデスクも同じだ。

信頼性: 存在意義を受容し真摯に取り組む

企業のステートメントが単なるマーケティングなのか、それとも本気なのか。それを嗅ぎ分けることに、かつてないほど人々は長けてきている。信頼できる存在となる必要があり、その真実味が極めて重要だ。

企業の存在意義

例えば「二酸化炭素排出量削減は重要だと考えています」と言うだけはダメだ。それは誰でも言えることで、プレゼンのスライドに書くにはいいかもしれない。だが、その言葉を実際に行動に移せるようにするには、自身の行動を改め、どれだけ二酸化炭素排出量を改善できたかを追跡調査すべきだ。それによって自分の発言に忠実なのかどうかが明確になり、実際に変化を起こせた際には好ましい反応が得られるだろう。

結局のところ、企業の存在意義を意思と一貫性を持って実践することにより、これまでとは異なる企業や人材が実現する。目標は、自社を競合他社とどのように差別化するかにある。他社に簡単に取り込まれないよう、ブランドのペルソナをどうパーソナライズするかが重要なのだ。

本記事は2019年12月に掲載された原稿をアップデートしたものです。

著者プロフィール

リサ・キャンベルはオートデスクのCMOとしてビジネス、業界、マーケティング戦略を統括し、また現在と次世代のオートデスク顧客のブランドアフィニティとロイヤリティを促進する責任者も務めました。製造、建設、インフラストラクチャーのビジネス・業界戦略、デジタル市場戦略、ブランド構築、事業開発に関する幅広い知識を有し、ソフトウェア業界で25年以上のリーダーシップ経験を持っています。フォーチュン500企業と新興企業の両方で、リーダーシップ・チームと協力してブランドを変革し、新製品やビジネスモデルを市場に投入することに成功。OneTrustの現CMO。

Profile Photo of Lisa Campbell - JP