AU 2023: AIドリブンなクラウドプラットフォームが導くデザインと創造の未来
- デジタルの未来は、クラウドベースのプラットフォーム、シームレスに接続されたデータ、AIで構成される。
- 顧客の直面する課題に取り組み、それを機会へと変える手段として開発されたAutodesk AIは、仕事を行う方法を変革するパワーを持つ。
- 顧客のデータ活用法の再創造をサポートすることで、生産性が高いクリエイティブな環境で働き、より良い世界を実現するプロジェクトを提供する未来を実現。
デジタルの時代は、データの時代だ。さまざまなデジタルツールにより膨大なデータが生み出される一方で、データを移動することは時間とコスト、プロジェクトに携わる人々に摩擦を生じ、多くのリソースが浪費される。数多くの価値あるツールが使えるようになった一方で、その数が増えるほど時間は断片化し、そのデータも断片化する。小さいが重要な情報を巨大なデータから探す作業は、クリエイティブでも生産的でもない。
ラスベガスで開催されたAU (Autodesk University) 2023カンファレンスで、オートデスクのアンドリュー・アナグノストCEOは、今は「新たな時代の入り口 (Cusp Of New Era)」であると述べた。テクノロジーは、使うツールを変えるだけでなく、それを使う方法にもディスラプションを起こす。現在の作業方法にフィットする新たなテクノロジーを作り出すのでなく、新たなテクノロジーを活用するために作業方法を変える必要がある。
AU 2023で語られたデジタルの未来は、クラウドベースのプラットフォーム、シームレスに接続されたデータ、そしてAIの3つの要素で構成されている。ここでは、そのゼネラルセッションから5つのハイライトを紹介しよう。
1. AIによるビジネスのトランスフォーメーション
オートデスクの調査年鑑『State of Design & Make』の2024年度版特別編として制作されている「AIへのスポットライト」では、調査対象となった企業の77%が、今後3年間でAIへの投資を増やす予定だと回答した。今後2-3年でAIが必須のものになることに同意したリーダーは、実に66%に上る。
AUの冒頭で「AIについて語る段階から、それによってビジネスを変える段階になった」と述べたアナグノストCEOが発表したAutodesk AIは、AIに関する研究を最前線で行ない、AIと生成AIの最先端技術の進歩に貢献してきたオートデスクが、顧客の直面する課題に取り組み、それを機会へ変える手段として開発してきたものだ。そして、これは仕事を行う方法を変革するパワーを持っていると述べる。
Autodesk AIは、創造的な探求や問題解決を補完し、繰り返しのタスクを自動化してエラーを最小限に抑え、複雑なプロジェクトデータを分析して予測的な洞察を提供する。それが実現する機能の一例として、例えばAEC業界向けには、初期段階における計画と設計の意思決定や図面作成時の反復作業のサポート、製品の設計・製造においては概念設計の提案や製造方法・性能・コストを最適化した設計の自動生成、メディア&エンターテインメント業界向けには制作スケジューリングの自動生成などが紹介された。
2. 設計と施工の未来とクラウドプラットフォーム
単一のプロジェクトに何千人もの関係者が関わることもあるAEC業界は、非常に細分化され、関係者間の信頼度も高いとは言えないのが現状だ。シームレスなコラボレーションの欠如は、高価なミスや予定外の遅延が発生するリスクにつながる。この業界は今後数年で、全く異なる姿になることが期待されている。
建設業においては、ファイル・キャビネットからスプレッドシート、クラウドシステムまで、あらゆる場所に多くのデータが存在してきた。データの流れが分散する中では、複雑な問題を解決するのは困難であり、この問題の解決策となるのがクラウドプラットフォームだ。
AEC設計ソリューション担当EVPのエイミー・バンゼルは、「現在は活用されていないデータをクラウドに集中させ、より粒状化することで、非常に価値あるものになります」と語る。「それにより、プロセスの初期段階で、より良い判断を下せるようになります。AEC業界の規模を考えると、今後建設が必要なもの、既に建設され改良が必要なものすべてにおいて、オートデスクの支援で顧客が実現できるインパクトは非常に大きく、それをAEC向けのFormaなど新たなクラウドプラットフォームやAutodesk Platform Serviceへの投資で実現していきます」。
「私たちは、顧客がデータの活用法を再創造するサポートをしています」と、バンゼルは続ける。「そして彼らが、生産性が高いクリエイティブな環境で働き、より良い世界を実現するプロジェクトを提供する未来を見据えています」。
3. 設計と製造の世界におけるシミュレーション革命
モノづくりの能力の向上・維持を実現する方法は、サプライチェーンをさらに長くし、製造コストの低下を追求することだと考えられてきた。だが世界の製造業の基盤は、この3年で根本から揺らぐことになった。
製品開発・製造ソリューション担当EVPのジェフ・キンダーは、「我々は設計と製造を一体化させ、データと連携させることで、顧客の生産性を飛躍的に向上させられると常に考えてきました」と述べる。「それを実現するインダストリークラウドがFusionです」。
アナグノストは、「高度に接続されたデータとフロー、シミュレーション、そしてその間にAIで拡張された設計機能があれば、設計しているものが製造可能であることを確認できます」と続ける。「それをどう製造するかの指示や、製造時の問題の解決が、設計者が作業中にリアルタイムで行われるからです」。
キンダーは「AIがシミュレーション革命をさらに推し進めれば、設計した製品の機能確認のための大量のバッチ生産が不要になります」と述べる。「製造CADモデルと建築CADモデルを一緒にすることで、従来はバラバラで非効率だった工程をひとつにまとめられます。それにより施工者は何百ものオプションから、最適なデザインを選択可能となります」。
4. データが自由に流れるメディア&エンターテインメント業界の未来
エンターテインメントの世界は長年デジタルで仕事が行われているが、デジタルトランスフォーメーションについては、あまり語られてこなかった。データ形式が異なるツールが使われてきた結果、部門を超えた議論は行われず、すべてがサイロ化していたのだ。だがプロダクションはより複雑になり、新しい高品質なコンテンツへのプレッシャーはより高くなっている。
かつて、この業界はクラウドに懐疑的だったが、いまや愛用するようになった。それにより、プロダクションスタジオは、より多くのアーティストやFXスタジオとコネクトでき、より多くのショットを使えるようになった。だが、ファイルでのやり取りは変える必要がある。そこには適切な意思決定を行うために必要な品質や粒状性、瞬時のアクセス性が欠けているからだ。オートデスクは、こうしたデータのコネクトされる方法をインダストリークラウドのFlowにより変えようとしている。
エンターテインメント&メディアソリューション担当EVPのダイアナ・コレラは、「AIとクラウドは業界へ大きなインパクトを与えており、顧客はそれを迅速に採用しています」と述べる。「例えばJellyfish Picturesのプロダクションは、クラウドによって、より多くのアーティストが参加するようになっています。またUntold studiosは、完全クラウドベースのスタジオを構築しました」。
また、ゲーム開発の世界も拡大しており、そこでは膨大なアセットのマネージメントが必要だ。AIとクラウドが、今後もスタジオの作業方法を変革し続けるだろう。
「オートデスクは業界がプロダクションをクラウドへ移すことと、AIのパワーを活用できるように投資しています」と、コレラは語る。「AIは効率的な作業、コストの低減を実現し、より多くのタレントへ門戸を開くことになるでしょう」。
5. AIドリブンなクラウドプラットフォーム
リサーチ担当SVPのマイク・ヘイリーは、「クラウド プラットフォームが真価を発揮するのは、それに拡張性があり、顧客のニーズに合わせてカスタマイズできる場合に限られます。そのためにはAPIが必須です」と述べる。「そして、誰もが拡張機能を自身で、もしくはマーケットプレイスでの購入により構築し、それを既存のワークフローに直接接続できるようにしなければなりません」。
ヘイリーは、「私は、クラウドベース プラットフォームへの根幹的な移行はAIにより促されると考えています」と述べる。「こうしたインフラの大きなシフトには、効率性の向上が必要です。効率が5%や10%上がるだけでは、誰も動こうとしないでしょう。でも、効率が500%や1,000%にもジャンプするのを目にすれば、それに皆が投資をすることになります。AIはエコシステムの中で、そうした飛躍の可能性を秘めた唯一のものなのです」。
「我々は世界と顧客を支援することで、人々が団結して海洋廃棄物や気候変動、移民問題、都市化など、本当に困難な問題に取り組むエコシステムを作り上げることを願っています」とヘイリーは続ける。「これらは非常に複雑な問題であり、ひとつの政府や企業が解決できるものではありません。その解決には集団による努力と、それを可能にするツールやテクノロジーが必要であり、我々はその実現を目指しているのです」。