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変革への道をデジタル成熟で進むエンジニアリング会社Aurecon

  • 国際的なエンジニアリング コンサルティング会社Aureconは、デジタル変革の旅を始めてから7年になる。その過程における同社の様々な実践が、AECO分野におけるデジタル成熟の代表例へと発展するのに役立った。
  • デジタルスキルの全社的な強化を目指し、ソフトウェア開発、自動化、コンピューター設計、生成AIなどを含むデジタル戦略による変革に着手した。
  • 現在Aureconの従業員は、デジタルスキルと標準に焦点を当てた組織全体のKPIにより、全員がデジタルに精通している。
  • Aureconは顧客価値を高める主要な専門分野をターゲットとしたデジタル成熟フレームワークを開発し、それを新たなビジネスモデルや業務手法を生み出す技術投資の意思決定に役立てている。
  • DX (デジタル トランスフォーメーション) は、気候変動とエネルギー転換に焦点を当てたAureconの持続可能性目標を支援するビジネス機会も生み出している。

国際的なエンジニアリングコンサルティング会社であるAureconは、DXジャーニーを始めて7年が経過した現在、次のフロンティアへの準備を整えている。それは、生成AIを設計自動化のプロセスに導入することだ。

Aureconは、ソフトウェア開発、自動化、コンピューター設計などのさまざまなデジタル戦略を駆使し、既にオーストラリア、ニュージーランド、アジアの大規模プロジェクトで、その能力を向上させている。同社のプロジェクトには、東南アジア最大の太陽光発電所であるザウティエン第1/第2太陽光発電所や、エンジニアリングウッドを使用した西オーストラリア州初の木造建築物マードック大学ブーラカティジンセンターなどがある。

世界中の企業にとって、DXはこの1年で転換点を迎えた。製造・設計業界のビジネスリーダーを対象としたオートデスクのグローバル調査、2024年度版『デザインと創造の業界動向調査』では、現在組織がデジタル的に成熟していると回答したリーダーは64%に上り、これはデジタル成熟を評価した企業がわずか38%だった前年から劇的に変化している。

こうした企業はデジタライゼーションへの取り組みがもたらす好影響を目の当たりにしており、同業他社に遅れを取らないよう投資を続けている。建築、エンジニアリング、建設、運用 (AECO) の分野において、これは企業がBIM (ビルディング インフォメーション モデリング) 技術やデジタルプロジェクトデリバリー、もしくはAutodesk Construction Cloudなどのクラウドサービスやプラットフォームに投資していることを意味する。

Aureconはマードック大学パース・キャンパスにあるエンジニアリングウッドを使用した西オーストラリア州初の木造建築物ブーラカティジンセンターで土木構造工学、歩行者モデリング、交通監査、ロボット工学を担当した [提供: Aurecon]

デジタル成熟を達成した企業にとって、そのメリットは大きい。『デザインと創造の業界動向調査』によると、DXに投資している企業は、デジタル投資のレベルが低い企業に比べて業界内での競争力、従業員の生産性が高く、全般的な業績も優れている。

デジタル成熟度の基準設定

Aureconデジタル担当マネージングプリンシパルのデイヴ・マッケンジー氏は、同社のデジタル戦略推進チームを率いている。チームの担当領域はソフトウェア開発や自動化、コンピューター設計、そして最近では生成AIなどだ。

変革への道筋を確立するため「弊社では組織全体の体系的なKPI (重要業績評価指標) を使用しています」と、マッケンジー氏。「これはデジタルのスキルや標準の展開、デジタルプラットフォームの採用に関するものです。社員全員がデジタルスキルを有するべきだ、というのが弊社の考えであり、それは50%から始まって、やがて100%になりました。ここには弊社の企画チームも含まれています」。

特に競争の激しいAECO分野においては、DXのメリットを十分に享受するため、従業員のデジタルスキルを高めることが不可欠だ。『デザインと創造の業界動向調査』回答者は、AECO企業が新たなテクノロジーによって競争力を得ようとする中で、AIやデジタルデザイン、デジタルプロジェクト管理のスキルの需要が高まるだろうと述べている。

従業員のデジタルスキルを向上させることはDXのメリットを享受する上で欠かせないステップだ

こうしたスキルの恩恵を最大限に生かすには、継続的な改善が必要だ。「自分たちの現在地と向かうべき方向が見えたとき、それが継続的な変革の原動力となり、それは実際には加速したのです」とマッケンジー氏は話す。

組織全体のデジタルスキル目標から始まったものは、ビジネス全体にわたる実践レベルでのデジタル成熟度の測定へと移行した。

「私たちのビジネスにとって重要であると特定した6、7つの主要専門分野で、デジタル成熟度フレームワークを開発しました」と、マッケンジー氏。「このフレームワークの各パートは顧客価値につながっています」。その成果は出ている。「特定の領域においてはデジタルのことだけを話すのをやめ、移行を進めました」と、マッケンジー氏。「デジタル成熟フレームワークの最上位に達すると、これらの業務手法はビジネスに完全に組み込まれ、制度化されました」。

デジタルツールがビジネス成果の達成を支援

Aureconはシステムアプローチを優先し、コネクテッドデータを所有し、取り扱い、話し合い、管理する手法の共有を確保している。「データに含まれる情報こそが価値です。私たちはそれを生み出し、クライアントはそれに対価を支払うのです」と、マッケンジー氏。「デザインや報告書など、形は何であれ、私たちが生み出しているのは情報です」。

次のステップは、新しいビジネスモデルや業務手法の創生に最新のテクノロジーを導入することだ。Aureconのビジネスリーダーは、デジタル成熟フレームワークに基づくステータスレポートを活用し、社内および顧客ソリューションに高度な自動化を導入するなど、ビジネスチャンスを引き出すテクノロジー投資の意思決定を行う。「そうすることで、業界から賛同を得て変化を加速させることができるのです」と、マッケンジー氏は話す。

Aureconは組織戦略を数年ごとに見直しているが、この1年はさらに焦点を絞るようになった。「今回の私たちの戦略はより限定的で、納品に関する決断をいくつか下しました」と、マッケンジー氏。ひとつは納品の効率化、もうひとつは自動化だ。「また、生成AIとその技術をデザインの自動化に導入する方法についても、戦略的な決断を下しました」。

会社がデジタル的に成熟した組織として進化するにつれて「テクノロジーの合流が生じます」と、マッケンジー氏。「しかしそれ以上に重要なのは、連携するデジタルスキルの合流です。これを正しく理解し、デジタル成熟をめぐる体系的なソリューションを手に入れれば、成熟度の段階は上がり、デジタル競争力を持った組織になるはずです」。

AIによるデジタル成熟の加速

AureconはAIに多額の投資を行っており、機械学習や大規模言語モデルを取り入れ、設計プロセスにおける従業員の能力を高めている

2024年度版『デザインと創造の業界動向調査』によると、多くの組織がAI導入の分野で有意義な進歩を遂げている。リーダーの78%が「AIは自社のビジネスを強化する」と答え、66%が2-3年以内に「全社的に不可欠」になると回答している。

Aureconは先手を打ち、既に6年前に機械学習連携を立ち上げるという戦略的決断を下している。AIは情報密度が高いエンジニアリング会社にとって特に価値がある。「報告書、ボーリング孔の画像など、ありとあらゆる情報がありますが、設計上の決定を下すためにそれらをまとめる必要があります」と、マッケンジー氏。「弊社はAIを使って従業員を支援し、短期間のうちに決断する彼らの能力を高めています」。

また、設計プロセスに生成AIを導入したいと考え、設計プロセスのオーケストレーションレイヤーとして大規模言語モデルを使い始めている。「イテレーションサイクルの強化が重要です」と、マッケンジー氏。「1週間のサイクルが1日、あるいは数分になるかもしれません。これは私たち全員に影響を及ぼしかねない、真の破壊的変革です」。

Aureconはどう持続可能性を実現しているか

AureconのDXは、国連グローバルコンパクトへの参加を含む同社の持続可能性への取り組みも支えている。その環境目標には、2025年までに事業活動でのネットゼロ達成、保有車両の電化、航空機利用の最小化、グリーンローン融資の利用、グリーンプロジェクトへの投資などがある。

「私たちは市場において、顧客のネットゼロ達成と、エネルギー転換や気候変動への取り組みを支援する立場にあります」と、マッケンジー氏。「従うのではなく、率先することを選択しているのです。自らが展開するイニシアチブを進め、目標にコミットし、それを報告し、確実に達成しようとする取り組みです」。

「気候変動は私たち全員に影響を与えるようになります」と、マッケンジー氏は続ける。「サステナビリティに対する動機付けは、私たちの目的である、アイデアの実現、伝承の保存、私たちが暮らすコミュニティの向上です。それは私たちのビジネスへと昇華され、そこに商業的価値もあると考えています」。

デジタル成熟への課題

Aureconがデジタルトランスフォーメーションの旅を進めるうえで最大の課題となるのは「変化のペースをうまく切り抜けることです」と、マッケンジー氏は続ける。「なんとか順調にやってはいるものの、7年にもわたる旅路でチャレンジすることへの疲れが出てきてもいます」。彼のチームは組織が変化に合わせて動く俊敏性を備えているかどうかを確認することに重点を置いている。いつ市場に乗り込んでリードを取るか、いつ追従すべきか、新しいイニシアチブを採用するタイミングとリスクをどう管理するべきかを決めているのだ。

Aureconデジタル戦略推進チームを率いるデイヴ・マッケンジー氏

DXのもうひとつの課題は、優秀な人材の発掘だ。「エンジニアリングの仕事は山ほどあるのに、エンジニアの数が足りません。特にリアルドメインの専門知識を有するエンジニアが足りていません」と、マッケンジー氏。「人材プールを拡大し、優秀なエンジニアへと成長させるにはどうすれば良いのでしょうか?」

若い世代の労働者への働きかけは極めて重要だ。「気候変動やエネルギー転換など、エンジニアリング企業が解決しようとしている問題が、若者の価値観に非常に合致しているという珍しい時代に私たちはいるのです」と、マッケンジー氏。「この状況を十分に活用する必要があると、私は考えます。こういった極めて困難な問題を解決したいなら、ぜひエンジニアになってください」。

Aureconがいかに変革を大規模に進めているのか

2024年度版『デザインと創造の業界動向調査』によると、ビジネスリーダーは自社の回復力と業績についてはるかに楽観的だ。

Aureconもこの前向きな見通しを共有する一社だ。「忙しく、いい年でした」と、マッケンジー氏。「データの再構築について議論しつつ、長年にわたってこの変革の旅を続けてきました。この12カ月の間に、その理由の多くが現実となりました。それはビジネスに活力を与えるものであり、他にも多くの変化を推進するトロイの木馬なのです」。

「顧客のデジタル成熟度もさまざまな市場において急速に向上しています」とマッケンジー氏は続ける。「少なくとも市場に合致するものでなければなりませんが、理想を言えば市場の上位20%にいたい。それは顧客価値の要素です。これを正しく理解することが、大規模な変革を推進するための真のイネーブラーである条件です」。

この1年で、同社はすべての主要業績指標を達成した。「既に途方もない量の変革を成し遂げたという感覚はありますが、これからは継続的な向上というマインドセットへと移行していくことが重要です」と、マッケンジー氏は語ってくれた。

著者プロフィール

ショーン・ラドクリフはカナダ、オンタリオ州を拠点とするフリーランスのジャーナリスト兼ヨガ講師で健康や医療、科学、建築、エンジニアリング、建設、またヨガや瞑想に関する記事を専門としている。コンタクトはShawnRadcliffe.comにて。

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