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スイスのカメラ メーカーALPAがフォーカスを絞るデジタルの未来

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スイスのカメラ メーカーALPAはデジタル化を経て、現在は3Dプリントとクラウド コンピューティングを活用している [提供: ALPA/René Dürr]

スイスのカメラ メーカーALPAをご存知だろうか? そのプロフェッショナルなハイエンドカメラは、長年にわたりコレクターやカメラ通、メカ好きのお気に入りツールとなってきた。

写真家でもあったミュージシャンのルー・リードが愛用し、ファッション・デザイナーの故カール・ラガーフェルドも撮影に使用。世界的に有名なフランス人フォトジャーナリストのレイモン・ドゥパルドンも熱心なユーザーだ。トラピスト会修道士で作家のトマス・マートンが ALPAで生み出した瞑想的な抽象作品は、コロンビア大学が貴重な書物を所管するRare Book & Manuscript Libraryに展示されている。

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ALPAカメラはレンズ、ボディ、デジタル バックの3要素で構成されたモジュラー デザインを採用 [提供: ALPA]

ALPAカメラは、とりわけ建築や風景、自動車の写真にプロフェッショナルが使用。スイス製の時計同様に精度が高く評価され、その伝統を保ってきた。カメラ、時計業界の各メーカーにとって、デジタル化は大きな課題となっている。だがALPAは製品ラインナップとデザイン ツールの賢明な判断を行い、製品と製造プロセスの両方で、首尾良くアナログからデジタルへの移行を行っている。

それは時計産業から生まれた

その精度とシャープなイメージが評価されるALPAは、カスタムメイドの楽器のように熟達者向けにデザインされたものだ。その精密さは、スイスの時計産業に端を発している。ALPA カメラは、1944年初頭にジュラ州のピニオン (Pigions) 社によって製造された。「ピニオン」はフランス語の道具に由来しており、同社は時計産業のサプライヤーでもあった。

カメラの大量生産が始まった70年代にはグローバルな競争にさらされ、70年代半ばには日本のメーカー、チノンと提携してALPA Siシリーズを発表。その後、高品質で高価なALPAモデルを10年に渡ってリリースしてきたが、業界の自動化が進んだこともあり、ピニオン社は1990 年に倒産。ALPAも市場から姿を消すことになる。だがその6年後、グラフィック デザイナーで心理学者のトーマス・ヴェバー氏が、教師にして民俗学者でもあるパートナーのウルスラ・カパウル氏と共にALAPの商標を取得した。

カパウル氏の姪で、今年ALPAのマネジメントを引き継いだカルリーナ・カパウル氏は「50歳になったとき、叔父と叔母は全く新しい何かを始めたいと考えたのです」と話す。「この分野の知識がなかったので、あらゆる規範や慣習を簡単に打ち破ることができました」。

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2000年度レッド・ドット・デザイン賞のBest of the Bestを受賞したALPA 12 SWA [提供: ALPA]

新しいオーナーたちが、まず噛み付いたのがカメラのフォーマットにおける伝統だった。当初、ALPAは35mm判のみを提供していたが、これではライカや日本のメーカーと同じ土俵に立つことになってしまう。グローバル市場で生き残るには投資先となるニッチを見つける必要があり、両氏はそれを中判カメラに見出した。中判カメラは、その優れた画質によりファッションや広告用写真に人気の選択肢となっている。ウェバー、カパウル両氏にとって、中判に重点を置くことは、モジュラーでフレキシブルな、デジタルとアナログの両方のカメラを製造できることを意味していた。

機械加工で独自性を生み出す

ALPAカメラはレンズ、ボディ、デジタル バックという3つの要素で構成される。こうしたデザインは単純なものに見えるかもしれないが、ALPAのカタログには6種類のベースモデルからなる、400を超えるバリエーションがフィーチャーされている。「非常に幅広く製品を提供しているため、すぐ機械加工の限界に達してしまいします」と、ローゼンバウアー氏。「製造数も少ないので、製造コストを抑えるには加工方法にフォーカスする必要がありました」。

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ALPAカメラを使用して撮影されたアフリカ・アトラス山脈の見事なショット[提供: Ruppstebler]

ALPAは、支持部品をフライスと旋盤による加工で製造。グリップやハンドルなどの機器には 3Dプリントを導入しており、ほぼ全てのカメラで、少なくとも1つは3Dプリンターで出力された部品が使われている。ローゼンバウアー氏は、アディティブ マニュファクチャリングにより、サンバイザーやハンドルなどのカメラ アクセサリーを、経済的な損失無しに提供できるようになったと話す。

同社のデザイン チームはAutodesk Fusion 360を使用。「私たちにとって、画期的なアプリケーションになりました」と、ローゼンバウアー氏。「プラットフォームを問わずに (Mac、Windows のどちらでも) 使用できる、数少ないソフトウェア ソリューションのひとつです」。

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3Dプリントの活用例であるカスタムメイドのハンドル [提供: ALPA]

Fusion 360のクラウド機能を活用することで、遠隔地にいるスタッフ間のデータ交換もずっと迅速に行えるようになった。自身も出張の多いローゼンバウアー氏は、「複数のスタッフが同時にコメントを付け、リンクを送信し、ファイルを編集することができます。これにより、ベストな状態でアジャイルなワークフローが可能になります」と話す。

同社は今後を見据え、ジェネレーティブ デザインの活用法も研究中だ。ローゼンバウアー氏は、ジェネレーティブ デザインにより、さらに迅速かつリーンなデザイン環境が提供されると考えている。モジュラーな特性を持つALPAは、多数のコネクターを備えている。今後、そのデザインの最適化にジェネレーティブ デザインが役立てられることで、デザインと生産プロセスの短縮、コンポーネントの軽量化、材料コストの削減がもたらされるという。それが同社の競争力を維持しつつ、顧客満足度の向上にも貢献することになるだろう。

著者プロフィール

フレデリカ・フォークトはオートデスクのコンテンツマネージャーでRedshiftのEMEA担当者。メディア管理と芸術史を研究し、ジャーナリズムの奨学金を受けて「German Press Agency (dpa)」「Cicero Magazine」などの新聞や雑誌の仕事をしていました。

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