PERKINS&WILL

カリフォルニア州初の複数階層マス ティンバー構造建築によるトータル カーボン マネージメント

サステナビリティのお客様事例

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画像提供:David Wakely 氏

サンフランシスコおよびカリフォルニア州で初の偉業を、サステナブルな設計で達成

「1 De Haro」は、ありきたりの複合施設ではない。Perkins&Will 社によるその設計は、ただ美しいだけではなく、サステナブルでもある。この建物は、2 つの「初めて」を達成した。 サンフランシスコで初めて直交集成板(CLT)を採用した建物であり、カリフォルニア州初のマス ティンバー多層建築物となった。

 

しかし同社はなぜ、134,000 平方フィートのプロジェクトにマス ティンバーを選ぶという野心的な試みを行ったのか? Perkins&Will 社は常に、「サステナビリティ」を目標に掲げている。この同社の取り組みと、ホールライフ カーボン(建物のライフサイクル全体にわたる二酸化炭素排出量)の管理を通じたサステナビリティの実現を具現化した建物が、「1 De Haro」なのだ。

「1 De Haro」の外観。写真提供:David Wakely 氏

内側から輝きを放つ「1 De Haro」

「1 De Haro」の青緑色のガラス カーテンウォールは、朝から夜まで一日中きらめいている。サンフランシスコ・デザイン ディストリクトの 134,000 平方フィートの敷地を最大限に活用した、シャープな三角形の形状をした 4 階建ての建物で、オフィスおよび軽工業向けに設計されている。

しかし、ユニークなのはその外観だけではない。この建物の真のパワーは、その内側に秘められている。

Perkins&Will 社が設計した「1 De Haro」は、サンフランシスコで初めて直交集成板(CLT)を採用した建物であり、カリフォルニア州初のマス ティンバー多層建築物となった。コンクリートではなくプレハブ工法やマス ティンバーを使用することでこの建物に封じ込めたエンボディド カーボン(建設に起因する二酸化炭素量)は、15 ~ 20 年の運用エネルギー消費量を相殺するに等しい。

「1 De Haro」の内部。写真提供:David Wakely 氏

マス ティンバーを採用した理由

ポディウム構造をもつ建物の多くがそうであるように、「1 De Haro」はコンクリートの土台の上に木造建築を積み上げた構造となっている。ただし、この建物のユニークな点は、マス ティンバーを使用しているところだ。

マス ティンバーは、北米においては比較的新しい建築技術だが、サステナビリティや美的外観のメリットから、現在急速に普及しつつある。マス ティンバーとは、加工された建築木材を広義的に指す分類だ。小さな木片を組み合わせた堅牢な構造材で、柱、床、梁などに使用される。クロスラミネート ティンバーやグルーラミネート ティンバーなどの木材製品を使用した場合、コンクリートや鉄鋼を使用した場合と比べて二酸化炭素排出量が低減し、構造が軽量化し、施工期間が短縮する。

「マス ティンバーは、真に再生可能な唯一の構造材です。これが重要なポイントです。コンクリートや鉄とは違い、木材は二酸化炭素を封じ込めます」と、Perkins&Will 社のシニア プロジェクト マネージャー兼シニア アソシエイトを務める Matt Covall 氏は語る。

写真提供:David Wakely 氏

マス ティンバーのサステナブルな調達

樹木を伐採することは、サステナブルではないように聞こえるかもしれないが、実際はそうではない。

「1 De Haro」の建築には、約 60 年から 80 年かけて成長したクロトウヒが使用された。サステナブルな方法で伐採された森林は、この建物の耐用年数をかけて、伐採された分を再生できる。

Nordic Structures 社は、モントリオールに拠点を置くサプライヤーだ。Perkins&Will 社は同社と提携し、地元のカナダでサステナブルな方法で育てられた木材を使用して、CLT とグルーラミネート ティンバーの木材を製造した。Nordic Structures 社は、樹木の伐採から原材料の加工、意匠や構造の計画、最終的な組み立てや設置に至るまで、全面的に建築施工プロセスに携わった。

「工場で CNC 技術を使って資材を加工し、パーツ キットを作成しました。ミリ単位に及ぶ、圧倒的なレベルの許容差と精度で加工できます。この精度は、コンクリートや鉄では得られません。こうして製造されたマス ティンバーが、ケベックから列車でサステナブルに運搬された後、組み立てられ、すべてがぴったりとフィットしました。これはマス ティンバーの大きなメリットの 1 つです。正確かつ迅速に施工でき、廃棄物も減らすことができます」

—Perkins&Will 社、シニア プロジェクト マネージャー兼シニア アソシエイト、Matt Covall 氏

写真提供:David Wakely 氏

ライフサイクル全体のトータル カーボン マネージメント

トータル カーボン マネージメントとは、オペレーショナル カーボンとエンボディド カーボンの総量を考慮することを意味する。Perkins&Will 社は、Autodesk Revit に搭載されるライフサイクル評価 ソフトウェアの Tally を使用して「1 De Haro」のエンボディド カーボンを測定した。「Revit のモデルから情報を引き出して、基本的にあらゆるプロジェクトのエンボディド カーボン フットプリントを計算できます」と、Perkins&Will 社の地域サステナブル デザイン リーダー兼アソシエイトを務める Dalton Ho 氏は語る。

Tally は、Embodied Carbon in Construction Calculator(EC3)(英語)ツールの開発元である Building Transparency が提供するソフトウェアだ。EC3 は、建設の環境パフォーマンス宣言(EPD)の無料データベースと、対応する建物影響計算ツールで構成された、設計や資材調達に使用されるツールだ。Tally で生成された資材と数量のリストが EC3 ツールに直接インポートされる。

「エンボディド カーボンを評価したところ、同等量のコンクリートや鉄骨を使用した構造よりも、3,500 メートル トン以上の二酸化炭素を削減できたことがわかりました。これは 740 台以上の自動車を 1 年間、道路から削減した分と同量です」と、Ho 氏は話す。

「こうした建物を設計・施工するために私たちが使用しているツールは、全世界の GHG 排出量に非常に大きなメリットをもたらす可能性があります。カーボン評価にこれらのツールを取り入れることで、より良い明日、より良い未来を実現するための設計に、大きなメリットがもたらされるでしょう」

—Perkins&Will 社、地域サステナブル デザイン リーダー兼アソシエイト、Dalton Ho 氏