有限会社花田設計事務所

Inventor と Revit、 Plant 3D を Navisworks で統合 製造と建築を融合したプラント BIM 設計の展開

AUTODESK INVENTOR®
PROFESSIONAL PRODUCT DESIGN & MANUFACTURING COLLECTION
ARCHITECTURE,ENGINEERING & CONSTRUCTION COLLECTION

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Inventor と Navisworks による 3D 配置設計

配管だけでなく機械・製缶も含むトータルなプラント設計を幅広くオートデスク製品を活用した 3D 設計で実現する

もともと私は機械設計出身で、前社長だった父の後を継いでプラント業界に入りました。配管や機器、建築についてもそこから覚えていきましたが、その過程で、機械・製缶など機械系の設計要素が結構あると感じて、Autodesk Inventor があるじゃないかと思いました。他にも社内に Inventor を使ったことがある人間がいたので、2 人で専門家を招いて「プラント設計での Inventor 活用法」を構築しました。それでも最初は 3D を使い切れなくて 2D 設計し組立図から 3D 化していましたが、それだと 3D 化段階の不具合が多くて、やはり最初から 3D 設計でないと不便で仕方ない。逆に 3D 設計さえ実現すれば部材取り等も自動化できて生産性も向上し、間違いない図面ができる──やるしかないと思いましたね。

花田義勝 氏
有限会社花田設計事務所 代表取締役

有限会社花田設計事務所 代表取締役 花田義勝 氏

独自の BIM 設計ワークフローで業界をリード

兵庫県芦屋市の花田設計事務所は、各種プラントの配管・製缶設計を中心に建築の空調・換気・給排水設備の設計も行なうプラント設計事務所である。創業当時は水処理施設のプラント設計を主力としていたが、現社長の花田義勝氏が指揮を取るようになった頃からオートデスク製品を核とする BIM 設計を積極的に推進するようになった。現在ではこれに 3D 測量等の最新技術も組み合わせて独自のノウハウを蓄積。これらを幅広く活用して新分野も開拓しながら成長を続け、いまやこの業界の BIM と 3D 活用をリードする存在となった。

「前社長、つまり私の父親の時代は当社も 2D CAD だけでやっていました」。花田設計を率いる花田義勝氏はそんな風に語り始めた。当時は花田氏も別の会社で MICRO CADAM など製造系 CAD を使う技術者だったが、2015 年に同社を引き継ぐと、より効率的に事業を行うため 3D 設計/BIM 設計への挑戦を開始。社長就任の半年後には、製造業向けコレクション Product Design & Manufacturing Collection(以下 PDMC)等を導入し、Plant 3D やNavisworks、Inventor 等を実務で使い始めていた。当時のプラント設計分野では、 BIM 設計どころか 3D ツールの導入自体「まだまだこれから」だったが、花田氏は 3D を活用することで「設計事務所としてできること」が格段に広がると予感したのである。そして、花田氏のその予感は的中した。

Inventor と Navisworks を活用した作業風景

「2D CAD だけのプラント設計の事務所は、“図面1枚で幾ら”と決められたりしてなかなか利益を出しにくいのが現実です。しかし、3D を導入することで“やれること”の可能性がぐっと広がります。結果として、事業も拡大しやすくなるわけです」。無論、3D 導入当初は顧客に 3D モデル等の成果物を見せても“すごいね”だけで終わりということが多かったが、いまや「BIM 設計してほしい」と声をかけてくる新規顧客が急増しているのだと言う。

「2D だけだと配管図や機械・製缶図のみ作図することが多かったのです。BIM を使って全情報を一つのモデルにまとめれば、そのメリットを最大限に生かせますが、建築に関わる全てを描かなければなりません。それを実行するとやるべき作業も増えますが、結果的に“できること”も広がるのです」。たとえば──と花田氏は「やるべき作業」を挙げてくれた。まずは建築そのものの 3D モデル化、設備の 3D モデル化、その建築モデルに設備モデルを入れ、干渉チェックして空間調整……。当然、仕事量が増えるので効率化をさらに工夫し、新技術も導入していくことになる。

Inventor による機器 3D 設計

「VR や MR、3D 測量もそうやって導入しました。つまり、全てが 3D に繋がっています。3D をやっていなければこれほど多くの分野に手を出せなかったでしょう」。注目すべきは、この流れの中で花田氏が PDMC を縦横に駆使して生み出した、他に類を見ない独自の BIM 設計ワークフローである。

製造から建設までのオートデスク製品を組み合わせて
幅広く活用することで建築と機械設備を融合したプラント設備総体の BIM 設計を可能にする

BIM 設計のフロー

Navisworks を中心に 3D 設計データを緊密に連携し効率化

「当社では製造業向けコレクションである PDMC と建設業向けコレクション Architecture, Engineering & Construction Collection(以下 AECC )を合わせて活用しており、これが当社の BIM 設計ワークフローの一つのポイントとなっています」。AECC は建設業向け、PDMC は製造業向けに複数のソフトウェアが同梱されているパッケージだが、花田氏はこの2つを組み合わせることで、建築と機械設備を合せたプラント設備総体の BIM 設計を可能にしたのだ。

「BIM モデル作りで最もネックとなるのは、各部の 3D モデルをトータルな BIM モデルに統合する時、個々の属性情報が失われる場合があることです。当社ではツールをオートデスク製品で統一することでこの弊害を防ぎ、BIM データとして完結させています」。実際、同社では、建築設計は AECC に同梱されている BIM ソフトウェアの Revit で、また配管設計は PDMC・AECC 共通の Plant 3D で行い、機械・製缶設計は PDMC の Inventor を使う。そして、複数の 3D ツールを併用するこのプラント BIM 設計において重要なカギとなるのが、Navisworks Manage だ。

Revit・Inventor・Plant 3D・ReCap を Navisworks に取込んで作業

「Navisworks は 3D 成果物を見るためのレビューソフトですが、当社ではこれを全ての 3D 設計の中心に置いています」。つまり、建築・配管・機器の設計をそれぞれ異なるソフトで進めながら、干渉などは Navisworks 上で常に最新の状況を確認できるようにしている。これにより各ソフトへ負荷をかけない環境と、より効率の優れた設計を両立させているのである。「たとえば Inventor による 3D 設計ならスケルトンモデルで寸法表示させてタンクの大きさ等も自在に変えながら効率よく機械設備を作れるし、2D 図面への展開も早くなります。でも、Inventor の 3D モデルを Plant 3D 内の配管と同じ階層に入れると重くて動かせません。そこで直接 Plant 3D 内に入れずに Navisworks 上で合体させて、配管は配管で引っ張ります」。つまり、機械・製缶設計では Inventor と Navisworks を 2 画面表示させて両者をリンクさせたまま Inventor で編集するのである。そして、これを保存した上で Navisworks で更新をかければ即座に変更後のモデルが表示されるから、Plant 3D にも Inventor にも負担をかけずに軽々と作業を進められるのだ。

「Navisworks はタブレット上で素材などの属性データを確認できるので、現場で部材を確認しながら作業できるし、問題があれば朱書きしたデータをやり取りするだけで簡単にお客様の確認も取れます」。3D かつ軽量のデータで容易に意思疎通が図れスピードアップするわけだ。また、無償の Navisworks Freedom もあり、これを多くの現場担当者がパソコンやタブレットにインストールしてデータを現場に持ち込めば、作業効率も改善できる。

BIM データの活用(VR)

3D 測量で切り開く新たなフィールド

オートデスク製品を活用したプラント BIM 設計事業と共に、花田設計の新たなフィールドを切り開いた技術が 3D 測量である。同社は 2018 年に点群処理を開始し 3D 測量事業に進出したが、実はこの展開にもオートデスク製品が関わっている。「当時の 3D CAD はほとんどが点群データに未対応でしたが、Navisworks を始めオートデスク製品の多くが対応済みだったのでスムーズにBIM設計のフローに組み込めました」。もちろん点群データを Navisworks に取込む際は ReCap で前処理し、データを軽く扱いやすくしているのは言うまでもない。

「当初、3D 測量の依頼は年に 1〜2 件でした。改造案件で 3D 測量から BIM 設計までトータルにできる点は他にない大きな強みでしたが、当時はさほどニーズがありませんでした」と花田氏は当時を回想する。風向きが変わったのはICT等の影響で 3D 測量が普及し始めた近年のことなのだ。「プラント BIM 設計もそうですが、ようやく時代が当社に追いついてきたという実感があります。3D 測量だけの依頼やお客様が 2D で計画した建物を 3D 化し点群に合わせる仕事等も急増したので、3D 測量は新たに子会社を作って任せることにしました」。他にも、たとえば 3D 空間撮影に使われる Matterport を活用してプラント現場の現況確認と維持管理など、プラント改造の打合せに応用するなど新しい試みも始まっており、同社の挑戦意欲はますます旺盛だ。

一方、プラント設計事業については、脱炭素の流れが強まるなか、コロナ禍の海外渡航制限の影響もあってプラント新設が減ったため縮小気味だったが、ここへ来てクリーンエネルギー分野を中心に新規顧客の引き合いが相次いでいる。クリーンエネルギー関連は海外企業が多く、海外では BIM 設計が当り前であるため、BIM と 3D の革新的な技術力から成り立つ多岐に渡るサービスを提供する同社に声がかかるのである。

「設計者 8 名という小規模な組織ですが、これがレスポンスの早さにも繋がり、国内外の企業から技術とフットワークを兼ね備えたプロ集団として評価されているようです。BIM や 3D、点群データを活かせるフィールドは他にもまだまだあります。分野を問わず直接エンドユーザーに提案していける仕事にも挑戦していきたいですね」。

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