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リーン コンストラクションとは? 全ての関係者に計画段階から権限を付与するプロセス

プロジェクトの7割で予算の超過や納期の遅延が起きている建設業界において、よりスマートな方法が必要であることは明白だ。

だが、これまでスケジュールや予算などの成功の条件は、現場監督やプロジェクト マネージャーが一方的に決めてきたため、その変更は難しいかもしれない。こうした伝統的な手法は、一般的に階層的で独裁的なコマンド&コントロール (司令官が指揮する部隊へ作成を送ってコントロールする) スタイルのプロセスに依存しており、ステークホルダーからの貴重な意見を制限し、リスクを公平に分配できないことが多い。こうした環境は、計画から引き渡しまでプロジェクトのライフサイクル全体に存在している。

より優れた方法を提供するのが「リーン コンストラクション」だ。これは実際に作業を行う作業員まで全ての利害関係者が生産計画の段階から含まれた、人間を中心に置いた非常にコラボレーティブなプロセスを意味している。熟練労働者がプロジェクトのスケジュールに影響する決定を行えることでボトルネックの回避や無駄の削減が実現し、プロジェクトをよりスムーズに進行可能となる。

リーンコンストラクションとは?

リーンの概念は製造業でトヨタ自動車が始めたもので、1990年代には建設業に適用されるようになった。リーン コンストラクションの目標は、プロジェクトの余剰コストや材料、時間、労力など (無駄だとされるもの) を削減し、クライアントが定義する価値を高めることにある。リーン コンストラクションの主要原則はコラボレーションとアカウンタビリティであり、それは建設現場での人や資材のあらゆる動きを詳細に把握できるデータの活用で実現する。

リーン コンストラクションは、以下の8種類の無駄の削減をターゲットとしている:

1. 無駄な輸送は、時間と二酸化炭素排出を浪費する。

2. 無駄な在庫は、スペースを浪費し、余計な移動を必要とする。

3. 無駄な動きとは、敷地内における人や物の循環経路のことである。

4. 待ち時間は、働いていない労働時間である。

5. 過剰処理とは、管理上または組織上の余分な処理である。

6. 過剰生産は、過剰在庫の原因となる。

7. 製品の欠陥は、冗長な作業につながる。

8. 人材活用の欠陥は、生産性向上を阻害する。

リーンという名称は、建設プロセスから無駄を省いて、顧客に価値をもたらすものだけで構成し、その価値の提供に携わる人々の健康維持という目的の推進のために付けられている。

リーン コンストラクションは、個別の計画やツールセットというより、幅広い哲学だと言える。タスクの羅列ではなく、建設プロジェクトに適用される一連の原則だ。建築の世界におけるインテグレーテッド プロジェクト デリバリー (IPD) と同様、リーン コンストラクションでは建設チームの全メンバー (オーナー、代表者、協力会社と専門業者、現場作業員) が、プロジェクトの初期段階から個々の行動を調整し、同レベルの責任を負う必要がある。

こうした初期計画のフェーズが、リーン コンストラクション プロジェクトの成否にも大きな役割を果たす。リーン コンストラクションにおける計画は、専門的な経験のみに基づいて一人のプロジェクトマネージャーが管理する、サイロ化された活動ではない。顧客から協力会社までチームメンバー全てが自らの専門知識に基づいた発言を行い、ダイナミックな生産スケジュールを積極的な形成することで、現場のあらゆる専門知識が反映されるようになる。

こうした環境では、プロジェクト マネージャーが人参と棒で責任を押し付けるのではなく、チーム内で水平に配置された個人がお互いに責任を負う、協調性と尊敬の念を持つことが大切だ。マネージャーの仕事は規律を強制することではなく、建設作業員に必要な労働力と資材、マイルストーン、情報を適切に提供し、成功に導くことだ。グレン・バラード氏とLean Construction Instituteを設立したグレッグ・ハウエル氏は、「現場監督の指示は、後に続く作業員への約束事なのです」と述べている

リーンなチームは、プロジェクトの最終的な納期に向け、基本的なマイルストーンのみを設定する。プロジェクト開始時にスケジュールを検討し、その後は効率的なミーティングを頻繁に実施することで細かい単位で先を見通し、納期を確定する前に物流と労働の流れの確認を行う。例えば、プロジェクト開始時に内装工事の開始日と終了日を決めていても、塗装やカーペットの施工などフロア毎のスケジュールは、内装工事の納期の数週間前にしか合意できない可能性がある。こうした細々とした期限は3-6週間先まで設定され、チェックインで計画内容を確認して、毎日のスタンドアップミーティングで実際の完成度を確認することが多い。

リーン コンストラクションの6原則

1. 価値の特定

リーン コンストラクションは、"クライアントが求めるものと、その理由"を問うことから始まる。この指針の解釈は、チーム全体で共有する必要がある。

2. バリューストリームの定義

これは、建設プロセスの中で価値を生み出すステップと、そうでないステップを定義することだ。例えば、キャビネットの設置は顧客に価値を生み出す。だが、キャビネットが乾式壁の仕上げ材より先に納品されたため、そのキャビネットを倉庫に移動させることは価値を生み出さない。リーン コンストラクションのチームは、情報の流れ、材料の流れ、リードタイム、プロセスタイムを記録したバリューストリーム マップを用いて、各ステップが最終生産物にどのように貢献しているかを追跡できる。

3. 無駄の排除

前述したように、無駄なことは、顧客に提供する価値を低下させる。

4. 作業の流れ

リーン コンストラクションのプロジェクトの成功には、各メンバーの専門知識と判断に基づき、定期的に更新される反復的なワークフローの継続的な作成が必要。

5. プルプランニングとスケジューリング

プルプラニングとは、建物の建設計画を竣工日から逆算して立てることだ。このプルランプランニングでは、新しい工事段階が下流側の需要に基づいて始められるため、通常はサブコントラクターがペースを決定する。このプロセスはチームの全メンバーが、自分たちの担当する作業を始める前に、その前の段階を確実に把握し、協力し合うことでのみ達成される。プルプランニングにおいては、従来のプランニング手法と同様に、どのようなタスクが完了する必要があるか、また個々のチームメンバーが自分の仕事を完了するために何が必要なのかをリストアップする。

6. 継続的な改善

リーン コンストラクションのチームは、現在・将来のプロジェクトを改善する方法を特定することで、その価値を最大化し、将来の無駄を削減するための舞台を整える。つまり仕事を計画し、完成させ、その品質と忠実度をチェックし、計画と行動が一致するように、途中でも継続的に行動を調整する。

リーン コンストラクション採用のメリット

リーン コンストラクションでは、平等な事前調整を行うことで、チームメンバーは自分の仕事が次に現場で働く業者や専門家の仕事にどう影響するかを、より深く理解できるようになる。それによって干渉や手直し・手戻り、建設順序の不一致が減少することになる。英国、米国、フランスで行われたリーン コンストラクション プロジェクトの調査によると、回答者の約50%が、現場や作業間の干渉、手直し・手戻りの減少を実感していることが判明していている。

リーンの活用は、全般的な以下のような貢献をしている:

  • 施工品質が84%向上
  • プロジェクトのスケジュールが74%短縮
  • 生産性が77%向上
  • 顧客満足度が80%向上

リーン コンストラクション採用の障壁

リーンを採用する際の障害は、技術的・専門的な問題より文化的・社会的・組織的な問題であることが多い。リーン コンストラクションの採用には事前のトレーニングや教育が必要であり、チームメンバー全員の賛同が絶対的に要求される。また資材の発注方法や加工方法を変更するには、サプライヤーの説得が必要な場合もある。そして数多くのコラボレーションと計画の反復を必要とするため、コミュニケーションの断絶に対しては非常に脆弱であり、それは1つのチームから次のチームへと拡大し、スパイラル化する傾向がある。

リーン コンストラクションの最大の課題は、現場で働く異業種や専門家が、同僚が行っていることを常に把握できるようにすることだ。従来、この種のコミュニケーションを制限していた専門家のサイロが破壊されれば、プロジェクトに対する幅広い理解が、計画を作成・更新する部署から現場へと広がり、継続的なフィードバックループによって誰もが最新の情報を得られるようにできる。

リーンとBIM、そして未来

リーンは多くのデジタル建設ツールを補完する建設方法論となり、そこには、リーン コンストラクションの強みと完全に一致した計画・コミュニケーションツールとなるBIM (ビルディング インフォーメーション モデリング) も含まれる。BIMでは、リーン コンストラクションの先行計画を理解しやすい視覚的なモデルやワークフロー図にアップロードでき、継続的に更新され誰もが利用できるようになる。リーンの反復的な性質も、BIMによって加速され、人工知能と機械学習によって、チームメンバー全員による更新がモデルや計画の至るところで即座に行われる環境となる。

Lean Construction Instituteによると、リーンを利用するプロジェクトは:

  • スケジュール内に完了する可能性が3倍
  • 予算内に収まる可能性が2倍

これは、クライアントの価値の定義と請負業者の成功の定義に合致する可能性が高い。

このインフォグラフィックは2020年11月に掲載されたものです。この記事の作成における、建築ジャーナリスト、ザック・モーティス氏の多大なるご協力に感謝します。

著者プロフィール

ミッシー・ロバックはオートデスクのシニア エディター。またライター兼ミュージシャン、マネキン愛好家。文章と音楽 (マネキン以外) は www.missyroback.com にて。

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