BIMとは? そのメリットを理解できるストーリー7選
新たなテクノロジーは、あらゆる業界で大幅な進歩を促進する。例えば映画の世界では、シンクロ サウンドやクロマキー、CG といった新たな手法が業界を震撼させた。1982 年公開の映画「トロン」の制作に CGが 使用された当時、このテクノロジーの理解度は極めて低く、アカデミー賞は「不正なごまかし」として、この作品の視覚効果賞へのノミネート資格を剥奪したほどだ。
ちょうどその頃、建築・建設の業界でも、同様の大転換が起こりつつあった。建築家とエンジニアの、手作業による製図から CAD ソフトウェアへの移行だ。その後、2000 年代初期になり、BIM (ビルディング インフォメーション モデリング) が勢いを得ることになる。そして BIM も CG 同様、未知のことに対する不安感から生じる疑念という試練に耐えてきた。
この BIM とは何なのかを、もう一度整理してみよう。これはデータを注入した 3D モデルを通じて、建築家やエンジニア、ビルダー、オーナーが、世界のどこからでもコラボレーションを行うことのできるソフトウェア テクノロジーであり、デザイン プロセスだ。各モデルには、例えば建築家とエンジニアによるデザインの変更の追加に応じて、必要な建設材料の一覧を調整するデータベースが収められている。このモデルは、デザイン、建設、メンテナンス、さらには解体まで、ビルやインフラ プロジェクトのライフサイクル全体で使用できる。
この BIM の最良の部分を、7 つのストーリーで紹介しよう。
1. BIM の未来を建築業界で解き放つ 3 つの鍵
デンバーの EvolveLAB でビルディング インフォメーション マネジメント サービス部門ディレクターを務めるビル・アレン氏によれば、進展に必要な 3 つの「P」とは、プロセス (Process)、ポリシー (Policy)、ピープル (People) だ。アレン氏は、BIM の未来がこうした 3 つの P にあると考えており、適切なプロセスを使用することでデザイン プロセスをはるかに効率的なものにできると、実践者たちが理解することを期待している。機械学習やジェネレーティブ デザインなどの技術進歩により、BIM は従来にはない選択肢をもたらすことになるだろう。
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2. ロシアは BIM テクノロジーの北極星となるか?
2014 年のソチ冬季オリンピック以来、ロシアは BIM テクノロジーとその運用の、世界的なハブとしての地位を競っている。モスクワの建設省で都市計画、建築活動部門のディレクターを務めるアンドレイ・ベリュチェンコ氏は、ロシア企業が BIM テクノロジーへの移行を進めることで、他企業の模範となり先導する立場となることを願っている。
ベリュチェンコ氏は、ロシアが BIM 規格へ移行するためのテンプレート作成を考えており、これによりコストや導入への懸念が緩和されることを期待している。その実現のため、氏は英国に目を向けている。英国は初の BIM 政府指令を発表し、BIM の成功に不可欠な用語集、品質保証の規則、モデリングのマイルストーンを開発している。
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3. ビルディング インフォメーション モデリング: BIM が生み出す 10 のメリット
BIM ソフトウェアは現実を正確にキャプチャするため、関係者が目にするものがそのまま結果となる。BIM モデルに含まれるデータには、メーカー名やモデル、パーツ番号から、建物内での特定の空気ダクトの位置まで、現場での大規模なレーザースキャンで取得した情報を含むことができる。
BIM のメリットには、効率的なクラウド連携もあり、更新内容をリアルタイムで確認できる。3D モデルを使用することで、関係者全員が最終段階をイメージできる。季節による日照の変化など可変要素を用いてエネルギー性能をシミュレートしたり、構造内で干渉している要素を見つけ出したり、矛盾点を早い段階で解決したりすることが可能だ。プロジェクトの成功は細部にある。そしてオフィスでも現場でも、関係者全員が同じモデルに基づいて作業が行える状態を確保することが大切だ。
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4. BIM でファシリティ マネジメント: ライフサイクル性能の向上とコスト削減の 4 つのヒント
BIM は全体像に関するプロセスを得意とするが、例えば大学におけるファシリティ マネジメントなど、内部空間の処理にも長けているだ。FM: Systems の設立者兼 CEO マイケル・シュライ氏は、BIM テクノロジーを建物のライフサイクル全体を通じて使い、意思決定者からの信頼と協力を得るためのツールとするための、ファシリティ マネージャー向けの 4 つのヒントを公開している。
例えば、オハイオ州シンシナティのザビエル大学は、BIM により室内加工、床張り、屋根ふき、機械設備の必要性が裏付けられたため、管理予算を年間 75 万ドルから 1,200 万ドルへと拡大した。収集された 構造、システム、パフォーマンスの各BIM データを使うことで、キャンパスやその他の組織は、現行の運用コストを適切に割り当てることができる。
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5. 安全をモデリング: BIM と建設リサーチによる死傷事故の削減
ニューヨークを象徴するエンパイア ステート ビルやブルックリン橋は工学的な偉業であり、ヘルメットを被った男たちが地上数百 m の横桁に腰掛ける姿を捉えた写真が、いつまでも消えることのない印象を残してきた。だが、こうしたモノクロ写真の裏には数々の悲劇が存在した。建設作業中に、エンパイア ステート ビルディングでは 5 名、ブルックリン橋では 27 名が命を落としている。
2012 年に時計を進めよう。ニューヨークは「3D 現場安全計画プログラム (3D Site Safety Plans Program)」を許可した初の都市となった。このプログラムは、BIM を使用して建設安全計画の作成、保管を行う。現場のバーチャル ツアーや詳細な建設計画、コンプライアンス指針により、建設時の事故と死亡者の数を最小限に抑えることが目標だ。ビルの仕様やスケジュール、さらには作業員を危険にさらし、作業を遅らせ、コストを増大させる可能性のあるリスク要因のチェックリストを BIM で生成することで、この危険な業界における建築安全性とのギャップを埋めることができる。
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6. BIM による土木工学プロジェクト管理: より良く、迅速かつ低コストに
ジョン・ロドリゲス氏は BIM の支持者だ。BIM マネージャーとして、カリフォルニア州を拠点とする Fuscoe Engineering を、完全な BIM モードに転換させた。ロドリゲス氏は、建築・建設の未来が BIM 主導のものとなることを願っている。その唯一の障壁となるのは、知識と訓練だ。Fuscoe における BIM への適応は実習生モデルからスタートし、その後トップダウンの組織的な技術スタッフ訓練へと発展。会社の文化に、ますます浸透することになった。その証拠に、プロジェクト主任が地下ユーティリティの干渉チェックのレポートをリクエストした際、ロドリゲス氏は BIM を使用して、ものの数分でそれを生成することができた。プロジェクトの時間とコストに根拠を持った節約が組み込まれたことで、BIM 推進者がオフィスじゅうに誕生した。
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7. BIM 導入が準備済みである 5 つの理由
BIM は、恐らくは既に建築・建設ワークフローの一部となっている。プロジェクト チームは、壁や扉、床、天井など、現実世界のオブジェクト単位で考えるものだからだ。こうした建築要素は、デジタル モデリングの自然な出発点となる。BIM プロセスを追加することは、こういった既知のオブジェクトに対して、総合的に最良のデザインやエンジニアリング的思考で取り組むことだ。BIM を使用すれば、実践的な専門知識を多次元モデルへとシームレスに変換できる。また、こうした専門知識は、建設業のように集中的な分担労働文化を持つ企業にとって、瞬く間にすこぶる有益な資産となるだろう。
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