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Splashがアジアとアフリカで浄水と衛生の環境を向上させている方法

浄水 衛生

3月22日は、現在と未来における水の安全性と希少性の危機を考える、「世界水の日」に制定されている。国連による「持続可能な開発のための2030アジェンダ採択」では、「すべての人々に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する」ことが目標のひとつになっている。この達成には、各国の政府や企業、非営利団体や個人による協力が必要不可欠だ。

Splashは、アジアとアフリカの子供たちのため、安全な水と衛生 (WASH: Water, Sanitation, and Hygiene) のソリューション開発を目標に活動する組織のひとつ。その設立者で事務局長を務めるエリック・ストー氏は、2030年までに全ての人へ安全な水と衛生を提供することの最大の障害は、WASHソリューションへ政府から得られる協力の規模だと感じている。だが、水関連の組織と政府、公共団体の間でコラボレーションと情報共有の意欲が高まり、そのテクノロジーが利用できる点に希望を見出している。

「2030年までには、その部門に大規模な浄水ソリューションのコストや長期的な運用、維持方法に関する基準ができる筈です」と、ストー氏。「このところの、組織間でコラボレーションと情報共有を行うための、従来は不可能だった方法による能力の向上には目をみはるものがあります」

water sanitation and hygiene Eric Stowe Splash
エチオピアの学校の前で話すSplashの設立者、事務局長のエリック・ストー氏 [提供: Splash]

ストー氏がSplashを始めた10年前、当初の目標は中国の全ての孤児院に浄水を提供することだった。その当時はかなり大胆な目標にも思えたが、Splashはそれを2017年末に達成し、32省 1,100の孤児院の、ほぼ10万人に安全な浄水を提供している。

現在、Splashは中国で学んだ拡大戦略によってリーチを拡大し、ネパールのカトマンズやエチオペアのアディスアベバ、インドのコルカタ、バングラデシュのダッカの各都市の学校で WASHプロジェクトを展開。8カ国で40万人以上の子供への提供が行われており、2023年までに毎日100万人以上に到達するという計画を順調に進めている。

ストー氏は、発展途上国のツアー客向けのホテルやレストランへ浄水が提供されれば、その地域の公共団体やビジネスが正しく介入することで、都市部で増加する貧困層に対しても同じようになると考えている。またSplashは地域のサプライチェーンやパートナーシップ、デザインによるソリューションを活用して、WASHの介入を、より低コストかつイノベーティブで自立したものとしている。

中国の孤児院へ浄水器を導入するため、ストー氏は世界のマクドナルド レストランへ濾過システムを提供するAntunesグループへアプローチした。両チームは、そのシステムを適用し、メンテナンスやカートリッジ交換が少なく機能するよう、10バージョン以上ものVZN超濾過システムの開発と設計、製造を共同で行った。

「そこに恐ろしく濁った、本当に汚れた水を入れていました」と、ストー氏。「コストを下げるため、ステンレスの使用を半分にして、ボリュームを増やし、プラスチックを 30% 減らす、といったことを行いました」。このAntunes VZNシステムは、現在では同社の濾過製品の中でも、最も人気のある製品になっている。

Splashは「水飲み」と「手洗い場」の両ステーションのデザインを、サステナビリティを重視して継続的に改良している。2015年に発表されたユニセフのレポートによると、WASHプロジェクトの30–50%は5年未満で失敗している。「デザインを考慮していなかったので、世界中にWASHプロジェクトの墓場があります」と、ストー氏。「ユーザービリティや子供の数、その地域特有の自然災害や破壊行為などに対する耐久性などは、考えられていませんでした」。

water sanitation and hygiene filtration system
Splashは商用部品製造業者とのコラボレーションにより、VZN超濾過システムのデザインを行なった。写真はエチオペアのアディスアベバ [提供: Gavin Gough.

そうした要求に対応できるよう、Splashのステーションは耐久性が高く、構成を変更可能な上に破壊されづらく、子供にも扱いやすくてカラフルだ。地方公共団体にとって魅力的なのは、低価格で修理や掃除も簡単な上、目詰まりもしにくい。

「ソフトウェア面での介入も、非常に重要です」と、ストー氏は語る。「それを環境の実現と呼んでいます」。飲料水を由来とする病気を抑止するには、人間の振る舞いが重要だ。Splash が都市部の学童をターゲットとしているのは、飲料水を由来とする病気にかかる率が高いだけでなく、より柔軟であるため、自ら学校で身につけた衛生習慣によって、その家庭で家族に影響を与えることができるからだ。「子供たちには、例えば手洗いなどによって、両親の考えや行動を変える大きな力を持っています」。

Splash のステーションは手洗いを促進するよう、ユニセフのガイドラインに沿って、子供たちが対面するようにアングルも付けられている。また、社会に影響を与えられるような衛生クラブ、規則を覚えるための曲、ステーションの戦略的な配置や、そこへ向かう足跡のペイント、派手なカラーとロゴなど、Splashは子供の行動に影響を与えるための、あらゆる手段を講じている。

「最大の目標は、ステーションに引き寄せられるような軌道を作ることです」と、ストー氏。「子供たちを十分に近づけることができれば、手を洗うのです。あらゆることを試しましたが、彼らを近づけるのに最も効果的だったことのひとつが、鏡を置くことです。子供たちは、見た目に敏感なんです! ステーションに鏡を付けると、手を洗うことも増えるのがわかりました」。

2017年10月、Splashは水飲みや手洗い場をさらに洗練させるため、オートデスク基金 (Autodesk Foundation) のパートナーとなる。

Splashはプロトタイピングや製造を全て地元で行うため、アディティブ マニュファクチャリングによるラピッド プロトタイピングのメリットを享受していない。オートデスクとのコラボレーションは、ファイバーグラス製のプロトタイプと木製の鋳型を手作りすることに対する、ストー氏の欲求不満から始まった。Splashは、長期的にはプラスチックをステーション用のプラスチック素材としてリサイクルし、捨てられた水筒のプラスチックを水飲みや手洗い場という形で学校へ戻すことを考えている。

Splashは、Autodesk AutoCADCivil 3Dを活用するサードパーティのエンジニアとともに、各都市が学校におけるWASHソリューションを地方公共団体が引き継いで拡大できることを示すという最終的な方向性に向かって、大きな進歩を記すことができる。AutoCADで作業することでSplashのステーションを最適化して、水が有効利用され、幅広い学校でプラグ&プレイで使えるプレファブ ユニットになるよう、そのデザインを磨くことができるのだ。

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子供たちを飲料水を由来とする病気から守るため、インドの 140 以上の学校でSplashのステーションが使われている [提供: Gavin Gough]

「都市全体を見るには、我々の活動をCivil 3Dを使って上下水道の当局や建設局、教育局と共有して、WASHが何を提供するかを公共団体に示すことができます」と、ストー氏。そして、これは公共団体へ「私たちがデザインしたので、これを作ってください」と提唱する方法になると、氏は述べている。

TedxSeattle talkで、ストー氏はチャリティの止め方を規定した。Splashは、参入する全ての地域で出口戦略を持っており、Splashが定めたWASHソリューションは、地方公共団体が受け継いで拡大可能だと証明されている。例えばカトマンズでSplashがインストールした濾過システムは学校が必要とするより多くの浄水を提供するため、学校はそれを市場レートよりも安く売ることができ、それによってメンテナンスや運用の費用をまかなうことができる。

「意図すべきなのは、組織でなくソリューションの拡大です」と、ストー氏。「2年以内に中国を退出できると考えています。中国政府は、それを永遠に引き継ぐことができます。エコシステムを作り上げたので、それは実現可能で、かつ低価格です。そのことに、とても興奮しています」。

著者プロフィール

マーカスは6年前にオートデスクの契約社員となり、その後SEOとオウンドメディアにフォーカスしたコンテンツマーケティングのスペシャリストとして、フルタイムでチームのメンバーとなりました。オハイオ大学でジャーナリズムの学位を取得後、音楽テクノロジー、コンピュータ、家電製品、電気自動車に関する記事を執筆。オートデスクでフリーランスとして働き始めると、デザイン、製造、建築、建設の世界を変えつつあるエキサイティングな新技術を高く評価するようになりました。

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