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米国の製造業を取り戻す: タイタン・ギルロイ氏の教訓と計画

Titan Gilroy ポートレート
提供: Titans of CNC

タイタン・ギルロイ氏は機械工、ビジネスマンにしてリアリティ番組のスターであり、今では教育者でもある。その輝かしい経歴に彩られた人生は、教室や役員室よりも、驚くことに縞模様の囚人服と鉄格子と深い関係を持っている。

こうしたギルロイ氏のストーリーは秘密にはされていない。アマチュア ボクサーとして成功し、Top Rank と契約してプロへ転向したのだが、ナイトクラブでのケンカに巻き込まれて、懲役16年の実刑判決を受けた。模範囚として早期出所した彼は、ボクシングのリングの内外を問わず、格闘は過去のものになったことを悟った。これまでとは別の、より実りのある情熱が待っていたのだ。

出所後の初仕事は、小さな機械加工の工場での初心者レベルの職だった。そこで残業をこなし、夜間クラスに通って、1 年も経たずに駆け出しの CNC 工作機械オペレーターから親方へと出世する。彼は、この困難だがやりがいのある業界に向いていたのだ。10 年で確固としたスキル セットを習得すると、カリフォルニア州ロックリンに自身の精密機械工場 Titan America MFG を設立した。

その後 10 年に渡ってビジネスの拡大を続け、そのビジネスと彼自身は、米国内でも真にイノベーティブなクリエイターへ仲間入りした。製造能力とテクノロジーの向上同様、ギルロイ氏自身も成長を遂げた。現在はロケットや水中探査機など、より大型機械の構成パーツの機械加工を行っている。

教師としてのタイタン

ギルロイ氏は、自身の工場に加えて、リアリティ番組「Titans of CNC」も運営している。また 2016 年には無償のオンライン教育プラットフォーム Titans of CNC: Academy もスタート。より優秀で仕事が早く、クリエイティブな未来の機械スペシャリストの育成を支援している。彼は、これが製造業における勝利のマントを奪回し、米国が「誰もが認める製造のチャンピオン」の座を取り戻す方法だと語っている。

「米国には、私が就労の意欲を有すると信じている多大な労働力が存在しているが、彼らはまだスキルを身につけていない」と、ギルロイ氏。その労働力を生み出すには、新たな手法による教育が必要となる。それこそが、ギルロイ氏が Titans of CNC: Academy で提供できると考えているものだ。

現在は数百時間分もの教材の精査中で、それが次世代の製造技術の養成の試みに利用される予定になっている。「TB 単位のメディアがある。業界内の誰よりも多くの、機械のビデオを所有しているだろうね」と、ギルロイ氏。「それをカリキュラムに追加することで、大幅に強化することにしたんだ」。

タイタン・ギルロイ 教育 若い学生
提供: Titans of CNC

自身が説明する通り、彼の手法は、基本的に全てセオリーとは逆のことをするというもの。これは子供やホビイスト、機械工がスキルを素早く習得するには重要だ。「大抵の教育機関では、実際にモノ作りを体験させる前に、子供を何カ月もコンピューターの前に座らせる」と、ギルロイ氏。「だが CAD や CAM、CNC、工具の進歩のおかげで、まずはデザイン、次にプログラミング、そして機械加工というように教えることができる。それも、全てを最初の週のうちに」。

最初から自分でパーツをデザインし、それを機械加工することにより、学生たちは本からでは得ることのできない実践的な知識を習得できる。シンプルな形状から複雑なパーツまで、多数のプロジェクトをこなすことが秘訣だとギルロイ氏は話す。プロセスを反復することにより、次のパーツで小さな進歩を実感できる。「学生たちは、初日から 1 つのパーツを完成させる必要がある」と、ギルロイ氏。「間違えたり、失敗したり、問題を解決したりする必要があるんだ」。

このアカデミーがオンラインで公開されて以来、350 名を越える登録講師を含めた、計 10,000 名以上のユーザーがサインナップしてているとギルロイ氏は話す。「CNC 工作は製造の中でも高度な技術であり、技術を持った労働者は収入の多い仕事を求める」と、ギルロイ氏。「そういう人たち全員を、正しい方法で無償養成するプラットフォームを生み出そうとしている。私なりのやり方で“労働力を増やそう”というメッセージを送っているんだ」。

メイカーとしての米国

こうした製造職が高収入であることこそ、製造業が米国から他の国へと移った理由だと信じている人は多い。米国外の労働力はより安価であり、加工コストも低いため、企業はアウトソーシングによって莫大な経済報酬を得ているという思い込みがあるのだ。だが、ギルロイ氏は、それは間違いだと言う。

「米国人は、手に取るもの全てが中国製だと思い込んでいる」と、ギルロイ氏。「深く考えずに、当然そうだと思い込んでしまっているから。番組や教育プラットフォーム、その他全てにおいて、私という存在は思い込みという思考のカーテンを開き、米国の産業が競争可能だと人々に示すためにある」。

自動化やテクノロジー全般が、労働力切り捨ての原因になっていると考える人も多い。ギルロイ氏は、それも間違いだと話す。機械は、製品を作るために必要な人間の数を減らしているのではなく、プロセスを高速化し、効率を上げている。それが結局は製品価格の低下につながり、それによって米国のビジネスが海外の製造会社と肩を並べ、競争力が高まる。

「自動化が仕事を奪うと言う人は多いが、それは間違いだ」と、ギルロイ氏。「従業員数 100 名の 1,000 工場が、30 名の 100,000 工場になるということだ」。それは主に自動化とコンピューターのおかげであり、導入の増加と矛盾するものではないと氏は話している。

「実際には労働人口は増加し、より高収入となるだろう。ロボットと自動化、コンピューターの使用で、マルチタスキングが行えるようになるから」と、ギルロイ氏。「CNC 機械は、機械工作を驚くほどのスピードでこなす。だが、平均すると能力の 10% から 30% でしか動かしていない。それを 60% まで上げれば、パーツ価格を大きく抑えられる。そこへ自動化を加えれば、さらに高いレベルへと向上させることができる」。

利用可能なツールを能力の限界まで利用し、それを正しく行える未来の機械オペレーターを養成することで、ギルロイ氏は米国の製造業がトップに返り咲く未来を見据えている。「若い世代への不満を口にして、米国に未来はない、製造業は終わりだという人を見ると、いつも“一緒にやってやろうじゃないか!”と云うんだ」と、ギルロイ氏。「問題の解決。やりたいことは、それだけだ。それが好きなんだ」。

こうした発想を持つギルロイ氏は、米国が製造業における重要性を取り戻すための支援を行う、絶好の位置にいると言えるだろう。米国の製造業は、より大きく、強く、その競争力を強めるようになるだろう。ギルロイ氏のように、米国の製造会社がこの勝負から引き下がることなく、挑戦を続けていくだろうから。

著者プロフィール

キンバリー・ホランドはアラバマ州バーミングハム在住の、ライフスタイル系記事のライター、編集者。所有する書籍を色分けしていないときは、キッチン向けの新しいガジェットを使った料理の実験を友人たちへ披露することを楽しんでいます。

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