エンジニアとしてのモチベーションを維持し続けるためのロケット燃料は?
読者を毎朝ベッドから起き上がらせ、オフィスへ向かわせる力は何だろう? タスクを完了させるため、残業しようと考えるモチベーションは? 職場であなたに熱意を与えるものは? つまり、あなたにとっての「ロケット燃料」は何だろう?
私は人々、特にエンジニアにとってのモチベーションが何であるかに興味をそそられる。これは単なる好奇心以上のものであり、自分が率いているチームを理解し、メンバーの意欲を高めることは、リーダーとしての私の仕事でもある。オートデスクの有能で熱心な社員の多様性からして、それは研究のしがいがある優れた土壌だと言えるだろう。
確実に言えるのは、モチベーションは人により、また業界によって異なるということだ。例えば、特別な注目を集める仕事にやりがいを感じる同僚もいる。自分が関わった仕事を、会社の幹部がクライアントに、あるいは重要なイベントで話しているのを耳にするのは、心躍る経験になる。だが、評価を受けるプロジェクトの全てに、言及されない人も多数関わっている。あなたの仕事が大勢の前で称賛されるようになるには、かなりの時間がかかるかもしれない。だから、これを最大のモチベーションとするのは無理がある。それ以外のことで、ロケット燃料となるものを発見することが重要だ。
モチベーションの科学
ビジネス リーダーたちは、これまでモチベーションに対して、報酬と罰、「アメとムチ」といった時代遅れの外因性モデルでアプローチしてきた。40 年に及ぶ研究により、外因的報酬は、従業員のモチベーションにはほぼつながらないことが分かっている。これは、特にクリエイティビティや認知力が要求される仕事では顕著だ。アメとムチのアプローチは、退屈なルーチン ワークには応用できるかもしれないが、大抵の仕事には内因的な動機付けが必要となる。
ビジネスにおいては、こうした研究結果への順応が遅れていた。だが 2009 年、ダニエル・ピンクが「モチベーション3.0」を出版。この本でピンクは、ビジネスには内因的動機付け、特にクリエイティブな問題解決法について現代心理学から学べる点があることを示した。彼は、3 つの重要な動機付け要因について説明している。それは自律性 (自分で決定したいという欲求)、熟達 (スキルを向上させたいという衝動)、そして目的 (有意義で重要な何かをしたいという欲求) だ。
ピンクは読者に警告する。目的に価値を置かず、利益にしか関心のないビジネスは、カスタマー サービスが粗末で、不満な社員も多い、と。
モチベーションを見出す
それでは、何がモチベーションとなるのだろうか? 幸いにも私はキャリアの中で、いろいろな仕事に、さまざまなモチベーションで従事することができた。最先端のプロジェクトを統率したり、退屈だと見なされることもあるプロジェクトに関わったりしてきたのだが、常に自律性を保ち、膨大な数のカスタマーに影響を与えてきた。プロジェクトの内容を問わず、常に最高の仕事だと感じていたし、最高のパフォーマンスを提供するというモチベーションで取り組んだ。
最大のモチベーションは、やはり目的だ。カスタマーの数に関係なく、彼ら必要とし、頼りにする何かに対して責任を持つ立場であることに、常に大きな刺激を得ている。
自分を心の底からやる気にさせるものを理解することは、自分がどういう仕事にやりがいを感じられるのかを知るのに役立つ。内因的動機付けは、リスクを伴う新たな冒険 (Google Glass など) や、大きな影響力を持ったユビキタスな製品 (Google Search など) に関わりたいかどうかを判断するのにに役立つだろう。それは Apple Watch なのか、iPhone か? 太陽光エネルギーか、あるいは従来の電力会社か? その例は尽きないし、イノベーションは新興の組織、確立された組織のどちらにも生まれる。
目的主導の 3 カテゴリー
私は目的主導のモチベーションを 3 つの異なるカテゴリに分類している。新たな扉を開くこと、軋轢を取り除くこと、そして組織全体の提携だ。1 つ目は、カスタマーにとって新たな機会を作り出すイノベーティブな製品や機能に取り組み、新たな扉を開くことが動機となる場合だ。あるカスタマーは、モビリティと使い勝手の障壁を取り除く新製品による、全く新たな、奇抜なベンチャ―を構築している。新しい何かを発明する、こうした起業家の役に立つツールを構築することに、多くの同僚がやりがいを見出している。
2 つ目は、カスタマーのワークフローを合理化することにより、彼らにとっての摩擦を取り除くことが動機となる場合だ。こうした仕事は、全く新しい製品を構築する場合に比べると華やかさに欠けるように見えるかもしれないが、こうしたプロジェクトには、カスタマーに大変革をもたらす可能性が秘められており、それは新ツールの重要性をはるかに上回ることもある。チームが、より素早い描画やタスク完了までの手順の簡略化を実現すべくソフトウェアを向上させるかどうかに関係なく、製品に考えられる限りの効率性を詰め込むことに充実感を感じる同僚もいるのだ。
最後は、組織内部全体で提携し、より大きなチームの一部として働くことにモチベーションを見出す場合だ。孤立したひとつのチームだけで成功できるプロジェクトは少ない。課題を解決するため、エンジニアたちは財務やカスタマー サポート、マーケティングの各部門と連携することができる。提携による成功は、より広範な効果をもたらすこともある。このような解決策は、製品のひとつの機能がもたらすよりもずっと多くの影響をカスタマーに与えることも多い。
モチベーションをカテゴリに分類し、検討する方法は無数にある。読者が自分の特別なロケット燃料を見つけたとき、仕事はさらにやりがいのあるものとなる。それでは、あなたを突き動かすものは一体何だろう? 自ら仕事を指揮する自律性、専門能力の熟達、それとも、より大きな何かとつながるという目的だろうか? モチベーションは、読者のオフィスやキャリアで、どのような形で現れているだろうか?
私はこうした問いに、個人的にも、職業上でも興味をそそられている。自らのモチベーションをできるだけ明確に理解することは、やりがいのあるキャリアの要素のひとつだ。自分のモチベーションを見つけ、意欲的な同僚たちと共に働くことで、私の仕事はさらにやりがいのあるものとなっている。仕事が、単なる仕事以上のものに感じられるのだ。最も困難な挑戦に取り組みやすくなり、満足感をより強く感じさせてくれるのに役立つ。