技能再教育の革命: 製造業者はインダストリー4.0をどう生き延びるか
「スター・ウォーズ」のキュートなR2-D2から「2001年宇宙の旅」の邪悪なHALに至るまで、ポップ カルチャーには長年に渡り、大衆がAIに感じるためらいや不安が反映されてきた。
インテリジェントな機械は、人間にとってどういう存在なのだろうか。フレンドリーな仲間? 物腰の柔らかな殺人者? ロボットの反乱など信じられないという人もいる一方で、ロボットが人間に取って代わるという脅威は、もはや現実のものとなっている。それは、とりわけAI やロボット、産業の自動化による職の変化や排除が起きている製造業界においては顕著だ。だが勝負が決まってしまったわけではなく、こうしたイノベーションは、熟練工を必要とする新たな雇用機会も生み出している。
そして、その全てが技能の再教育のニーズをもたらす。それは新たな役割や、ときには異なる役割を担うことになる労働者の再教育プロセスだ。ここでは再教育の課題と、企業がこの取り組みにどのように力を入れているのかを紹介しよう。
1. コストはかかってもパートナーシップで実現可能
世界経済フォーラムによると、米国内で失職の危機にさらされている労働者の95%を対象に、新たな仕事に備えた職業訓練を提供するコストは340億ドル (3.7兆円) を超えるという。企業に利益をもたらす範囲で技能再教育が行える労働者は、その25%程度に留まる。だが事業パートナーシップや政府投資、官民パートナーシップなどの相乗的なソリューションにより、コストを削減し、より多くの労働者を再教育することが可能だ。再教育費用をどう負担するかはさておき、これは企業が職場での大きな男女格差に対処するチャンスでもある。女性は失われつつある職業に就いている場合が多く、雇用拡大が見込まれるAIなどの分野では割合が低いからだ。[参考記事 (英文)]
2. シンクタンクとコンサルティング会社が前進する道を提供
職を追われることになる従業員に対して、その最善の道を企業はどう特定できるだろう? 世界経済フォーラムとボストン・コンサルティング・グループが作成した転職ガイドは、さまざまな職種の労働者に対して、学歴や職歴、実習の必要性の有無に基づいた、最も実行性の高い転職機会を詳細に示している。このガイドは、企業が労働力を削減しようとする場合だけでなく、新たに生み出された自動化関連の仕事に熟練労働者を探す場合にも、その行動指針を提供できる。例えば労働者に自動化設備の設置や運用、保守を行わせる必要のある企業の場合、再訓練の必要性は最低限で、より高い成功の可能性を提供する仕事の種類を絞るために、このガイドを活用可能。ここでもパートナーシップによって支援を提供でき、両方の企業が連携で、合同で転職支援に取り組むことができる。 [参考記事 (英文)]
3. 長い伝統を持つハードウェア製造業者が再教育センターを公開
「ハードウェア シティ」と呼ばれるコネチカット州ニューブリテンに本社を構えるスタンレー・ブラック&デッカーは、変革を心得た企業だ。1843年創業のこのメーカーは、有名な巻尺など数百種類ものツールやストレージ、インフラ製品の製造元であり、3 度の産業革命を乗り越えてきた。現在は最先端の製造技術や再訓練プログラム用の新たな施設で、自社の労働力がインダストリー4.0に備える支援を提供しようとしている。約2,140平米のManufactory 4.0 は、50名の業界エキスパートを雇用し、新たなテクノロジーの促進と同社の工場労働者や従業員の訓練を支援。ネッド・ラモントコネチカット州知事は、同州の学校カリキュラムを調整することで、こうした企業が技能を有する人材を活用できるよう支援していると述べている。[参考記事 (英文)]
4. 自動車部品メーカーが北米3カ所目の研修所をオープン
ミシガン州にあるデンソーの北米本社で先進製造業に従事する労働者たちは、バトルクリークの新研修所で高速ビデオカメラや先進ロボット工学、IoT技術などを学ぶことになる。North Technical Training Centerはエンジニアリング関連の熟練工、機械技術者向けにデザインされており、自動化で生まれた新たな役割を果たすために役立つ、カスタマイズされた開発プランを提供。約200万ドル (2.2億円) を投じたこの施設は、自動車の熱機器関連やエンジン関連、電気・機器関連のコンポーネントを製造するカーパーツ メーカーのデンソーにとって、テネシー州とメキシコに続く、3カ所目の研修所となる。[参考記事 (英文)]
5. 移動教室により職業訓練を現地で実施
一部の製造業者は現地のコミュニティ カレッジと提携し、カスタマイズした技能訓練を労働者たちに無償提供している。この訓練は、移動式の訓練ユニットとして構成されたトレーラーを用いて現地で行われる。改造されたトレーラーは路線バスより少し長く、一般的な「セミトレーラー」のコンテナに似た形だが、内部は完全なビジネス仕様となっており、Wi-Fiやビデオ、ワークステーション、ハンズオン トレーニング ラボを完備。社外のコースに参加する時間のない、あるいは通う手段を持たない従業員にとって、移動教室は大いに役に立つ。オハイオ州のカヤホガ コミュニティ カレッジも、モバイル ユニットに投資している研修センターのひとつだ。そのトレーラー教室は、5週を除いて年内の全週が予約済みで、Ford Motor Company や住宅・商用向け配管製品の製造元であるOateyなど、州内9企業を訪問する予定になっている。 [参考記事 (英文)]