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BIMとプレファブリケーションで超高層ビルの中にサステナブルな都市を実現

プレハブ 工法 Tianjin Chow Tai Fook Financial Center レンダリング

平均的な都市生活者がマルチタスクの技能を身につけ、また多くの大都市が空へと伸び、現代の生活様式に応える超高層の多目的ビルが増えているいま、超高層ビル自体が優れたマルチタスクを実現しつつある。こうした超高層ビルは都市のスカイラインを拡張し、都市部と居住者につながる公共設備を提供する一方で、その設置面積は最小限に抑えることが可能。うまくすれば、消費する資源も最低限に抑えることができる。

では企業オフィスやショップ、高級アパートメント、5 つ星ホテルをサポートするサステナブルなビル空間は、どう建築すればいいだろう? ビルが、持続可能性と豪華さの両方を併せ持つことは可能なのだろうか? 中国国内第 4 の大都市、天津市の浜海新区にある Tianjin Chow Tai Fook Financial Center (天津市周大福ファイナンシャル センター) の本質は、高層ビルの中に存在する街だ。

この地上高 530 m、103 階建てのビルは China Construction Eighth Engineering Division Corp., Ltd. (CCEED: 中国建筑第八工程局有限公司) 最大のプロジェクトで、その湾曲したファサードが特徴的だ。サステナビリティ分野で業界を牽引する CCEED は、BIM テクノロジーとオフサイトのプレファブリケーションの活用により資源を保護し、廃棄物を最小限に抑えている。

プレファブリケーション Tianjin Chow Tai Fook Financial Center 建設中
このタワー プロジェクトは天津市浜海新区における主要な持続可能開発であり、LEED ゴールド認証の取得を目指している [提供: China Construction Eighth Engineering Division]

この超高層ビルプロジェクトにより CCEED は、建築/エンジニアリング分野における中国国内でも最高峰の賞である Luban Prise (中国建築魯班賞) と Zhan Tianyou Prise (中国土木工程詹天佑賞) の受賞と、プロジェクトの耐用年数期間全体に影響する項目である建築設計および建設、運用とメンテナンスという、サステナビリティに関連した 3 つの面での LEED ゴールド認証の取得を目指している。既にオートデスクの AEC Excellence Awards 2017 のコンストラクション部門では第 1 位を受賞しており、2019 年秋までの完成が予定されている。

国境を越えた建設作業

多目的の「超高層ビル内に存在する街」という、めまいがするほど大規模なシステム要件にビルのデザインを調和させるため、100 名を超えるメンバーで構成された CCEED の BIM デザイン チームは、プライベートクラウド サーバーにストアした中央モデルを作成。このモデルには、ほぼ 1,000の BIM モデルと 184,504 点のコンポーネントが必要だったが、単一のプラットフォームを作成することで、世界中に分散する関係者チームの、より効率的な建設プロセスが可能となった。

CCEED でプロジェクト マネージャーを務め、2000 年から超高層ビル建設に関わってきたベテランのスー・ヤゥ氏は「Tianjin Chow Tai Fook Financial Center は、米国や英国、香港、その他の国や地域のデザイナーが参加する、非常に国際的な建設プロジェクトです」と話す。

「これまでは、Excel ファイルとプロジェクト ファイルを他のコンポーネントと組み合わせる、従来からの建設アプローチを採用していました」と、スー氏。だが、これほどのスケールのプロジェクトでは BIM を用いることにより、各地に拡散したチームが現地の建設会社と連係し、モデルを簡単に読み込み理解して、データをリアルタイムで共有できる。

プレファブリケーション 構造柱
このタワーの湾曲した巨大な構造柱はオフサイトで製造され、建設現場で組み立てられた [提供: China Construction Eighth Engineering Division]

プレファブリケーション、持続可能性

このプロジェクトでは現場でのデザイン変更や保管、やり直しが許されなかったため、計画に忠実であるためには、オフサイトの工場との綿密な調整と連係が必要だった。LEED ゴールド認証を達成するための CCEED デザイン チームの課題には、2,000 種類もの材料を使用した 5 つ星ホテルの豪華なインテリアを、環境に配慮した構造内に取り付けることも含まれていた。チームは BIM を使用することで、図面に従った正確なコンポーネントをプレファブリケーションで製造することができ、材料の廃棄や現場での材料の切断作業を排除できた。追跡機能を向上させるため、チームはスキャン可能な QR コードを使用。このコードには設備の詳細や保守記録、材料の証明書などが含まれている。各モデルのコンポーネントは、1 つの QR コードで追跡可能。2,950 点のコードにより主要設備とプレファブ プロセス コンポーネントが追跡され、その全てはクラウド内で自動化されて管理される。

「QR コードを使用することで、チームはその管理情報とプロジェクトの配置情報を紐付けることができます」と、スー氏。「その後、この情報を整理することで、BIM プラットフォームに編集を加えることがより簡単になります」。

VR で空間を想像

BIM モデルから得られた情報を用いて作成された高度なツールとテクノロジーは、プロジェクト全体を通じて使用された。パイプ支持材の位置の設定と取付精度の向上には配線ロボットが、潜在的リスクの理解とそれを避ける方法を学ぶための 3,000 名のチーム作業員の訓練には VR が、それぞれ使用された。VR シミュレーションは、かなりの高さから転落したり、大きな落下物が当たったりという状況が含まれた、建設現場における安全の重要性を強調したものとなっている。

プレファブリケーション 建設現場
現場でキャプチャされたレーザー スキャンを確認する、プロジェクト マネージャーのスー・ヤゥ氏 [提供: China Construction Eighth Engineering Division]

CCEED は、ホテルやアパートメントの装飾テンプレートなど、デザイン要素の検証にも VR を使用している。これにより、デザイナーやオーナーは完成した空間内をバーチャルに歩き回って、さまざまな材料やデザイン スキームを体験できる。

すべてを最新の状態に

プロジェクトの製造から組立までのビルディング インフォメーションは統合され、最新の状態に保たれている。現場では、建設クルーは 3D スキャニングを使用して実際の現場と BIM モデルを比較し、必要に応じてモデルを修正して、現場の地理情報システム (GIS) の追跡データに合致させることが可能。こうした調整を行うため、現場の画像がドローンで毎日キャプチャされている。

ビルのカーテン ウォールには Revit の拡張プラグインとして Dynamo が使用され、3D 座標をインポートすることでデザイン プロセスの幾何学的要素の自動化に役立った。これによりプロセスが迅速化し、精度が向上する。「デザインを使用して、まずは位置データを収集し、次にカーテン ウォール パネルの配置を自動生成しました」と、スー氏。「その後、この情報を Revit へとエクスポートし、組立のパラメーターとして使ってファサード用の BIM モデルを生成しました」。

複雑なシステムの詳細

デザイン チームと建設チームを導いた BIM プロセスは、ビルの運用と保守にも継続して使用されることとなる。「チームはタワーの完成後、建設 BIM モデルをプロジェクトのオーナーに提供することになります」と、スー氏は話す。

プレファブリケーション Tianjin CTF レンダリング
ビルの滑らかで先細った形状は風荷重を低減させ、構造的効果を最大化する [提供: China Construction Eighth Engineering Division]

それを可能にするため、CCEED は BIM モデルの詳細度として、LOD (Level of Development) 400 を使用。ほとんどの要素で LOD 400 は十分過ぎるほどであるが、機械、電気、配管などの、より複雑なシステムに対しては、運用上のパラメーターを含む LOD 500 が使用された。

「モデルの一部は、オーナーがその情報を運用と保守のプロセスで使用できるよう、LOD 500 で作成する必要がありました」と、スー氏は話す。LOD 500 では、モデルの現地検証が行われ、さらに建設完了後にクライアントが使用できる情報が含まれる。これは、タワー内のさまざまな事業者にとって特に便利だ。

「モデルの一部は、オーナーがその情報を運用と保守のプロセスで使用できるよう、LOD 500 で作成する必要がありました」と、スー氏。LOD 500 では、モデルの現地検証が行われ、さらに建設完了後にクライアントが使用できる情報が含まれる。これは、タワー内のさまざまな事業者にとって特に便利だ。非常に多様な空間をデザインするチームは、当然ながら建設上のさまざまな課題に直面した。だが包括的なプラットフォームを用意したことで、これまでのところはスムーズに調整を進めることができている。例えば、ある地階には「数多くの機械系、電気系、配管系が集まっています」と、スー氏。「その 1 フロアに 100 を超える種類の機械系が存在しているため、チームは建設作業期間を延長する必要がありました」。

ビルの未来

スー氏は、将来的には建設プロジェクトにおいて、建設作業員や施工会社を含む関係者全てが、統合 BIM モデルを使って連携する必要があると考えている。「こうしたアプローチは中国、そして世界各地における建築物や超高層ビルの建設方法を変えることとなるでしょう」と、スー氏は話す。

Tianjin Chow Tai Fook Financial Center のようなプロジェクトは、対象となるエンドユーザーに、住まいとマルチタスクの新しい在り方を想像させる。成長の余地は、特に垂直方向には、まだ大いにある。そして、環境を犠牲にする必要もない。CCEED のような企業各社は、入念な計画と新たなテクノロジーによって能率化されたアプローチを活用して、そこに居住し、集う賢明な人々の要望に応える、超高層の構造物を開発することができるのだ。

著者プロフィール

ロゼルはカリフォルニア州サンフランシスコとインドネシア バリを行き来するフリーランスのジャーナリスト、コピーライター、デザイナーです。

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