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ポットホールの補修を進化させる 7 つの画期的イノベーション

ポットホール
Pothole Terminator [提供: Mechanical Concrete]

「地獄への道は善意で舗装されている」という諺はご存知だろう。だが実際のところ、「地獄への道の舗装は穴だらけ」なのだ。

春になって気温が高くなると、雪解け水が道路のひび割れや継ぎ目に染み込み、それが凍結して隙間を広げることで、道路に「ポットホール」と呼ばれる穴ができる。クレーターだらけの月の表面のような景色が生まれてしまい、車による通勤が、スーパーマリオカートの穴だらけのスペシャルカップのようになってしまう。

ドライバーにとって、このポットホールはやっかいものだ。その補修に米国では毎年 30 億ドル (約 3,300) 億円以上が必要となり、フリーウェイや街、さらには空港全体を機能不全に陥ることすらある。[編注: 日本でも北海道などで毎年のように問題になっている]

ポットホール
ポットホールは全てのドライバーにとって面倒な問題だ

しかも、このポットホールは単にわずらしいだけでなく、ドライバーや歩行者の生命をも脅かす脅威となる。米国では高速道路における死因の第 3 位であり、インドでは毎日 10 人が死亡。テロよりも致命的だとされている。

このポットホールの一般的な対処は、アスファルトなどの合材を直接投入する「投げ込み補修」だが、これは低コストながら応急的な処置に過ぎない。だが新たな方法と材料によって、より迅速に実施でき、パッチングの有効な期間を延長し、恐らくはポットホールの発生自体を抑えられることになりそうだ。

1. 道路がよりセンシティブに

舗装道路のポットホールを修理する最初のステップは、その存在を認識することだ。外部電源不要な道路センサーの ePave ネットワークが実現すれば、その自動化が可能。米国・バッファロー大学と中国・長安大学の共同プロジェクト、ePave システムで使われるワイヤレス道路センサーは、車両による機械的な振動で生み出される圧電気で動作する。ネットワーク認証装置ほどの大きさのセンサーが、湿度や圧力など、問題の存在を示すサインを感知し、リアルタイムのデータを地方機関へフィード。初期実験によると、このセンサーは 20 年ほど機能できそうだという。 [英文記事を読む]

2. ブロックチェーンにより問題をドライバー自身が解決

収めている税金では自分が住む街のインフラの十分な修繕ができないなら、クラウドファンディングで解決する方法がある。カリフォルニアのスタートアップ企業 PotholeCoin は、コミュニティ クラウドソーシングとスマホアプリ、デジタルトークンと自動化の組み合わせにより、修繕の資金をドライバーに出させようとしている。その仕組みは、ドライバーがアプリ上でポットホールを登録し、修理に対する報酬を提供するというもの。適切な累計額に到達すると、アプリは修理を行う (公的な、あるいは私的な) メンテナンス組織へと通知を行い、アプリから支払いが行われる。このプラットフォームは、現在 PayPal を使ってテストが行われており、次のフェーズでは暗号通貨モデルが開始される。[英文記事を読む]

3. 車載 AI でポットホールの補修を迅速化

自動車部品メーカーの CarVi が開発中の車載 AI システムは、ポットホールの検出とレポートをリアルタイムで行う。フロントガラス カメラに統合された 9 軸モーションセンサー CarVi の衝突警報デバイスに内蔵されたシステムが、前方の道路にある既存、新規のポットホールをスキャンし、転送された情報を先進的な深層学習技術で分析。そのデータが、地域のインフラ代理機関へと送信される。サンフランシスコでのテストでは 300 ものポットホールが発見された。CarVi は当局と協力して、道路の危険地域を優先付け、問題のある場所の識別を行うアルゴリズムを開発している。[英文記事を読む]

4. マイクロ波と磁鉄鉱のパワーを活用

地質鉱山技師、ミネソタ・ダルース大学天然資源研究研究所上級フェローのラリー・ザンコ氏は、ミネソタの鉱山で採掘できる鉄鉱石、マグネタイト (磁鉄鉱) を活用してポットホールを補修する 2 種類のソリューションを開発中だ。

その方法のひとつはアスファルト道路に適用できるもので、マイクロ波でポットホールと周囲の舗装道路を熱し、マグネタイトとリサイクルしたアスファルトの混合物でポットホールを埋めるというもの。詰め物に再度マイクロ波を当て、封印する。もうひとつの方法はコンクリートとアスファルトの道路で使えるもので、注液したマグネタイトと骨材のミックスを、熱を加えずにポットホールへ注ぐ。両ソリューションのテストは 1 年以上続けられている。[英文記事を読む]

5. クレーターを全滅させる Pothole Terminator

ポットホールを無くせば、パッチングの必要も無くなる。Mechanical Concrete の施工方法を発展させた Pothole Terminator は、廃タイヤで作った円筒を使い、砕石や他の骨材を永久構造物に閉じ込めることで道路の基礎を強固にし、構造物の崩壊につながる材料の侵入を防ぐ。強固で耐侵食性があり、毎年約 3 億本 もの自動車タイヤが埋め立てに使われている米国では、歓迎すべきグリーン イニシアチブとなる。[英文記事を読む]

6. バクテリアが参戦

米国では毎冬 2,000万 t もの塩が道へ撒かれており、これは国民ひとりあたり 56 kg に相当する。雪や氷には有効な方法とは言え (環境面への影響には議論がある)、道路には亀裂や隆起、ポットホールなどの深刻な問題を起こしている。だが、ドレクセル大学の研究者たちが、その破壊的な影響をバクテリアの助けで解決できるかもしれない。

道路に塩を撒くことで生まれるオキシ塩化カルシウムが、コンクリートが伸張して水が侵入する裂け目の原因となり、温度が上下することで破壊が起きる。だが研究者がスポロサルシナ・パストゥリ バクテリアを活用したコンクリートの場合は材質の pH が上昇し、塩との反応によって、より害の少ない副産物である石灰石、つまり炭酸カルシウムが作られた。微生物で強化されたコンクリートを塩化カルシウムで処理する実験ではクラックが発生しなかったが、その保護作用がどれくらい継続するかを特定するには、さらなる研究が必要だ。[英文記事を読む]

7. ドローンと 3D プリンターがポットホールへ連続攻撃

歯腔と同様、ポットホールも、早く発見すれば、それだけ修理も簡単だ。英リーズ大学の研究者は、画像認識機能を持つカメラを使った道路検査のシステムをテストしており、ポットホールが出現したらすぐにパッチングする、3D プリンター搭載のドローンを配置している。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの共同研究者は、Leeds ハイブリッド空中/地上車両へ 1 mm 精度のアスファルト抽出機を搭載。この実験は、自己修復都市でロボットがインフラ修繕をアシストする方法を研究する、複数の大学によるプロジェクトの一部となっている。[英文記事を読む]

著者プロフィール

RedshiftのAECセクション・エディターを務めるサラ・ジョーンズは、ベイエリアを拠点とするライター、エディター、ミュージシャン、コンテンツ・プロデューサー。サラの記事は「Mix」「Audio Media International」「Live Design」「Electronic Musician」「Keyboard」「Berklee Today」「The Henry Ford」「Grammy.com」などに掲載されています。

Profile Photo of Sarah Jones - JP