誰もが利用できる製造の自動化がジェネレーティブ デザインから
ジェネレーティブデザインはトポロジー最適化や手続き型モデリングの一分野に過ぎないと考えている人もいるようだ。だが実際には、それ以上にずっと重大な変化だと言える。このアプローチはAIがドライブするプロセスであり、クラウドを活用することにより、既存のアイデアから単に余計な材料を除去するだけ (トポロジー最適化) でなく、数千もの可能性を模索することでイノベーションが後押しされる。
そこを把握している方であれば、このジェネレーティブデザインが製造の自動化の未来で、革新的な可能性を持つと確信しているに違いない。だが同時に、3D プリンターによる積層造形技術でしか製造できない、複雑な形状の場合にのみ有益なテクノロジーだと考えているかもしれない。
これまでに目にしてきたジェネレーティブデザインの例には、確かに金属を材料に使ってプリントされた、複雑な構造で現実離れした外観のものが多かった。その理由のひとつに、ジェネレーティブデザインで生み出されたものが、従来の製造手法とは結びつかない点が挙げられる。この技術は、製造会社に何億円もする金属3Dプリンターを購入する余裕がなければ利用が難しいため、ほぼ関係の無いものになってしまうのだ。
製造の完全な自動化を導入するためには、初期コストが高すぎるもの、複雑過ぎるものが多い。1960年代に初めて産業用ロボットが利用可能になったときも、それを導入する余裕があったのはGM ような大企業だけだった。ジェネレーティブデザインは、製造プロセスの解釈をもとに生成されたシミュレーション結果から設計ジオメトリを生み出す自動化プロセスであり、手の届かない最新テクノロジーだと思えるかもしれない。だが製造業界の企業にとって朗報なのは、ジェネレーティブ デザインによる自動化の範囲は拡大を続けており、従来の方法によるプロセスも包含されるようになっていることだ。
ジェネレーティブデザイン ソフトウェアは、鋳造や機械加工など製造上の制約を条件とすることにより、既に工場に存在するツールや装置で製造可能な結果を生成できる。こうして得られた結果は、実現可能であると同時に、そのコストも手頃なものだ。
例えば、ジェネレーティブデザインの結果として得られた、車椅子の金属製サポートパーツの3つのバージョンを考えてみよう。各バージョンの機能と性能、条件、材料と大まかな形状など本質的な部分は全て同一で、唯一の違いが製造プロセスだ。
オリジナルは金属ダイキャスト製で、加工機械のコストが償却済みであれば、製造コストの単価は約15ドルになる。より一般的な複合工作機械で行われる3軸フライス加工の反復の場合、有機的な形状の加工に長い時間が必要なため、そのコストは100ドル近くになる。3番目のオプションである2.5軸フライス加工は、理想的なものだと言える。ダイキャスト製の部品が持つ全ての利点をもたらしつつ、コストはわずか25ドル。オリジナルからそれほどかけ離れていないコストで、デザインの問題に対するベストなソリューションが得られる上、カスタム工作機械を必要とせず、工場にある既存のマシンで作成できる。
製造プロセスが、製造するジオメトリの種類に大きな影響を及ぼすのは明白だ。そして誰もがジェネレーティブデザインのテクノロジーを、既存の設備を利用した製造手段に応用可能になっている。だが、製造の自動化はジェネレーティブデザインでは終わらない。
自動化における、次の飛躍的な進歩の実現には、コンセプトから実際の製品までの連続的なワークフローを可能にするデジタルパイプラインが必要だ。現在の製品開発の基本的なワークフローでは、エンジニアが設計ジオメトリをある程度完成させると、それが別の誰かに渡ってシミュレーションが行われる。それがGコードで加工手順を作成する別の人物に引き継がれる前に、シミュレーションと認証を完了することが必要だ。このGコードファイルは、大抵はメモリースティックにコピーして工場へ持ち込まれ、マシンオペレーターが制御装置にロードして、実際の金属加工がスタートする。このウォーターフォール型ワークフローは直線的で、極めて非効率だ。
将来的に、より優れた方法となるのは、自動化されたアジャイルな製品開発プロセスだ。何らかの形態で並行処理が可能となり、デザインの完了を待たずに、誰かがシミュレーションの研究に取りかかれるようになる。そして、このシミュレーションから得られるフィードバックを元に、デザインが全て完了する前に、また別の誰かが加工手順をスタートできる。
これにより、19世紀の工場とは異なり、競争力の高いスポーツチームのように業務を機能させることができる。プロセスの要素を同時進行させれば、製品の製造にかかるトータルの時間を短縮でき、より優れた製品革新、より高い製品性能、より低コスト、より早期の市場投入につながる。これら全てが、良好なビジネスに重要な特性だ。
その実現には、前述のデジタルパイプラインを作る必要がある。ソフトウェア内で作成される加工手順とマシンツールの間の直接的なコネクションだ。この場合、Gコードはバックグラウンドで作成され、デザイナーが意識することなくマシンツールへ直接送信される。紙に何かを印字する際のことを考えてみよう。データは、ワードプロセッサーからネットワーク経由でプリンターに直接送信される。ネットワーク上でファイルをコピーしたり、ワードプロセッサーに入力した内容を、USBフラッシュメモリを抜き差ししてプリンターに伝えたりはしない。マシンとCAD/CAMアプリケーションのネットワークを用いた製造も、それと同じなのだ。
こうした製造の自動化は、有益だがまだ直線的なものであり、そのため不完全だ。情報はマシンツールに送信されるが、フィードバックは得られない。マシンツールの制御装置がツールの性能に関する情報もキャプチャできるようになれば、さらに優れたものになるだろう。そうした自動化ではクローズドループのフィードバックが提供され、マシンツールから情報を取得して、機械加工の手順がリアルタイムに更新可能となる。
CNCマシンが金属を加工する際には、スピンドルが回転し、カッターによって金属が削り取られる。制御装置は、スピンドルにかかる圧と、その最大能力を把握している。例えばスピンドルが動作中に最大荷重能力の50%以下で動作している、つまり性能の50%が活用されていない場合は、それを把握する。
マシンの制御装置にネットワークで直接つながっていれば、制御装置に「耳を傾けて」、設計ソフトウェア内で自動生成された加工ストラテジーをリアルタイムに更新できる。スピンドルの負荷が50%だと把握できれば、スピンドル速度を上げてカッターの切削スピードを上げたり、より多く削り取れるようカッターをさらに深く入れたり、ということができる。いずれの場合も、スピンドルの圧を上げて、マシン動作を最大性能に近づけることが可能。それはメーカーにとって、より迅速かつ高効率な工場での製造を実現できることになる。
ジェネレーティブデザイン、デジタルパイプライン、クローズドループのフィードバックという製造の自動化の3形態は、新たな作業手法の有力な例だと言える。従来の製造上の制約事項をAutodesk Fusion 360に入力して、そのジェネレーティブデザイン機能を使用することにより、最適なデザインソリューションを生成できるようになった。近い将来、デジタルパイプラインとコネクティビティによる工場での情報の再利用が、事業の成果を良い方向へと変化させるに違いない。製造会社に最良のときが訪れるのは、これからなのだ。