業界に大改革をもたらす革新的な建材10種
光を発するセメント? 火星での建設用のコンクリート? 半透明の木材? 生分解可能な家具? 汚染を吸収するレンガ? どれも常軌を逸したアイデアに思えるかもしれないが、これらは建設業界を次のレベルへと進めるべく、世界各地で行われている革新的な建材の研究プロジェクトのごく一部だ。
これらのプロジェクトの背景となる動機について、また大規模な検証がスタートしている「実験」がどう実施されているのかを、以下で紹介している。
KTH が開発した新材料、半透明木材: ストックホルムのスウェーデン王立工科大学の研究者グループが先ごろ開発した Optically Transparent Wood (TW) は、光透過性の新材料で、建築プロジェクトに大きく影響を与える可能性がある。アメリカ化学会の「Biomacromolecules」ジャーナルに掲載された記事によると、これは化学作用により木材からリグニンを除去するプロセスで、木材を白色化させる。その結果として得られる多孔質基体に透明のポリマーを添加することで、両方の光学特性を安定化させられる。
空調を置き換える壁: アレーティ・マルコポウロウ氏が率いる カタルーニャ先進建築研究所 (IAAC: Institute for Advanced Architecture of Catalonia) はハイドロ セラミックと呼ばれる新材料を生み出した。これはヒドロゲルの泡から構成されており、最大 400 倍の体積の水分を貯水できる。この特性により球体は水分を吸収し、真夏日には含まれる水分を蒸発させて空間の温度を下げることができる。
タバコの吸い殻で、より効率の優れたレンガを製造: ある者にとってはゴミでしかないものが、別の者には建材となる。ロイヤルメルボルン工科大学 (RMIT 大学) の研究者たちは、タバコの吸い殻を使用してレンガを作る技術を開発した。アッバス・モハジェラーニ博士率いるチームは、粘土でレンガを作る際、その体積の 1% にタバコの吸い殻を使用すると世界の年間タバコ生産量を完全に相殺できると同時に、より軽量で効率の優れたレンガを作成できることを発見した。
クリストとジャンヌ=クロードの浮かぶ桟橋: この作品は、10 万平米の黄色の布で包まれた 3 km にわたる歩道と、22 万個の高密度ポリエチレン立方体の浮桟橋システムから構成されている。
火星での建設に使用されるコンクリートとなるか? 火星への移住が現実となった際には、水は最も重要な資源のひとつとなる。ノースウェスタン大学のチームはコンクリートを作る際に代用となる、新たな配合を探し求めた。選択したのは、1970 年代初期から開発が続いているテクノロジーで、硫黄をベースとするコンクリートだった。
光を発するセメント: 新しい建設モデルへの対応として、モレリアのミチョアカナ・デ・サン・ニコラス・デ・イダルゴ大学 (UMSNH) のホセ・カルロス・ルビオ・アヴァロス博士は、エネルギー効率面でより高い機能性と多用途性を有するコンクリートを提供するべく、光エネルギーの吸収と発散を行う性質を持つセメントを開発した。
世界最軽量の耐震補強: 日本の企業、小松精練ファブリック・ラボラトリーは、「CABKOMA (カボコーマ)」ストランドロッドと呼ばれる新しい熱可塑性炭素繊維を生み出した。この炭素繊維は合成繊維や無機繊維でカバーリングされており、熱可塑性樹脂が含浸されている。この新繊維は、隈研吾氏の設計による小松精練ファブリック・ラボラトリーの外観に使用されている。
生分解可能な家具、Terreform ONE: 堆肥から椅子を作れないだろうか? これは機械による製造ではなく、生物学的に製造されたベンチを用いた一連の実験により提起された問いだ。Terreform ONE と Genspace は、類似するプロセスによる 2 種類のバイオプラスチック製の椅子を共同で開発した。ひとつはシェーズ ロング (長椅子) で、白色のあばら骨のような特徴的な構造の上にクッションが配置されている。もうひとつは子供用で、連結するセグメントで構成されており、椅子を 2 種類の異なる形状へと曲げることができる。
汚染を吸収するレンガ: Breathe Brick は、建物の標準換気装置の一部となるようデザインされており、二層式のレンガ製ファサード、および外面に特殊レンガが使用され、規格に基づく断熱性を提供する内面層がそれを補完する。Breathe Brick を支えるのは、Cyclone Filtration (サイクロン式ろ過) と呼ばれるコンセプトだ。これは最新型掃除機から取り込まれたアイデアで、重い汚染粒子を大気から分離し、壁の底部に設置された取り外し可能なタンクに集める。
TU Delft がバイオコンクリートのプロトタイプを開発 ― 自己修復するコンクリート: デルフト工科大学 (TU Delft) が開発した配合は、単なる外観損傷の修復を越えるものだ。コンクリートの割れ目は、大きくなると水を通すようになり、鉄筋の腐食を許してしまう。それによって構造の力学的性質が損なわれるだけでなく、計算段階でより多くの鉄筋の使用をエンジニアに強いることとなり、最終的な生産コストが上昇してしまう。
Article by Begoña Uribe. This article originally appeared on ArchDaily.