BIM の小規模精鋭チームを建築事務所で構築する 4 つのコツ
そびえ立つ高層ビルや壮大な橋梁、広大なトンネル、イノベーティブで独創的なデザイン。建築や土木・インフラの業界は、「ビッグなこと」を具現化する仕事だと言える。だが、熱意と目標に根ざしていれば、規模が小さくてもパワフルであることが可能だ。Axoscape は、まさにそれを成立基盤としている。
テキサス州ヒューストンを拠点とする Axoscape は、建築家や施工会社、協力会社が BIM (ビルディング インフォメーション モデリング) を理解し、業界における重要性を保つことができるよう支援している。わずか 9 名の小規模なチームながらも専門的な BIM サービスを提供する同社は、ハリケーン・ハービーの被害のレーザー スキャンのような写真測量から、Habitat for Humanity や Houston Food Bank などのコミュニティ支援団体とのパートナーシップ提携まで、意義深いプロジェクトを引き受けて大きな影響を与えている。
Axoscape を設立したダット・リエン会長は「自分たちが正しいと思えることを行う機会が得られました」と話す。「そうした取り組みへの熱意が、意図せず注目を集めることになったのです」。
リエン氏はハイチ・グランバンナンの児童養護施設本部のデザインを機に、起業に対する自信を得た。建築関連のバックグラウンドを持つ氏は、エンジニアと現地の建築家、コミュニティのメンバーからなるチームを構成し、最適な取り組みを検討。このチームがスキャンした画像は、ソーラーエネルギー企業 Freedom Solar による、持続可能な電力をもたらす効率的なパネルの取り付けにも役立った。重要なのは「人助けのために自分たちの経験を生かせる場所を探すこと」だ。
小さなチーム、意義ある影響
理論を実践に取り込む Axoscape の初期の課題に、2017 年 8 月にテキサスを襲ったハリケーン・ハービーの災害後に行われた復興支援があった。このハリケーンは 100 兆立法ガロン (102兆2,000億リットル以上) もの雨をもたらし、州内全域の氾濫を招いた。被害額は推定 750 億ドル (約 8.4 兆円) に達し、何千もの人々が家を追われることとなった。
このプロジェクトは、リエン氏の友人と同僚が、ハリケーン後の家屋の損害状況のスキャンを依頼したことで始まった。氏とチームは、フォトグラメトリーとレーザー スキャンを使い、この家屋の 3D モデルを作成。「建物の様子を示す、起点となるものを提供できました」と、リエン氏。
現在、氏はクラウドソースによるマッピングを検討している。この手法では、コミュニティの住民が、それぞれ自分たちでリアリティ キャプチャを実施。各住宅の内部を 360 度写真、外部はドローンを使って撮影し、撮影したすべての画像をフォトグラメトリーでつなぎ合わせることで、非常に詳細な 3D モデルを作成できる。このプロセスは今後の災害に対して備えることにも役立つ可能性がある。スキャン結果は、災害後の再構築や損害の評価に使えるからだ。
「災害はいつ起こるのか分かりないので、身の回りの記録を取っておくのは賢明です」と、リエン氏。「現況のデータを収集しておくことが大切です。大きな災害が起こった場合、適切な判断を行うための情報提供に、このデータをどう役立てられるでしょうか?」
そのリエン氏に、建築や土木・インフラの企業がチーム規模をコンパクトにとどめつつ、業界、さらには世界へ大きな影響を与えるためのアドバイスを提供してもらった。
1. イノベーションを刺激する、適切な組み合わせの人材を採用
リエン氏は、イノベーションの支援には 2 つのタイプの人材が必要であることを見出した。いつも朝早く出勤して仕事をこなす人と、遅くまで職場に残って研究や実験に没頭する人だ。「どちらも必要です。皆が一緒で同じようなことをやっていても、こうしたイノベーションは生まれません」と、リエン氏。
複雑な問題の解決には、多様なスキルセットが不可欠だ。さまざまな問題に、それぞれ異なる解決策が必要となるため、最良の結果を得るには、バラエティ豊かなアイデアや視点が必要になる。難しいのは、個性の適切なバランスを見いだすことだ。「簡単ではありませんが、全員がそれぞれのバックグラウンドと貢献分野を理解していれば、うまくいくことも多いのです」。
2. 企業文化を構築して、それにこだわる
リエン氏が採用する多種多様な人材は、企業文化を通じて団結している。例えば Axoscape は毎週金曜に催すランチ ミーティングで、チームの関心の維持とスキル開発を行う。氏とチームはゲームにも興味があり、新たな人材を雇用する際も、そうした企業文化に合致してプラスのエネルギーをもたらす人を求めるようにしている。「職場を楽しもうという、強い思いがあります」と、リエン氏。「毎週金曜はこのメディア ルームに集まり、皆でロケットリーグをプレイしています」。
3. 意義ある仕事を求め、獲得する
リエン氏は、根本的にやりがいがあり、意義のある仕事を選択するようにしている。例えば施工会社に技術情報の提供を行うことや、BIM やリーン コンストラクションを通じて Hudson Building Systems などの企業の機敏性と効率性向上を手助けすることなどだ。Hudson Building Systems に対しては、手戻りを削減し、より正確なデータを収集することで、建設のリスクを最小限に抑えるプランの早期作成を支援した。引き受けるプロジェクトの決定において、決定的なのは価値の提供だと、リエン氏は話す。
「正しいことをしている、誰かのためになっている、テクノロジーを良いことに利用していると感じさせてくれる、というプロジェクトです」と、リエン氏。「テクノロジーを利用した上達、ワークフローの向上、ある程度のビジネスの改善を支援できれば、それは素晴らしいことだと思います」。
4. より大きな公共利益のためチームのキャリア育成を助成
建設業界における技能不足は増大しており、熟練労働者やエンジニアリング関連の人材不足は悩みの種だ。
Axoscape は、こうした技術的な卓越性の欠落を埋めたいと考えている。同社のフォトグラメトリー スペシャリスト、ザビア・ロアイザ氏は「この問題を大局的な視点から検討するため、Axoscape は実績のあるテクノロジーを用いて、デザインと建設をひとつに統合する役割を担っています」と話す。「サポートを必要とする施工会社に、ツールの使用方法を教えたり、ワークフローやプロセスの作成を支援することで、手間から解放するのです」。
またAxoscape は人材の育成と技術習得のサポート、Autodesk BIM 360 や Revit などのツールの使用方法を教えることで、建設業界の要求に応える役割を果たすと同時に、人材が技術の加速に後れを取らないようにしている。
Axoscape が雇い入れた、Forever 21 で働いていたスタッフは、小売業界を去ると Axoscape を通じて新しい分野の仕事を学んだ。「彼は人生におけるチャレンジを望んでいました。私たちは、その機会を提供したのです」と、リエン氏。
「Axoscape の信念は、経験の浅い新卒者に対して、チャンスや機会と、少しの経験を提供することです」と、氏は続ける。「彼らは経験がないため、雇用主を見つけられません。私たちは、この分野における経験が豊富です。テクノロジーを導入する時間とリソースがない、他の建築会社を支援できればと考えています。私たちが人材を育成すれば、彼らが業界コミュニティの一助となるのです」。
Axoscape は、専門知識をテクノロジー、熱意、意義と組み合わせることで、小さなチームがどれほどパワフルになれるのかを体現している。