LEED 認証の取得に BIM を活用している世界の建築物 7 例
建築物の建設には、膨大な調整が必要だ。しかも、それが LEED 認証に適合する建物であれば、全く異なる次元の挑戦になると言えるだろう。LEED (Leadership in Energy and Environmental Design) は、世界で最も広く採用されている建築物環境性能総合評価システムであり、構造物が環境への配慮と資源の効率化を踏まえて施工されていることを確認するため、利害関係者の間で建設の全段階に渡るコラボレーションが必要とされる。
デベロッパーが設計者のビジョンを実現し、LEED 認証を取得するために BIM を採用する機会が増えている。BIM (ビルディング インフォメーション モデリング) は設計、施工チームの作業を効率化し、計画、設計から施工、維持管理まで、プロジェクト全体のコーディネーションやシミュレーションを向上させる。
世界の人口が 2050 年には 100 億人に達すると予想される中、未来を見据えたサステナブルな建物を建設する重要度も、かつてないほど高まっている。ここでは LEED 認証取得のために BIM を活用している、世界の建築物の例を紹介しよう。
1. LEED と Living Building Challenge で実現する世界で最もグリーンなワイナリー
米国カリフォルニア州ナパの Silver Oak Winery は 2006 年の火事で、その施設と 2 億円相当以上のワインを焼失した。オーナーたちは、その直後にサステナブルな方法による再建を決意し、LEED プラチナ認証を受けた世界初のワイナリーが実現。その後、同州アレクサンダーバレーに 2 番目のサステナブルなワイナリーを建設し、このワイナリーも LEED プラチナム認証を受けている。ワインのクオリティの高さと、施設にソーラーパネルを統合して実現するサステナビリティのバランスを取るために BIM のテクノロジーが役立てられ、ワインの温度や LED ライトのコントロールなどに活用。樽やタンクの洗浄や床の清掃にはリサイクル水を使うことで、ワイン造りに必要な飲用水の量を減らしている。 [ストーリーを読む]
2. “The Great Good Place” がサステナブルな革新性でバンコクの住民をコネクト
バンコクのような大都市での生活は、見知らぬ人たちによる海の中へ沈められたように感じ、それが分離や孤立の感情を助長することがある。タイを拠点とするデベロッパー、MQDC (Magnolia Quality Development Corporation, Ltd.) が、人々を孤立させるのでなく連携できるスマートシティの建設を行ったのも、それが理由だ。WHIZDOM 101 と名付けられたスマートシティは、オフィスやレストランなどと隣接したジョギング用トラックやライブラリー、グリーンなスペースなど、コミュニティの設立を誘う空間を備えた約 69,000 平米 (東京ドーム 1.5 個分の敷地に相当) のキャンパスになっている。MQDC は LEED ゴールド認証の取得に BIM を活用し、建設時の廃棄物を最大 15% 削減し、トータルでのカーボンフットプリントを制限することに役立てられた。 [ストーリーを読む]
3. ドバイの未来博物館が世界で最も複雑な建物に
ドバイの未来博物館 (Museum of the Future) の完成形は非常に未来的な形状であるため、その設計者は実現可能であることを確認する必要があった。建築事務所の Killa Design は、BuroHappold エンジニアリング、建設会社のBAM International とともに、芸術とエンジニアリング、建設の見事なコンビネーションをデザイン。BIM ソフトウェアを活用し、コレボレーターが博物館全域のウォークスルーと各要素の確認を行える没入型ビジュアライゼーションを作り上げた。このコラボレーティブなプロセスは、再生材料を含有する製品の使用、太陽光発電、内部空気回収方式など 50 を超えるサステナブルなデザインの決定につながり、チームの LEED プラチナ認証取得も実現している。 [ストーリーを読む]
4. BIM とプレファブリケーションで高層ビルの内部にサステナブル シティを
中国第 4 の都市に建設される Tianjin Chow Tai Fook Financial Center (天津市周大福ファイナンシャル センター) は、オフィスビルとショッピング センター、高級アパートメント、5 つ星ホテルが収められた、高層ビル内の都市と言える。サステナビリティの業界リーダーである CCEED (China Construction Eighth Engineering Division Corp., Ltd.: 中国建筑第八工程局有限公司) は、LEED 認証を要求。設計者のビジョンを維持しつつ LEED ゴールド認証の取得を実現するため、チームは BIM による設計図に忠実なコンポーネントを製造するプレファブ工法を採用し、廃棄物や現場での材料の加工を回避した。 [ストーリーを読む]
5. サンフランシスコ国際空港のビジョンを実現する“ビッグ ルーム”コラボレーション
サンフランシスコ国際空港 (SFO) がターミナル 1 を解体後に建設するモダンでサステナブルなターミナルは、LEED ゴールド認証の取得を目指している。建築事務所 Woods Bagot と HKS、Kendall Young Associates、ED2 Internat で構成された Austin Webcor Joint Venture 率いるチームが手がける、この 24 億ドル (約 2,660億円) のプロジェクトには、51,000 平米の搭乗エリアと 27 カ所のゲート、営業スペース、アメニティ設備のプランニングと革新的な手荷物処理システムが含まれる。プロジェクト チームは、大きな問題の解決や優先度の認識、ソリューションの調整のBIM を活用している。 [ストーリーを読む]
6. ブルガリの新たなファクトリーが伝統をアップデート (かつ宝石泥棒を撃退)
ブルガリは、イタリアの輝かしい宝石作りの歴史に敬意を表し、よりサステナブルでセキュリティの高い新ファクトリーの建設地として、以前は黄金の都市として知られたヴァレンツァを選択した。建築事務所 Open Project はコラボレーティブなデザインのアプローチに BIM テクノロジーを活用し、この地の文化的な重要性を維持しつつ、ブルガリの厳格なセキュリティとサステナビリティの要求に応えている。この施設は全体で 14,000 平米にも及ぶもので、LEED ゴールド認証を取得している。 [ストーリーを読む]
7. BIM のエヴァンジェリストが病院への期待値をさらに向上
施工管理のパイオニアである Lexco は中南米第 2 の規模となる病院の管理を委託されている。公立病院であり、医療観光でも人気が得られるよう、この病院は LEED 水準のエネルギー効率とサステナビリティに関する要求、厳格な医療規格を満たすようデザインされている。室内の大気環境を 25% 向上させ、機械力を 25% 低減させる外壁パネルのほか、有害な X 線 や紫外線をカットする窓ガラスやパーティションを採用。Lexco は BIM を設計・施工だけでなく、ファシリティ マネージメントにも活用している。 [ストーリーを読む (英文)]