ジュエリーの3Dプリントによりテック業界で活躍する女性を称賛
ボタン、カーソル、アイコンからスクロール バー、スライダー、トグル スイッチまで。今日のデジタル エクスペリエンスは、ユーザーインターフェースの要素に大きく依存している。それらのコード化されたコンポーネントを使うことで、デジタルの世界でクリックやドラッグ、ドロップ、ロード、ズームが可能だ。
ユーザーインターフェース デザイナーのアメリア・ディグル氏は、デジタル エクスペリエンスの向上に精通した人物だ。彼女は現在、こうしたデジタル エクスペリエンスにHuman Interface Jewelleryを通じて命を吹き込んでいる。ニュージーランドを拠点とするこの会社は 3Dプリントを活用して、ユーザーインターフェースの要素にインスピレーションを受けたオーダーメイドのジュエリーを製造。ディグル氏の作品には、カーソルを模したイヤリング、実際に操作可能なトグルボタンのリング、好きなだけ上下に動かせるスクロールバーのネックレスなど、金や銀、チタンで作られた、遊び心がありエッジの効いた作品が並んでいる。
Human Interface Jewelleryは、ディグル氏の3つの情熱を融合している。まずは、ジュエリーへの愛だ。「ジュエリーとは、かなりパーソナルなものです」と、ディグル氏。「スタイルや個性を反映していたり、所有者の感情に訴える、さまざまな意味を持つものであったりします。身に付けるものには、皆それぞれのストーリーがあるものです」。
また、Human Interface Jewelleryはテック業界の女性を称賛している。男性優位の業界で、自己表現する方法を提供しているのだ。「テック業界に属することを示す、勲章のようなシンボルを女性に提供したいと考えました。彼女たちのために作られたものがあってもいいのではないかと思ったのです」と、ディグル氏。
そして、ディグル氏のものづくりと、壊すことへの情熱から Human Interface Jewelleryは生まれた。
「大学在学中にMakerBot 3Dプリンターを作りました。初期のオープンソース 3Dプリンターです」と、ディグル氏。「プリンターの解体は、とても楽しいものでした。このプリンターを作ったのは、アイテムをできるだけ薄くプリントしたり、プリント中に手を加えたりするなど、本来意図されていないような操作を行うためです。プリンターそのものより、可能な動作の限界を超えることに興味を持ちました」。
ジュエリー ラインを構築すべく、ディグル氏はソフトウェア デザインと開発プロセスの要素を独自のデザインと製造に組み込んだ。毎月アップデートや新機能がリリースされるソフトウェア アプリケーション同様、ディグル氏はデザインをあらかじめ用意して、定期的に新作を発表。プロトタイプの作成や生産前のスケッチ、検証フェーズの各デザイン コンセプトには、ソフトウェア プロトタイピング モデルを採用している。
「デザインとスケッチをソーシャルメディアで共有して、フィードバックを得ています」と、ディグル氏。「そこで人気が無いようなら製造しません。これはソフトウェア業界で使われている手法で、スケッチやモックアップを作成して、ユーザーにテストしてもらうのです。人々がそれを望み、そのソフトウェアがうまく機能すると分かるまで、アプリケーション全体をプログラムして構築することはありません。こうした手法を、ジュエリー事業にも持ち込もうとしています」。
デザインに対する好意的な反応が十分に得られたら、Autodesk 3ds Maxと Fusion 360を使用して、それをビジュアライズ。ディグル氏は 3D モデルとデザインのレンダリング画像をVRギャラリーを通じてカスタマーと共有している。
「VRは [製品の] フォームや形状を体感してもらう方法です」と、ディグル氏。「これなら購入前に、そのデザインをVRで理解できます。今後、これをビジネス モデルに発展できるかもしれません。将来的には、ジュエリーや衣類を購入前にVR や ARで試せるようになるかもしれません」。
自身がデザインする繊細で優美なジュエリーを製作するため、ディグル氏は材料噴射法と直接金属レーザー焼結法 (DMLS) という、2種類の3Dプリント手法を使用している。ディグル氏は金、銀製の作品には、より一般的な材料噴射法を使用しており、ワックスでプリントした後、金属で鋳造している。DMLSはチタン製の作品と一部の銀製の作品に使用され、可動部分用の隙間を含む、動きのあるジュエリーには特に適している。
「直接金属レーザー焼結法が素晴らしいのは、このレーザーでは金属粉末の細かな層同士が融合されることがなく、粉末を取り除く十分な隙間が生まれる点です」と、ディグル氏。「層をひとつ飛ばし、その隙間を保持することができるのです」。
生産開始前、ディグル氏は連携に最適な3Dプリント メーカーを探したが、見つけるのは簡単ではなかった。「世界各地の、20社以上の3Dプリント会社にコンタクトを取りました」と、ディグル氏。「バイクや自動車の部品などクールなエンジニアリング部品でなく、ライフスタイル製品だと分かると、即時に断ってくる会社もありました。分野によって偏見があることは確かです」。
こうした困難に屈することなく、ディグル氏は最適な2社を見つけることができた。現在はカスタム製品や、データ読み込み中を示すインジケーターを模したリング、ボリュームコントロール スライダーのネックレスに取り組んでおり、近いうちに発表の予定だ。
Human Interface Jewelleryはまだ歴史が浅く、2018年3月にオンラインショップをローンチしたばかりだが、氏は既に将来を見据えている。「合成ダイヤモンドや他の宝石を取り入れて、作品により一層の輝きを与えられればと思っています」と、ディグル氏。
Apple WatchでMacコンピューターのロック解除を行う仕組み同様、IoTは機能性ジュエリーの成長に異なる手段を示している。
「かなりRFIDについて研究していて、この技術をリングやその他のジュエリー作品に組み込むことを検討しています」と、ディグル氏。「実際のところ、人々がこの技術をどういう形で使用したいと考えているのか、さらなる研究が必要です」。
Human Interface Jewelleryは、単に新しいジュエリー メーカーではなく、人間とテクノロジーの間にあるギャップを埋めている会社だ。ディグル氏がデザイン、作成する3Dプリント製ウェアラブル作品は、テクノロジーとつながる方法を提供している。
「3Dプリントが魅力的なのは、よりローカルなものづくりが行えることだと思います」と、ディグル氏。「誰もが購入でき、触れて感じられるものを生み出すことは、テクノロジーを使った手法に対する考察を促すことにもつながります。私は人々がより深く考え、それとつながって、インスピレーションを得られるようなものを作りたいと願っています」。