株式会社十川ゴム

老舗メーカーがデジタルエンジニアリングを
実践し、 設計・開発・試験の工数とコスト
を削減

AUTODESK INVENTOR®
PRODUCT DESIGN & MANUFACTURING COLLECTION
AUTOCAD®

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画像提供:株式会社十川ゴム

Summary

Autodesk Inventor を中心に据えた製品設計・開発工程の
効率化

当社は長年にわたり、CAD システムはオートデスクの『 AutoCAD 』を利用しています。蓄積したデータ資産を有効活用するために、3D CAD ソフトウェアには AutoCAD と互換性のある『 Autodesk Inventor 』を採用しました

井田 剛史 氏
株式会社十川ゴム 研究開発部 次長

株式会社十川ゴム 代表取締役社長 十川 利男 氏

コロナ禍の飲食業界で新たな市場を開拓

株式会社十川ゴムは、産業用や一般用の各種ゴム、合成樹脂、プラスチック製品を製造・販売するメーカーだ。とくにホース類、シリコンチューブ、パッキンなどの成型品に強みを持ち、さまざまな製品分野で高いシェアを誇っている。近年は、これまで培ってきた配合技術を応用した高機能・高性能・高品質な材料、高い生産性で製品を創出する新製法などの研究開発を推進し、モノづくり企業のビジネス変革に乗り出している。ほかにも 3D CAD ソフトウェア、CAE ツール、3D プリンティングなど、3D データをベースとしたデジタルエンジニアリングを実践し、製品設計・開発の最適化を推し進めている同社の取り組みを紹介しよう。

株式会社十川ゴム 研究開発部次長 井田 剛史 氏

いち早く設計開発のデジタル化に取り組んできた 老舗メーカー

十川ゴムは 1925 年(大正 14 年)に創業した、100 年近い歴史を誇るゴム・合成樹脂メーカーだ。製造業のさまざまな顧客ニーズに合わせて多種多様な製品を生産する同社では、設計・開発の効率化を目的として、各フェーズの業務のデジタル化に乗り出した。製造業におけるデジタルトランスフォーメーション( DX )が叫ばれる昨今において、老舗メーカーである十川ゴムは、1990 年代の初めから他社に先駆けて DX に着手していたのだ。

十川ゴムの研究開発部次長 井田剛史氏は、これまでの取り組みについて以下のように語る。

「弊社では製品品質の向上、開発期間の短縮を実現するために、3D データをベースにしたコンカレントエンジニアリング(同時進行技術活動)に早くから取り組んできました。これにより開発初期段階における設計・生産技術者間の円滑なコミュニケーションと生産条件を盛り込んだ設計が可能となったほか、CAE ツールを使った高度な解析、コンピュータ上のデジタルモックアップ(仮想試作)との連携、仮想試験による施策回数の削減などを実現してきました」(井田氏)

大正時代から続く十川ゴム

そうしたデジタルエンジニアリングの基盤となる 3D CAD ソフトウェアとして同社が採用したのが、オートデスクの「 Autodesk Inventor(以下、Inventor)」だった。

そうしたデジタルエンジニアリングの基盤となる 3D CAD ソフトウェアとして同社が採用したのが、オートデスクの「 Autodesk Inventor(以下、Inventor)」だった。

「自動車メーカーはさまざまなCADをお使いになっていましたが、自社で全ての CAD を導入することはできません。数あるソリューションの中でも、他社が提供している CAD 製品との互換性において優れていたのが、Inventor でした」(井田氏)

Summary

製造業へ寄せられるニーズは多種多様、
いかに工数とコストを削減できるかが十川ゴムの課題だった

Inventorによる3D設計作業

製品の設計開発にオートデスクのソリューションを 適用

十川ゴムでは現在、同社の生産拠点である大阪(堺)・奈良・徳島の 3 工場の技術部門で、Inventor で設計した 3D データを活用したデジタルエンジニアリングによる設計開発を行っているという。

「例えば製品を開発する際に、CAE ツールで補強ポイントを把握したうえで、Inventor でさまざまな形状パターンを設計し、その 3D データをもとに 3D プリンタを使って複数パターンの試作品を作成します。そして、その試作品の強度を相対比較したうえで、最も優れた形状の補強モデルを作り上げます。Inventor によるパラメータ設計と、CAE ツールおよび 3D プリンタを組み合わせたイテレーションにより、設計の最適化を実現しているわけです」(井田氏)

貯水タンクの制御装置開発にも活用

製品の設計開発にオートデスクのソリューションを 適用

十川ゴムでは現在、同社の生産拠点である大阪(堺)・奈良・徳島の 3 工場の技術部門で、Inventor で設計した 3D データを活用したデジタルエンジニアリングによる設計開発を行っているという。

「例えば製品を開発する際に、CAE ツールで補強ポイントを把握したうえで、Inventor でさまざまな形状パターンを設計し、その 3D データをもとに 3D プリンタを使って複数パターンの試作品を作成します。そして、その試作品の強度を相対比較したうえで、最も優れた形状の補強モデルを作り上げます。Inventor によるパラメータ設計と、CAE ツールおよび 3D プリンタを組み合わせたイテレーションにより、設計の最適化を実現しているわけです」(井田氏)

このようなデジタルエンジニアリングの取り組みは、産業用・一般用の多種多様な製品開発で採用されている。最近は貯水タンクの耐震性を高める制振装置の開発といった産学連携の研究開発にも活用された。

「東日本大震災や熊本地震など過去の地震災害では多数の貯水タンクが破損し、貴重な水が失われました。これはタンク内の水による共振現象が原因です。こうした共振現象の発生を抑えるために、当社は中央大学総合政策学部の平野廣和研究室や、タンクメーカーとの産学連携で既存の貯水タンク内部に浮かべるだけの波動抑制装置『タンクセイバー・波平さん』を開発しました。この装置開発も Inventor で設計しており、3 次元データを活用して形状や素材、強度などを 3 次元上で試行錯誤しながらシミュレーションしました。研究ではチームメンバーとの意思疎通が欠かせませんが、Inventor のプレゼンテーション機能を活用することで、とくに問題なくプロジェクトを推進できたと考えています」(井田氏)

実際の作業画面

Inventor でデジタル設計して 3 次元化することで、 試作期間が 10 分の 1 に、試作コストの 95% 以上 カットに貢献

十川ゴムでは、こうしたデジタルエンジニアリングの取り組みを推進することにより、絶大な効果が得られているという。とりわけ効果が際立っているのが、試作品の作成と試験の工程だ。

従来の製品開発では、まず金型を製作して試作品を作成し、それを試験して問題があれば設計に戻るという工程を繰り返していた。しかし、デジタルエンジニアリングではInventor の 3D データを CAE ツールで解析し、そこで問題があればすぐに設計へ戻すことができる。解析処理をパスした場合は、そのまま 3D プリンタで試作品を作成。金型を製作することなく試験を行えるのだ。Inventor で設計の見える化を実現したからこそ得られるメリットだと言えよう。

「従来の製品開発では試作品作成用の金型をつくる必要がありましたが、3D データと 3D プリンタを活用するデジタルエンジニアリングでは金型製作が不要です。そのため、金型の製作と修正、試作品の作成におよそ 1 カ月の時間がかかっていたのに対し、デジタルエンジニアリングではわずか 2〜3 日程度しかかかりません。また、金型製作には 70〜80 万円以上の費用がかかっていましたが、3D プリンタを活用するとわずか 2〜3 万円程度で済みます。つまり、試作期間が約 10 分の 1 に短縮され、試作コストが 95% 以上もカットされるという効果が得られているのです」(井田氏)

デジタルエンジニアリング旗振り役となった井田氏

デジタルエンジニアリングから デジタルマニュファクチャリングへ

十川ゴムでは今後、Inventor で設計した 3D データを活用したデジタルエンジニアリングの取り組みを外部の協力会社にも広めていく予定だという。また、現在は生産拠点ごとに縦割りに分断されている 3D データ管理の共有を進め、製品開発のさらなる効率化の実現を目指す方針だ。

「電気自動車へ市場のニーズが変わるにつれ、現在の主力製品であるガソリンエンジンで動く自動車向けの部品は、需要が大きく減少するでしょう。そうした時代に向けて当社の事業構造を変化させることは必須であり、その時代に求められる新しい製品の設計開発をデジタル化して、素早く対応できる体制を確立することが急務となっています。そのためにも、私たちが進める 3D データを活用したモノづくりの仕組みの重要性はますます高まっていくでしょう。将来的にはデジタルエンジニアリングからデジタルマニュファクチャリングへと、さらに発展させていきたいと考えています」(井田氏)

Autodesk Inventor は、これからも十川ゴムが推進するデジタルエンジニアリングの取り組みを支え続けていくことだろう。

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こうして飯盛り達人 3 は 2018 年に完成。直後に始まったコロナ禍を機に注目を集め、大ヒットとなったのは前述の通りである。この間、木佐木氏らは、茶碗だけでなくカレー店用のカレー皿や牛丼店用の各種ドンブリ、そして店ごとに異なる盛付け方や盛付け量等々にもきめ細かく対応。これらを Inventor によるリプレゼンテーションで保存し、流用設計へのスムーズな対応も実現した。また飯盛り達人 3 へご飯を投入するためのリフトなど派生品の要望にも応えていった。もちろん、シリーズ新型についても既に検討が始まっている。

「“シェア奪還”については、国内シェアを 1/3 〜 1/4 程度は取り返せたのではないでしょうか。まだまだこれからですよ」と木佐木氏は笑う。それでも売上構成比は、以前の工場向け大型機主体から小型機の方が多くなるなど完全に逆転し、同社自身もメーカーとして大きく生まれ変わろうとしているのである。そのイノベーションへの原動力の一つが、飯盛り達人 3 と Inventor による 3D データの活用があったのは確かだろう。

「シリーズの進化には 3D データのいっそうの活用が不可欠。PDMC 同梱の解析ツール Inventor Nastran で品質保証やコスト削減を図り、CG ツール 3ds Max でビジュアライゼーション強化等も行いたいですね。設計データの活用がさらなる DX 実現の重要なカギだと思います」(前田氏)

事例協力: 株式会社大塚商会

A version of this article ran previously on website. Photos courtesy of [credit].

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