株式会社加藤機械
Fusion 360 と Machining Extension が
産業機械の設計・製造に新たな力をもたらす
FUSION 360
FUSION 360 MACHINING EXTENSION
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株式会社加藤機械
FUSION 360
FUSION 360 MACHINING EXTENSION
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5 軸プログラム活用を見据えて Machining Extension を導入する。
Machining Extension による3D データの有効活用を実現してCAM の生産性を上げると同時に、
当社の設計・製造力も強化していきたいと考えています。
加藤 剛 氏
株式会社加藤機械 代表取締役
株式会社加藤機械 代表取締役 加藤 剛 氏
「共存共栄」を企業理念に掲げ、三方良しを目指す株式会社加藤機械。同社は、1957 年の創業から、地域の発展の一役を担う企業として、産業機械の設計・製造に取り組んできた。同社の産業機械は、電気制御ソフト開発から部品加工や組立に至るまで、一貫した製造を担い、それぞれの現場に最適かつ高品質で生産性の高い機械・装置を提供している。その産業機械の製造能力を高めるために、同社は Fusion 360 と Machining Extension を導入して、CAM の生産性向上を推進している。
Fusion 360 と Machining Extension による CAM を導入した背景について、株式会社加藤機械の加藤剛 代表取締役は、次のように振り返る。
「当社では、3 次元で設計するようになって 6 年ほど経ちますが、これまで CAM を利用したことがありませんでした。設計は 3 次元モデルでも、製造は 2 次元加工で対応していました。そんな時に新しい工作機械として、DMG 森精機の 5 軸加工機である DMU 50を 導入したので、3 次元の設計データを有効に活用できないか検討していたところ、Fusion 360 と Machining Extension を知りました。」
3 次元データを有効に活用した CAM 導入を実現するために、加藤氏は一年半ほど前に同社に転職してきた栗山陽輔氏を担当者に抜擢する。栗山氏は、機械加工の業界で仕事がしたいと希望して、同社に移る前には 3D CAD の勉強をしていた。また、コンピュータの操作にも精通していたので、加藤氏が白羽の矢を立てた。その結果、同社で初となる CAM 担当となった栗山氏は最初に設計用ソフトウェアの選定から取り組んだ。その理由について、次のように切り出す。
「もともと当社で使っていた他社製品の CAM オプションでは 2.5 軸までしか対応していなかったので、最初から 3 軸加工が使える Fusion 360 を試してみようと、体験版を使ってみました。」
2.5 軸と 3 軸では、機械加工においてどのような違いがあるのだろうか。加藤氏は「3 軸加工では、XYZ という 3 つの軸を自由に動かせますが、2.5 軸加工では Z 軸が動かないので完全な立体形は加工できません。カマボコのように半分だけ立体的になるのです。これでは、実用性が低くなります」と説明する。
体験版の利用を経て Fusion 360 と Machining Extension の導入を決めた経緯について、栗山氏は「2021 年 2 月くらいから体験版を利用し始めて、使いこなせる自信がつきました。Fusion 360 は、ネットや YouTube で使い方を紹介している情報が豊富なので独学でも操作を習得できました。ただ、Machining Extension に関してはまだネットにあまり情報がないので、トライ&エラーで試してみました。その結果、急斜面と緩斜面の加工やツールパストリム、さらに自動穴認識などの機能の使い勝手の良さから、この便利な機能を使えなくなるのは困ると思い、Machining Extension も含めた導入を社長に提案しました」と話す。
提案を受けた加藤氏も「Machining Extension の 5 軸および衝突回避まで、将来的に活用できるようになれば新しい工作機械の性能をフルに引き出して、当社の高い CAM 能力をアピールできると期待しました。そこで栗山君の提案を信じて、導入を決めました」と語る。
30 年前に導入した VK55
Fusion 360 と Machining Extension で CAM を推進する意義について、加藤氏は「当社が導入している工作機械は最新鋭のモデルなので、CAM で制御できるようになれば、これまで以上にその製造能力を引き出せます。反対に、CAM を導入しないで工作機械を使うというのは十万円を超えるスマートフォンを買って、通話しかしていないようなものです」と話し CAM の性能を再認識するエピソードを紹介する。
「試しに、当社が 30 年前に導入した VK55 という工作機械に Fusion 360 で作成した NC データを読み込ませたところ、問題なく 3 次元加工ができたのです。その時に、改めて優れた工作機械を導入していたことを実感しました。それと同時に、CAM がなければそのポテンシャルを引き出せないと再認識しました」と補足する。
Fusion 360 Machining Extension の機能を使って加工パスの一部を作成する栗山氏
栗山氏も「正式導入から半年以上が経過しましたが、今はやりたいことができるようになりました。5 軸のプログラムも自分で思うように動かせています。現在も Fusion 360 の CAM 機能も進化し続けていますが、Machining Extension は、より複雑な設定ができたり、便利な編集機能があるので、より作業が楽になると思います。もともとはツールパストリムを便利に使えるだろうと考えて、一緒に導入することを提案しました。これから使い込んで、他の機能も使えるようになれば、当社の工作機械の能力をもっと引き出すことができるようになると思います」と評する。
加藤氏は「Machining Extension への投資が効果を出せるかどうかは、5 軸プログラミングの活用にかかっていると思います。急傾斜/低傾斜ツールパスに対応した高度な 5 軸コントロールを使いこなせるようになれば、表面仕上げの質を高められるので、当社の製造する産業機械をはじめ、受注加工をしているパーツの製品価値が上がり、提案の幅が広がると思っています。当社の営業方針は、『安売りせずに、価値売る』という、価格での競争はせず、価値を感じていただける行動を目指しています。その意味で、CAM 利用による価値を引き出すために 5 軸プログラミングは重要な投資だと思います」と話す。
今回、切削加工した DMU 50 の前で。左から、加藤 剛 代表取締役、栗山陽輔 氏
今後の取り組みについて加藤氏は「当社の CAM は、Fusion 360 と Machining Extension を今後も積極的に利用していこうと考えています。そのためには Fusion 360 を使いこなせるエンジニアの育成が急務です。また、これまで設計してきた 3D データの有効活用も進めていきます。Fusion 360 の CAM を利用すれば、複雑な形状にも対応できるようになり、結果的に生産性とクオリティを向上させていけるので受注できる仕事の幅が広がります。また、Fusion 360 による CAM の『価値』を提案していくためには、実際に加工された部品を積極的にアピールしていかなければなりません。そのためにも、栗山君には Fusion 360 だけではなく、工作機械にも精通してもらいたいと期待しています。また、彼の技能をより多くのエンジニアに伝えていってもらいたいと思います」と展望を語る。
実際に切削した部品例1
実際に切削した部品例 2
Machining Extension の急斜面と緩斜面の加工機能を利用して DMU 50 (DMG 森精機社 5 軸制御マシニングセンタ)で切削