不二精機株式会社

設計現場の DX が不確実な時代でも
影響されない、新しい“柱”となる製品で
市場開拓

PRODUCT DESIGN & MANUFACTURING COLLECTION
AUTODESK® INVENTOR®

このストーリーをシェア

 

「飯盛り達人 3」(左)と「ソフトむすび成形機 GKS」(右)

Summary

Autodesk Inventor を核とする 3D 設計環境を基盤に
ヒット商品を開発し、さらなる企業進化へ

当社が Inventor を核に 3D 設計を運用し始めたのは 2003 年頃で、以来ずっと 3D 設計を続けています。もう 3 次元は当たり前になっており、現在は 3D で工夫し幅広く活用することに注力しています。たとえば、おにぎり成型機には、コンビニ・スーパーごとに細かく異なるおにぎりの形状やサイズに対応した膨大な「おにぎりの型」が必要になります。一つ一つ作っていたら大変ですが、現在ではパラメータを少し変えれば多様な形状・サイズに対応できるよう工夫し、誰でもすぐ図面にたどり着ける仕組みを作りあげています。

前田拓雄 氏
不二精機株式会社 開発設計部 生産開発室

不二精機株式会社 開発設計部 生産開発室 課長 前田拓雄 氏

コロナ禍の飲食業界で新たな市場を開拓

2019 年に始まった新型コロナウィルスの世界的な感染拡大は日本経済を大きく減退させ、製造業界にも少なからぬ打撃をもたらした。だが、その影響を被りながらも挑戦を続け、新市場を切り拓いたメーカーも少なくない。福岡県福岡市に本社を置く不二精機株式会社も、そんな一社である。

同社はおにぎり・寿司等の自動成形機やご飯盛りつけ機、製麺機など、食品に関わる各種機械を開発・製造・販売しメンテナンスまで行う大手食品機械メーカー。特にコンビニチェーンやスーパーが工場で使うおにぎり成型機の分野では、国内シェア8割強を誇るトップメーカーでもある。

「コロナ禍の影響もあって、コンビニやスーパーでのおにぎりの売上が落ちています。当然、当社の主力であるおにぎり成型機等の売上も影響を逃れません。もう一つの“柱”となる製品が必要でした」。そう語るのは、同社開発設計部の生産開発室で課長を務める前田拓雄氏である。前田氏が目を付けたのは、おにぎり成型機等の大型機とは対照的な小型機の分野。特に飲食チェーン向けのご飯盛付け機シリーズ最新型となる「飯盛り達人 3 」に注目したのである。前田氏のもと、この飯盛り達人 3 の開発を担当した木佐木貢氏は語る。

不二精機株式会社 開発設計部 生産開発室 係長 木佐木貢 氏

Text + Image (Left)

「飯盛り達人 3 は、ご飯の保温機能と盛付け機能を合わせ持ち、フタを開けずに残量も確認できるご飯盛付けロボットです。その開発が完了しお客様への本格的な導入が始まった頃からコロナ禍が広がり始めたのです」。普通に考えれば“最悪のタイミング”となる所だが、実際にはこれが予想もしない逆転劇に繋がった。ご飯お代わりサービスが人気の全国的飲食チェーンが、飯盛り達人 3 に着目したのである。衛生的な観点から「お客様が自由にジャーのご飯をよそう」ことが難しくなり、さらには「店員に頼みづらい」という声も強かったことから、設定した量のご飯を衛生的に盛付けられる飯盛り達人 3 の導入を決めたのである。

「たまたまでしたが、結果的にコロナ禍での飲食チェーンのニーズに応えられたわけです。さらに“どうせならボタンにも触られたくない”の声を受け、2 カ月で非接触式スイッチを搭載するなどスピーディに改良を重ね、カレーの全国チェーンや牛丼チェーン等にも採用されました」(木佐木氏)。

多品種少量生産型のメーカーである同社では、100 台も売れればヒット商品だが、飯盛り達人 3 は昨年 1 年で 500 台余を販売する大ヒットを記録。中小企業優秀新技術・新製品賞まで受賞した。だが、このヒットは決して「たまたま」ではなかった。

実はこの飯盛り達人シリーズは、不二精機がシェア奪回を目指し多様な技術的挑戦を試みた戦略商品である。デジタル化された設計環境がコロナ禍でも市場への投入を可能にし、設計データの活用により時代にあった顧客ニーズに素早く対応して新たな価値を生み出した。それはまさしくデジタル トランスフォーメーション(以下 DX)の実現だった。そして、その DX 実現にはオートデスクの Product Design & Manufacturing Collection(以下PDMC)──特に Inventor が極めて重要な役割を果たしていた。

Summary

3D 設計環境の成熟がDX実現を可能にし
競合製品に置き換わっていた市場の奪還へ

Inventorによる3D設計作業

シェア奪還が「飯盛り達人 3 」の新たな使命に

「飯盛り達人 3 の開発プロジェクトが動き始めたのは 2015 年頃。きっかけは“同タイプの競合製品が売れている”という情報でした」(木佐木氏)。ご飯盛付け機のラインナップは長年持ち続けていたが、ヒット商品となることは無かった。しかし、競合製品が売れているのだから市場はそれを望んでいる。そこに入り込む為には何が必要なのかを再考していくと、やはり大きな要因を占めているのは、顧客が求める機能と機械の価格差があるということであった。大型機械を主力とする同社では、各顧客の要望に細かく応え“一品一葉”の手作りに近い形で開発製造するのが基本スタイル。ご飯盛付け機も同様だったため、コスト高になりがちだったのだ。結果、顧客ニーズに合った競合製品が売れ、わずか数年でチェーン店のご飯盛付け作業は機械に置き換わった。このシェアを取りに行くこと。──それが飯盛り達人 3 の使命だった。「機能面では食感……食べて美味しいご飯であることを最も重要視しました。さらに長時間冷めず乾燥しない保温性も重要でした。そのうえで市場価格に合わせて行く、量産でメリットを出す方法も検討を進めて行きました」。その言葉に前田氏も頷く。「店に置く機械なので外観デザインも重要です。今回はデザイナーの協力も得ながらの協業で進めてきました」。そして、これらの課題解決には Inventor と 3D データの活用が不可欠だったのである。

本社工場

Text + Image (Left)

もともと同社では、大型機・小型機を問わず製品開発は全て Inventor による 3 次元設計で行っている。2D 時代は多様な CAD が混在していたが、PDMC 導入と同時に 50 名超の設計者全員がツールを Inventor に統一。さまざまな工夫を施しながら設計生産性を大きく向上させた実績があった。「たとえば Inventor のカスタマイズ等も非常に効果的でしたね」と前田氏は回想する。それはCAMの普及等で協力会社から 3D データを求められる機会が激増したことから、その対応策として作ったもので、2D 図面のPDF出力時に STEP データをボタン一つで付加する仕組みだった。制作された STEP 付き 2D 図面データはデータベースに格納され、協力会社を含め社内外から自由に活用できるようにしたのだ。これにより、膨大な時間を費やしていた問い合わせ対応の負担も一気に解消されたのである。こうした工夫の積み重ねにより、同社では Inventor による 3D 設計が「当たり前のもの」として根づいたのである。

大型機ラインの3Dモデル

シェア奪還が「飯盛り達人 3 」の新たな使命に

「もちろん飯盛り達人 3 の設計も Inventor で行いました。いつも通りのやり方で特に変化はありませんが、今回はコストダウンのためもあって樹脂成型部品が多く、その金型作りがポイントとなりました」(木佐木氏)。3D データを作って協力業者に金型を作らせ、試してモデルを修正し再び金型へ、というやりとりを重ねていった。「金型会社からは“この形じゃ金型にならない”とか“こうすれば安くできる”といった助言をいただき非常に勉強になりました」。一方、外観デザインにも 3D データが広く活用された。「基本となる筐体のモデルデータを作ってデザイン会社に渡し、素材や形状にいろいろ条件を付けてデザイン案を複数作らせたんです」。でき上がったデザインを営業や製造と共に見ながら意見を出し合い、練り上げていった。

飯盛り達人(量産型)の3Dモデル

Text + Image (Left)

一方、開発途中で発生した問題としては、たとえば熱と結露に対する耐久性が大きな課題となった。飯盛り達人 3 のターゲットである全国規模の飲食チェーン店舗には 24 時間営業店も多数あるが、当時の不二精機は 24 時間対応機の開発経験も乏しかったのだ。「当初、試作機を試したのが 24 時間営業店で、機械内部に結露が溜まり水浸しになってしまいました」。他にも“まさか!”と驚くような問題に次々直面し、開発はトライアル&エラーの連続だったと木佐木氏は言う。こうした多くの課題に柔軟に対応し、スピーディに解決できた背景には、長年蓄積したノウハウと 3D データの活用があったのである。

Text-only; 1 column

こうして飯盛り達人 3 は 2018 年に完成。直後に始まったコロナ禍を機に注目を集め、大ヒットとなったのは前述の通りである。この間、木佐木氏らは、茶碗だけでなくカレー店用のカレー皿や牛丼店用の各種ドンブリ、そして店ごとに異なる盛付け方や盛付け量等々にもきめ細かく対応。これらを Inventor によるリプレゼンテーションで保存し、流用設計へのスムーズな対応も実現した。また飯盛り達人 3 へご飯を投入するためのリフトなど派生品の要望にも応えていった。もちろん、シリーズ新型についても既に検討が始まっている。

「“シェア奪還”については、国内シェアを 1/3 〜 1/4 程度は取り返せたのではないでしょうか。まだまだこれからですよ」と木佐木氏は笑う。それでも売上構成比は、以前の工場向け大型機主体から小型機の方が多くなるなど完全に逆転し、同社自身もメーカーとして大きく生まれ変わろうとしているのである。そのイノベーションへの原動力の一つが、飯盛り達人 3 と Inventor による 3D データの活用があったのは確かだろう。

「シリーズの進化には 3D データのいっそうの活用が不可欠。PDMC 同梱の解析ツール Inventor Nastran で品質保証やコスト削減を図り、CG ツール 3ds Max でビジュアライゼーション強化等も行いたいですね。設計データの活用がさらなる DX 実現の重要なカギだと思います」(前田氏)

事例協力: 株式会社大塚商会

A version of this article ran previously on website. Photos courtesy of [credit].

本事例で紹介しているオートデスク製品について
30 日間無償体験版をお試しいただけます。

Compare
詳細はこちら