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こうした時間と手間の削減効果は、Seaway プロジェクトにおいて、スケジュールどおりの納入と設計変更へのタイムリーな対応という形で表れました。レビューを効率的に行うために、レックスロス社の顧客は無償ビューアである Autodesk DWF Viewer を利用して設計の共有や印刷を行っています。一方、社内のレビュー担当者は Autodesk Design Review で設計にマークアップを加え、その結果を設計者が元のオートデスクの設計ソフトウェアで確認します。また、同社は進行中の設計の管理を簡素化するために、いくつかのプロジェクトに Autodesk Vault を使用しています。将来的にはより広範囲のプロジェクトに Autodesk Vault を採用してリリース プロセスの自動化と設計変更指示の追跡を行い、最終的には社内の ERP システムと統合することも計画しています。
2003 年後半、レックスロス社はビジネスの拡大に伴い社員を増員しました。しかし、設計者の数を増やしたにもかかわらず、図面の精度は下がる一方でした。顧客に優れた製品やサービスを提供しながら利益を上げるという企業理念を実現するためには、早急に何か手を打つ必要があるのは明らかでした。製品の信頼性を向上させる、各部門で作業の手戻りや材料の無駄を最小限に抑える、といった諸目標を同社の経営陣が提起したのも、ちょうど同じころでした。レックスロス社は、こうした目標を達成するためには、2D から 3D 設計ソフトウェアに移行して設計プロセスと製造プロセスの両方を改善する必要があると考えました。SLSMC のプロジェクトの入札に参加することが決まったとき、プロジェクトの主任設計者 Ben Gilmore 氏は、2D の AutoCAD® から Autodesk Inventor に移行して 3D 機能を試してみることを即決しました。
Gilmore 氏はこう説明します。「設計チームが Autodesk Inventor で作成したアニメーションとレンダリングを取り入れた提案書のおかげで、我々は SLSMC の信頼を得ることができました。Autodesk Inventor を使って 3D の図面、レンダリング、アニメーションを作成したことで、プロジェクトで使用する標準ツールを AutoCAD から Inventor へ移行するように SLSMC を説得できたのです」
CAD 管理者の Martin Eberhard 氏はこう付け加えます。「しかし、当時はまだ SLSMC の標準は AutoCAD でした。そのため、3D ビジュアライゼーション機能を備えているだけでなく、設計と設計図書作成が完了した後で図面を AutoCAD の DWGTM ファイルに変換できるソフトウェアが必要でした。これは、Seaway プロジェクトでは特に重要なポイントでした」
SLSMC のプロジェクトに Autodesk Inventor を導入することが決定したときのことを、設計エンジニアリング マネージャーの Jim Lambert 氏は次のように話します。「Seaway プロジェクトに Autodesk Inventor を導入すれば、2D のシステムでは不可能だった設計が可能になり、エラーの削減や設計時間の短縮が実現すると確信しました」
3D 設計を導入したおかげで多様なエンジニアリング アプリケーションを検討できるようになり、外部の専門会社に頼らなくてもよくなりました。作業を実行するための Inventor とそれを補完する ANSYS DesignSpace などの FEA プログラムがなかったら、Seaway プロジェクトのカルダン リングのような重要なコンポーネントを設計、製造することはできなかったでしょう。
レックスロス社は Autodesk Inventor を採用することで、設計プロセスを効率化できただけでなく、より精密な設計を行い、それをビジュアル化して顧客から製造現場のスタッフまであらゆる関係者に分かりやすく伝えることができるようになりました。しかも、ソフトウェアの移行も非常にスムーズでした。過去に新しいソフトウェアやプラットフォームの導入で苦労した経験を持つレックスロス社にとって、使いやすさはきわめて重要なポイントでした。
「2D から 3D へ移行すると聞いたときは、とても不安でした」と Martin Eberhard 氏は語ります。「しかし、Inventor は適切なトレーニングを受けながら段階的に導入することができました。今では、あれほど不安を感じていたスタッフたちが皆、口を揃えて『2D に戻るなんて考えられない』と話しています」
Autodesk Inventor 導入前のレックスロス社は、すべての設計を 2Dで行っていたため、「情報がうまく伝わらない」という問題にたびたび直面していました。「設計をビジュアル化するのは一苦労でした」こう話すのは Lambert 氏です。「たとえば、AutoCAD で設計を行った前回のプロジェクトは、複雑な組み立てを必要とするものでした。そのため、パーツをどのように加工すればよいかを製造現場に伝えるのが非常に困難でした」
最終的には、設計チームはフレームのモデリングを Autodesk Inventor で行い、製造現場に溶接方法を 3D で伝えることができました。
Lambert 氏はさらに続けます。「モデルを 3D 環境で確認できたことで、現場は設計を明確に理解できました。おかげで、溶接作業のスピードもはるかに上がりました。このように、3D は製造の現場にも大きく貢献しています」
オートデスクのツールを使用すれば、設計をビジュアル化して設計変更をスムーズに行い、エラーを常に最小限に抑えることが可能です。そして、お客様の期待に応え、更に上を目指した製品やサービスを提供することができます。
レックスロス社は、オートデスクの製造ソリューションを導入したことで、設計変更をスピーディーに行えるようになりました。このメリットは特に SLSMC のプロジェクトに大きな成果をもたらしました。同社の設計者は設計の変更も変更後の図面の配布も迅速に行うことができます。
「AutoCAD では、あるビューで変更を加えても、他のビューは自動的には更新されませんでした。しかし、今はモデルのある機能に変更を加えると、その機能に関連付けられているすべての図面が自動的に更新されます」と Lambert 氏は述べています。
また、設計変更が容易な上に、複雑な設計をより詳細かつ効果的にビジュアル化できるため、設計のエラーも減ってきています。Lambert 氏は次のように説明します。「分かりづらい複雑な形状をいくつも処理しなければならないため、干渉や寸法エラーが生じがちです。しかし、3D ならこうした問題にも対処できます。Autodesk Inventor では、パーツ同士の除去する領域や干渉を確認することができます。ホースなどの複雑な形状も実物そっくりに描画してくれるため、その周囲も精密に設計できます。弊社のシステム グループが設計とエンジニアリングを担当するプロジェクトでは、エラーが非常に少なくなりました」
ときには製造現場で設計の修正案が出ることもありますが、そのような場合も即座に設計を修正できます。「Autodesk Inventor を使えば、2D で作業していたときの半分の時間で設計変更を行うことができます」と Lambert 氏。
2D 設計ソフトウェアを使用していた頃のレックスロス社は、重要なコンポーネントの有限要素解析(FEA)を手動で行っていました。しかし、それは決して簡単なことではありませんでした。また、そのせいで設計のコスト効果を上げることが困難でした。この問題はSLSMC のプロジェクトの大きな課題でもありました。というのも、このプロジェクトでは運河の水門と送水バルブの開閉をスムーズに行うための重要なコンポーネントが多数あり、その意匠設計から完成品にいたるまでの作業をしなければならなかったからです。しかも、腐食を防ぐために特殊な材料を使用する必要もあり、問題は余計に複雑でした。
そこで、レックスロス社は Autodesk Inventor から ANSYS DesignSpace(オートデスクのグローバル パートナーである ANSYS 社の製品)にモデルを直接読み込んで、FEA を社内で行うことにしました。また、同社の設計担当者はパーツのテストにも、Autodesk Inventor Professional に組み込まれている ANSYS DesignSpace の FEA 機能を利用しています。Lambert 氏は次のように語ります。「FEA を社内で行うことで、SLSMC のプロジェクトでは設計の無駄をなくすことができました。DesignSpace を使用すれば、材料に基づいて、特定の荷重下でのアセンブリの耐久性を正確に解析できます。おかげで、設計のコスト効果が大幅にアップしました」
オートデスクと ANSYS の連携ソリューションの設計機能と FEA 機能は、レックスロス社に新しい分野に参入する自信ももたらしました。その新しい分野とは、運河のマイター ゲートの油圧シリンダーに使用するカルダン リングと支持用のピロー ブロック ユニットの設計と製造です。通常の協力会社から受け取った見積もりが予想を上回る金額だったことから、レックスロス社は Autodesk Inventor を使って社内で設計をモデリングし、さらに ANSYS DesignSpace でそのモデルをテストすることにしました。
Autodesk Inventor を使えば、カルダン リングの設計も十分、社内で行えるはずだと思いました。結果的に、より効率的な設計に仕上がった上に、コストも予想以上に削減できました。Autodesk Inventor のおかげで、コストのかさむ試作をしなくても、設計の工程から直接、製造に進むことができました。
レックスロス社は、社内外での設計の共有とレビューにもオートデスクの製造ソリューションを利用しています。SLSMC は、レックスロス社が新しいユニットを設計するたびに、Autodesk DWF Viewer を利用してその内容をレビューします。Autodesk DWF Viewer は、データ量の多い 2D 図面や 3D モデルも DWF 形式で簡単に表示したり印刷することができる無償のソフトウェアです。
「クライアントが Autodesk DWF Viewer で設計をレビューできるのは、非常に便利です」と Lambert氏。「DWF Viewer では 3D アセンブリの個々のコンポーネントの表示を切り替えられるため、クライアントにアセンブリ全体と設計意図を十分に理解してもらうことができます。また、満足のいくレンダリング イメージが完成したらビューをスクリーンショットとして保存して、設計変更の必要な箇所に朱書きもできるため、的確な指示が行えます」
一方、社内では Autodesk Design Review を使用してレビュー作業を効率化しています。Autodesk Design Review では、2D および 3D の設計のレビューとマークアップをすべてデジタルで、しかも作成元のソフトウェアを使わずに行うことができます。組み立て現場では、ワークステーションを使ってアセンブリのレビューと DWF ファイルのマークアップを行い、配管などの変更案を提示できます。
「平面の図面を見て問題のありそうな箇所を想像する必要はなく、見ればすぐに分かるように表示されます」と、組み立て現場の管理者である Bob Van Vliet 氏は話します。
Autodesk Design Review は本当に便利なので、多くのクライアントに無料で提供できるように追加のライセンスも購入しました。Autodesk Design Review を使用すれば、クライアントは意匠設計から完成品にいたるまで設計プロセス全体に積極的に関わって、実際の 3D モデルを目で見て確認し、分解や切断、朱書き、測定を行えます。その結果、クライアントとのコミュニケーションが劇的に向上し、我々が提案する駆動制御ソリューションがクライアントのニーズを満たしているかどうか、余計なものはないか、足りないものはないかを徹底的に確認することができます。これこそが、競合他社との差別化を図る秘訣なのです。
設計データの管理を簡素化するために、レックスロス社はAutodesk Vault を導入して、既にいくつかのプロジェクトで進行中のデータを管理しています。また、将来的にはより広範囲のプロジェクトに Autodesk Vault を採用して、リリース プロセスの自動化、設計変更指示の追跡、部品表(BOM)の管理を行うことを計画しています。「スタッフ同士が互いに『図面を閉じてくれませんか?』と確認し合わなければならない現状のドキュメント管理システムには、まだまだ問題があります」と Lambert 氏は話します。「理想は、設計者同士のコラボレーションや設計作業自体を円滑化してくれる安全なシステムです。そのために、弊社では SLSMC のデータと従来のデータをすべて Autodesk Vault に取り込むことを計画しています。また、Autodesk Vault と現在導入を進めている SAP システムの接続も検討しています」
レックスロス社は、Autodesk Vault を使用することで、各管理者がプロジェクトのステータスを常に把握できるようにして、プロジェクトのワークフローを改善したいと考えています。「私たちは、毎日大量の書類に判を押したりサインをしたりしています」と Lambert氏は言います。「今後は Autodesk Vault を導入して、管理者がプロジェクトのステータスや、どの設計図書が製造工程に渡っているのか、またどのコンポーネントが完成しているのかを把握できるようにしたいと考えています。また、あらゆる製品の基盤である油圧回路の回路図にデジタル署名を行うことも検討しています」
Autodesk Inventor を導入したことで、以前は 1,000 時間以上かかっていたプロジェクトを約半分の時間で処理し、さらに 2D 時代に夢見ていたよりはるかに精密な設計を作成できるようになりました。
レックスロス社の各チームは、以前よりも多くの図面を作成してより多くのプロジェクトを製造現場に送り出すなど、新たなレベルの生産プロセスを実現。2005 年は、2004 年と同じ数の人員で 2 倍の量の図面を作成しました。
「図面の数が増えたにもかかわらず、設計チームは月間平均で不良設計の数を 46% 減、図面のミスを 25% 減、さらに図面の精度を 7% アップさせています」と Lambert 氏は説明します。「しかも、従来の 2D の AutoCAD を使用していたときと比べると、設計に要する時間を 50% 以上も短縮することに成功しました。Autodesk Inventor を導入したことで、以前は 1,000 時間以上かかっていたプロジェクトを約半分の時間で処理し、さらに 2D 時代に夢見ていたよりはるかに精密な設計を作成できるようになりました」
驚くほど高度な 3D ビジュアライゼーション機能のおかげで、機械加工したモジュールを用いて配管を行うことがなくなりました。Lambert 氏は次のように話します。「Autodesk Inventor Professional の 3D ビジュアライゼーション機能のおかげで、各種仕様を厳密に満たした加工図面や組み立て図面を作成し、製造段階ではなく設計の段階ではめ合い、形状、機能を確認できるようになりました。以前の方法で配管を行っていた頃は、材料費と人件費が今より 15~20% 多くかかっていました」
Autodesk Inventor はまた、レックスロス社のマーケティング部門が製品の写真撮影に費やしていたコストもほぼゼロにまで引き下げました。「マーケティング部門には、アニメーションを組み込んだデジタルの試作品を渡しています」と Lambert 氏。「マーケティング部門のスタッフは、レンダリング イメージを見てまず自分の目を疑います。そして、その出来栄えを絶賛してくれます」
レックスロス社の産業用油圧システム部門でゼネラルマネージャーを務める Dino Paladino 氏は、Autodesk Inventor 導入の成果を次のように総評しています。「最新の 3D 設計技術を導入しても、投資対効果(ROI)が目に見えて向上しなければ何の意味もありません。その点、Inventor は ROI を確実にアップさせてくれました。設計エンジニアリング チームは、より少ない労力、より短いリード タイムでシステムを効率的に設計できるようになりました」
最後に、Gilmore 氏はこう締めくくります:「オートデスクのツールを使用すれば、設計をビジュアル化して設計変更をスムーズに行い、エラーを常に最小限に抑えることが可能です。そして、お客様の期待に応え、更に上を目指した製品やサービスを提供することができます」