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AUTOCAD PLANT 3D & NAVISWORKS & RECAP PRO
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プラント設計において、3 次元 CAD が不可欠な時代になった。 3 次元 CAD の普及に伴い、図面とともに属性データのやり取りも日常的に行われている。こうした時代を迎え、重視されるのが CAD データの互換性だ。この問題にオートデスクのプラント業界向け設計 CAD ツールである「AutoCAD Plant 3D」は、カスタマイズによる対応を可能にしている。その機能を柔軟に活用することで、高い生産性が実現されるが、プラント設計で長年の実績を持つジェイコフは、「AutoCAD Plant 3D」を活用し、生産性を高めながら、顧客の複雑な要求にも的確に対応している。
下水処理設備や発電プラントなど、主にインフラ施設の設計を手掛けるジェイコフ(本社:大阪市)。同社が設立されたのは 2000 年だが、以後 20 余年間にプラント設計は大きく変わった。2 次元 CAD 全盛の時代から、3 次元 CAD の時代へと変わり、3 次元 CAD も「図面を描く」時代から、図面を情報として扱うように進化した。
これら一連の進化は、CAD の技術的な進歩、設計者のノウハウの蓄積、そして CAD データをプラントの維持管理にも活用しようとするプラントオーナーの意向に応えることにより実現されてきた。この進化の過程において、時代の一歩先を行くプラント設計を実現してきたのがジェイコフだ。
ジェイコフ 砂村社長(左)と轟部長(右)
ジェイコフが設立された 2000 年当時、プラント設計の主流は 2 次元 CAD だった。砂村和彦社長も「AutoCAD LTが全盛の時代だった」と振り返る。そんな時代ではあったが、徐々に 3 次元 CAD が世の中に広がり、ジェイコフも「これから 3D の時代が訪れるのではないか」と、感じ始めた。そこでジェイコフでは、2 次元で図面を描き、データベースから 3 次元化するソフトを導入するなど、3 次元への対応を進めて行った。
当時は「2 次元で十分に対応できるのに、なんで 3 次元で?」と訝る顧客も少なくなかった。そればかりか、3 次元を提案しても「いらない」と一蹴されることもあった。それでもジェイコフは 3 次元の時代が訪れることを信じ、「3 次元 CAD を活用し続けた」(前出、砂村社長)と言う。
ジェイコフは、大胆とも言える取り組みで試行錯誤を繰り返し、提案を続けた結果、少しずつ顧客の反応が変わっていった。そんな中で、3 次元データについて「これだったら、解かりやすいね」と言う顧客が徐々に出始めた。こうした顧客の反応を見て、ジェイコフも 3 次元 CAD に手応えを感じ、それまでの 2 次元データを 3 次元化するのではなく、本格的に 3 次元 CAD を導入することに決め、2014 年に初めて「AutoCAD Plant 3D」を導入した。
「AutoCAD Plant 3D」を導入し、解りやすい CAD 図面を描くことで、顧客に浸透していったジェイコフだが、3 次元 CAD が普及すると、顧客の要求レベルも高くなった。
そうなると、従来通りに解りやすい図面だけを納入していたのでは、十分に満足が得られなくなり、CAD 図面に情報が求められるようになった。しかも顧客は必ずしも「AutoCAD Plant 3D」を導入しているわけではない。ここで顧客の保有するソフトとの互換性の問題に直面した。
こうした顧客の変化に対して、ジェイコフの創業以来技術を担当してきた轟英敏部長は「御客様の望む情報をどういう形で表現すれば御客様が受け入れやすいかを考えた」と言う。その問題を解決したのが「AutoCAD Plant 3D」の持つ、カスタマイズの許容性だった。そこでジェイコフはオートデスクの 3D デザインレビューソフトウェア「Navisworks」を活用した。「Navisworks」は、様々な CAD のフォーマットに対応できるソフトで、轟部長は「御客様には、『Navisworks』で閲覧してもらい、そこで情報にさわってもらうようにした」と言う。
実際、「Navisworks」では、「AutoCAD Plant 3D」の入力情報を確認できる。これにより、立体画像だけであった 3D に情報を持たすことが可能になった。
砂村社長も「今の時代は、絵があっても情報が伴っていなければ意味がない。顧客の持つソフトとの CAD 互換性を確保して、3D で確認してもらえることのメリットは大きい」と強調する。
カスタマイズ性については、他にもメリットがある。
「AutoCAD Plant 3D」では、配管や部品のカタログのライブラリが搭載されているが、このデータは必ずしもユーザーの要求に応えるものではない。そこでカスタマイズするのだが、長年のデータの蓄積により多様なカスタマイズに対応できるようになった。
カスタマイズが自由にできるようになると、ジェイコフの顧客にも新たなアプローチができるようになる。「当社が、ここまでカスタマイズをサポートできますから、『AutoCAD Plant 3D』を導入してください」と顧客にアピールできる。ここで顧客が「AutoCAD Plant 3D」を導入すれば、顧客との関係を深めることにつながる。しかも「AutoCAD Plant 3D」の年間サブスクリプション契約の価格は 22 万円(2021 年 4 月時点)と手頃だ。この点も顧客に言いやすい理由になった。
またオートデスクは、オートデスク・デベロッパーズ・ネットワーク( ADN )により、カスタマイズをサポートしており、ここで、API を公開している。ADN を年契約すれば、カスタマイズがより容易になる。このうえ、App Storeも用意されており、ユーザーがカスタマイズした機能をここで販売できる。
オートデスクがカスタマイズに積極的に対応していることは、ユーザーの様々なメリットにつながっている。
ジェイコフのエンジニアリングオフィス
ジェイコフでは、プラントの新設の設計にも対応するのと同時に、改造案件についても 3 次元 CAD で対応している。この改造案件においても、「AutoCAD Plant 3D」が活用されている。
改造案件では CAD データが無いプラントが対象になることも少なくない。この場合、ジェイコフでは、米国の FARO 社の 3 次元レーザースキャナーにより、様々な点群データを取得。そこで得た複数のデータを FARO 社の「SCENE ソフトウェア」で結合。そのデータをエリジオン社の点群処理ソフト「InfiPoints」で編集する。
こうして取得したデータをオートデスク社のリアリティキャプチャソフト「ReCap Pro」に取込み、写真モードと点群モードに切り替えられる機能などを活用して、データを調整する。そうして得られたデータを「AutoCAD Plant 3D」で読み込み、改造のための設計を行う。
複数のソフトウェアを介して、点群データが「AutoCAD Plant 3D」で活用できるようになるが、轟部長は「このやり方が今現在の当社の主流」と言う。
日本のように先進国で経済が成熟している国では、CAD の導入以前に設計されたため、CAD データが無いプラントも少なくない。そうしたプラントの改造については、3 次元レーザースキャナーでスキャニングを行い、点群データを CAD データとして活用する方法は、このところニーズが高まっている。ジェイコフは、こうしたニーズにも柔軟に対応している。
また最近は、プラントオーナーが DX(デジタル・トランスフォーメーション)化を求めるケースも出始めている。そのニーズは、プラントの維持管理までを 3 次元データ上で実施しようという試みでもある。このニーズの中には、PC 上に造られたヴァーチャルプラントで運転管理を行うことも検討されている。
この試みに対応するには、点群処理など、3 次元データのハンドリングに伴う様々なツールとノウハウを駆使する必要があるが、こうした試みにジェイコフは今後も取り組む方針だ。
AutoCAD Plus (AutoCAD including specialized toolsets) に含まれる Plant 3D ツールセットなら、製造プラント設計でよく行うタスクの作業効率が改善されます。